​​​​​​​​自民党の麻生太郎副総裁が、「温暖化のおかげで北海道の米がうまくなった」
と発言。
岸田文雄首相も同趣旨の発言をした。
言うまでもなく地球温暖化は世界各国にとって深刻な問題で、自民党政権も
「カーボンニュートラル社会」を訴えていたはず。
わざわざ衆院選の最中に、党の総裁・副総裁が
「温暖化は悪いことばかりじゃない」
と語ってしまうとは、温暖化対策の本気度が大いに疑われることになりそうだ。
(宮畑譲、中山岳)


◆麻生氏「昔は『厄介道米』といわれた」

 「年平均気温が2度上がったおかげで、北海道のお米がおいしくなった。
昔、北海道のお米は『厄介道米』と言われるほど売れない米だった。
農家のおかげですか? 農協の力ですか? 違います。温度が上がったからです」
 25日に北海道小樽市であった衆院選の自民公認候補との街頭演説。麻生氏は
「地球温暖化でいいこともある」例としてこう述べた。
いつものべらんめえ口調に手ぶりをつけての熱弁。
エネルギッシュに聴衆に語りかけた。




北海道小樽市で街頭演説する自民党の麻生副総裁=25日午後 (共同)



◆北海道農民連盟「生産者の努力を蔑ろにする発言」

 発言にただちに反応したのが、農業者でつくる北海道農民連盟だ。
翌26日、「今までの北海道米を作る生産者の努力と技術を蔑ろにするような
発言は断じて許されない、強く抗議する」との談話を大久保明義委員長名で
出した。
同連盟によると、組合員から「冗談じゃない」という怒りの声が多数寄せられ、
談話発表に至ったという。

 発言に北海道の稲作農家が憤るのは、寒冷地で米を作る困難を乗り越えてきた
歴史があるからだ。
 北海道庁の資料などによると、北海道では江戸時代に開田したとされるが、
度重なる凶作で定着しなかった。
1873(明治6)年には、「北海道稲作の父」と呼ばれる中山久蔵氏が初めて
稲作に成功したが、開拓当初は北海道が米作りに向かないとみられて作付面積は
あまり増えなかった。
 1892(同25)年に稲作が奨励され、生産技術も向上していくにつれて
全道に稲作が拡大していった。
1961年には、新潟県を抜いて収穫量が日本一に。
しかし、79年に政府買い入れ価格に銘柄間格差が導入されると、北海道米の
ほとんどが最低ランクとなり、「厄介道米」とやゆされたのは事実だ。

 そもそも、緯度が高い北海道では、気温が低く日照時間も短いため、コシヒカリ
など本州以南で生産される品種は育たない。
さらに、日本人好みの米は一般的に温暖な気候のほうが育てやすいとされる。
米に含まれるでんぷん「アミロース」は適度に低いほうが粘り気が出ておいしく
感じられるが、アミロースは稲が温暖な環境で育つと低く、寒冷だと高くなる
傾向にあるからだ。
 よって、北海道の気候でも育てることができ、アミロースを抑える品種
が求められた。
80年には優良米を開発するプロジェクトが始まり、8年後には北海道米の
イメージを一新する「きらら397」が誕生。
その後も人気米となる「ななつぼし」や「ゆめぴりか」などが生まれていった。

◆品種改良、苗の管理、土壌づくりで美味しさ実る

 「北海道の米がおいしくなったのは、品種改良が大きい。さらに農業者、
関係団体の努力があり、気象の要因は3つ目だ」。
「ゆめぴりか」を開発した上川農業試験場の主査・木下雅文さん(44)が話す。
開発に携わった木下さんは、品種改良だけではおいしい米を作れないと強調する。
 「苗や土壌の管理など農家の作り方も大事。ゆめぴりかでは、基準をクリア
できないものはブランド米として扱わない。こうしたブランド力を維持するための
努力がおいしい米を作っている」

◆謝罪した岸田首相もコメへの気候変動影響は認める

 麻生氏の発言を巡り、岸田文雄首相は26日のBSフジ番組で「お米は関係者の
努力によっておいしくなっている。麻生氏の発言は適切ではなかった。申し訳ない」
と述べ、なぜか本人に代わって謝罪。
とはいえ、岸田氏自らも25日、京都市で農業関係者と車座で意見交換した際に
「最近コメの品評会をやると、北海道が上位に食い込んで、東北や北陸が後れを
取っている。
間違いなく気候変動の結果だと思う」と発言している。
 自民党の総裁、副総裁がそろって「温暖化にもメリットがある」ともとれる
認識を示したことになる。危うさはないのか。

◆専門家「温暖化はマイナス影響大きいのに、無責任」

 大学院大学至善館の枝広淳子教授(環境経営)は「温暖化は気温上昇
だけでなく、雨の降り方も変化させる。
農業を含め、さまざまな分野でマイナスの影響が大きい」と指摘。
「北海道米がおいしくなったとしても、別の地方では収穫量が減るなど
悪影響が出ている。
それなのに1つの地方や今の局面だけを切り取り『温暖化の良い面』と
するのは、かなり無責任と言わざるを得ない」と話す。
 そもそも、環境省が昨年12月にまとめた「気候変動影響評価報告書」
は、温暖化を含めて気候変動が農林水産業にもたらす悪影響を列挙している。

 農業については「作物の品質や収量の低下が多くの品目で全国的に生じている」
と強調。
気温が上昇すると、稲作で1等米の比率が下がったり収量が減ったりする事例が
出るという。
 水産業では、水温上昇でサンマなど魚の分布域が変化し、日本近海は
シロザケの回帰率が低下した一方、ブリの漁獲量は増えている。
だが、報告書は対策をしなければ今世紀末までの100年ほどで世界の
漁獲可能量が約2割減る予測も紹介しており、決して「温暖化はプラス」とは
うたっていない。

 温暖化の悪影響は、1次産業だけではない。気象庁によると、「滝のように
降る雨」とされる1時間の降水量50ミリ以上の年間回数は2011~20年で
平均334回。
1976~85年の同226回と比べて1・5倍に増えた。
気温上昇による水蒸気量の増加などが理由とされる。
 国内では豪雨災害や台風などの激甚災害が毎年のように発生。
海外でも、オーストラリアで大規模な干ばつや、北米地域で山林火災が相次いだ。
名古屋大の坪木和久教授(気象学)は「産業革命以降、世界の平均気温は1度
ほど上がり、人間や生態系が順応できないスピードで温暖化が進んでいる。
自然災害のリスクは将来さらに高まると予測される。危機的な状況であり、
対策の遅れは許されない」と警鐘を鳴らす。

◆「本気で対策に取り組む政治家、政党を見極めて」

 温暖化対策として、菅義偉前首相は昨年10月、「2050年に二酸化
炭素(CO2)を主とする温室効果ガス排出量の実質ゼロ(カーボン
ニュートラル)」を打ち出した。
自民党は衆院選で公約に掲げるが、本気度を疑う声は少なくない。
 立教大の金子勝・特任教授(経済学)は「麻生氏の発言は、自民に温暖化対策
への真剣さが全くないことを露呈した」と手厳しい。
コロナ禍で外食産業の米需要が減って多くの品種が値下がりし、苦境の米農家も
少なくない。
金子さんは「政治家は現場に生きる人々に寄り添うことが大切なはずなのに、
麻生氏からはそうした姿勢を感じない。
岸田氏を含め、自民に現場感覚が欠如しているのではないか」と語る。
 枝広さんも「衆院選では未来世代のために私たちが持続可能で幸せな社会を
つくれるかも問われている。
これまでの政権は、温暖化対策の具体的な取り組みがまだ弱い。
有権者は対策に本気で取り組む政治家や政党を見極めることが重要になる」と
強調した。


<デスクメモ>
 やっと閣外に去ったというのに、党副総裁に居座って、まだまだ炎上するぞ
と言わんばかり。
のたまった内容も、やはり温暖化対策が喫緊の課題という世界の潮流からすれば
化石的思考だ。
考えてみれば、麻生氏といえば九州の炭鉱王の子孫。なるほど「化石燃料」に
なるのは必然か。(歩)


転載元:東京新聞Web 2021年10月28日





​・・・兼業農家の手伝えない息子という名前も覚えてもらえない
下々のひとりとしては とくに思うことは何にもありません。​
​​​​​​​​