そう それぞれ生まれた場所は
特別に感じます
1980年 夏
僕の生まれ育った小さな町は
8月に30°を7日間だけ超えていました
祖母も暮らす縁側の窓を開け放ち
どうしても我慢できない時だけ
つけてくれるクーラーも
今思えば
甘える要素の一つだったのかも
2019年 夏
8月に30°を6日間だけ下回ってました
“暑い” のものさしは
けたたましい
ミイーンミンミンが
感じさせる以上に
ホントに変化している様子で
子供の頃に刷り込まれた夏の記憶は
朝 気づいた夏の訪れの声とは
到底馴染まない
もっと穏やかで柔らかい夏の思い出
郷愁ではないことに気づかされます
今ほど簡単に旅行などできない時代
45歳になる芭蕉は弟子を伴い
150日に及ぶ旅に出ます
1689年5月16日 月曜日
早朝 引き払う家を後にして
江戸 深川より
様々 心の響くままに
句を読み
1689年7月13日 水曜日
59日目の芭蕉は山形に居り
「閑さや 岩にしみ入る 蝉の聲」
と 岩壁に感じいる静けさを
ニイニイゼミの「チー」とも
聴こえる
小さくもない音で表します
梅雨明けの今では決して暑いとは
言えない 統計も残らぬ夏の温度
過去の偉人は句に およそ300年前の
その場所の1日さえ封じこめ
含み伝えおいてくれます
未だ様々制限なく動くことは叶わぬ
同じ梅雨明け間近の声のする方は
郷愁や懐かしい人の記憶とともに
とても特別な時間として温められていて
旅行をすることは
距離や時間を移動することではなく
決して変えようもない
過去のある時間を過ごすことも
できる大切な時間
移動していると
木漏れ日に感じる懐かしいような
切ないようなあの感覚は
目で見えていること以上に
思い出の中を過ごしているよう
目の前に梅雨明けの
見上げる眩しさを遮った
手のひらの指の間から
ミンミンゼミが夏の声を
強引に届かせる朝
特別な時間を移動できない
右肩上がりのカウント
振り返った時に
せめて思い出せる楽しさが
残る夏になりますように
家族や人の記憶が優しく特別なもので
ありますように
