私は作文が得意。
ある新聞で「文は端的に起承転結をまとめあげる
のが、読み手も素早く理解できる」とあり、
そこから作文を書くのが好きになった。

牛さんはこういうのが苦手。
「まずは元気か?と挨拶から始まって
実は…と今の暮らしの状況、
そしてどうしたいかを述べ、返事待つと書けば?」と伝える。
たった1枚の便箋に何時間かけただろう?
なかなか鉛筆がすすまない。
さっさと書けばいいのに…
結局、わたしが作った文を丸写し、投函。


今頃読んでるかな?
今頃返事が届くころかな?
電話がくるかも!?
メールかな?

ドキドキしながら待つも音沙汰無し。
1ヶ月過ぎても何もなかった。

給料の通帳やカードは鬼子が持っているため
お金が欲しいと手紙を出すと書留で届く。
お金はすぐ届くのに、手紙の返事は一切ない。

私も色々調べる中で、「離婚調停」という方法が
ある事を初めて知った。
「まず第一歩踏み出してみるか」と調停手続きに入った。

女心としては、やはり装飾品…
指輪が欲しい。
安くていい。
形だけでもいい。
私が安心できるもの。

そんなに高くなくシンプルな物をピックアップした。
駅で待ち合わせ。
いつもは会社の最寄り駅ばっかりだったので
都心での待ち合わせは新鮮だった。

牛さんの気が変わらないうちに
お店へと急ぐ。
シンプルかつ安いもの。
一緒に見ながら選ぶ姿はどこから見ても
普通のカップルにしか見えない。
現実から目を背ければ、ほんとに幸せだった。

常に手を眺めニヤつく私。

2人の証拠は残さないようにしていたので
プリクラや写メは一切撮らなかった。

でもこの日は違った。
観覧車に乗ろうと進むと記念撮影ブースがあった。
普通なら撮らないはずの牛さん。
でも、撮ろうと言ってくれた。
私はビックリした。
「写真残るで?」と言っても
「記念やしいいやん」と。
撮り終えて観覧車へ。

約25分。
都会の景色を眺めながら
牛さんが言った。
「離婚の話をすすめよかな。でも嫁とは
連絡つかんし、どうしていいかわからん」と。
もう、今の状態に疲れたし私に対しても
申し訳なさがうまれたらしい。
嫁とやり直すのは不可能。
「まずは手紙送ってみよ!思いの丈を書いて
これからのことを話し合おうと、誠意を持った
内容で送ってみよ」
私は思い立ったら即行動派。
何なら私が文章作りたいくらい。
それはぐっと堪えて、週末一緒に考えようと
週末の約束を取りつけた。

いよいよ、離婚に向けて動き出した。
すぐ解決すると思ってた。
しかし、長らく放置状態の夫婦の関係は
そう簡単には決着はつかなかった。
二人で会う頻度が多くなる。
仕事の話が主。
女心としては、将来どうしたいかとか
明るい未来の話をしたい。
でも、それを言っちゃうと今の関係が
終わってしまうのではないか?と
なかなか言い出しにくい。
それなら、今の状態でいい。
人に言えなくても、堂々と歩けなくても…
親友や仲の良い人にだけ、わかってもらえたらいい。

肩身の狭い恋愛だけど、
心はとても充実していた。
毎日長電話をし、週末はデート。
季節のイベントも楽しんだ。

ある日のホワイトデー。
仕事中に電話が入る。
「今日は仕事が早く終わりそうやから
どこか出かけようか」
と牛さん初のお誘い。
これは断る理由もなく即答。
「ホワイトデーやしお返しに何か買ったるわ」
こんな嬉しい事はない。
欲しいものとお店を決めといてと言われ、
仕事そっちのけでお店を探した。