いつも週末に寄るロックショップが入居するビルが老朽化で解体が決まり、ロックショップも移転のため今月末での退去を余儀なくされるということで、昨日は現店舗での買い物も最後かとちょっと寂しい気持ちで店に寄ろうとしたら、ビル退去期限が半年伸びたと。慌てて探した新店舗も納得がいってなかったようで、もう少し時間をかけて探し直すとかでちょっと安堵。で、昨日も今さらながらの60年代リリースのアルバムを2枚購入。
その後もいつもどおりコノ字カウンターの居酒屋で一人昼飲み。
月一くらいで通うバスセンター近くのこの大衆居酒屋は昨日も大盛況で、ほぼ満席の中、ひっきりなしに客が入り口の引き戸を開けて入ってくる。にも関わらず、月2~3回通う狸小路の同じようなコノ字カウンターの居酒屋と違って、なんかのんびりと感じるのはなぜなのか不思議。まぁ、これが長年、店と客の間で創り上げてきたこの店の雰囲気というものなのだろう。なんとなく昼飲みで手が伸びがちなスマホはほどほどにして、そんな店員と客を交互に観察しながらのんびりとした時間を過ごすのも悪くない。
ウイスキーをロックで飲みながら過ごすゆったりとした夜になんとなく聴きたくなるのが、海外ならロッド・スチュワート、国内ならSION。どちらもソロシンガーというのが共通点。
SIONを好んで聴くようになったのは東日本大震災の翌年にリリースされたアルバム「Kind of Mind」からだから、かれこれもう13年も前のことになる。
なんで急にSIONのアルバムを聴きたくなったのかはちょっと思い出せないなのだが、何かのレビューで目にしたこのアルバムのジャケットに映るSIONの横顔が、自分の知るSIONのデビュー当時のとげとげしいというかゴツゴツとした雰囲気とは違って、長年をかけて角がとれた優しさを含んだ落ち着いた表情に見えたのが、もしかしたら心のどこかに引っかかったのかもしれない。楽天のスピードくじか何かで当たった10,000ポイントを使って購入したというどうでもいいことだけはしっかりと覚えているのがちょっとだけ悲しかったりして。
このアルバムと、次の「不揃いのステップ」、その次の「俺の空は此処にある」は、それぞれのその年の野音のライブDVDが付属されているのも嬉しかったり。
SIONを知ったのは1985年に自主製作でリリースした「新宿の片隅で」が話題になった頃。宝島か何かの雑誌の記事だったと思う。確か路上生活なんかしていたようなことも書かれていて、そんなことも衝撃的に受け止めた記憶があるのだが、本当にそうだったかは定かではない。で、そのSIONが翌年にはいよいよメジャーデビュー、しかもレコーディングメンバーには花田裕之、池畑潤二、穴井仁吉というルースターズ、ロッカーズのめんたいロック陣の名が並んでおり、バンドではなくアコースティックなソロアーティストということだったが聴かずにはいられないということでリリースに合わせてLPレコードを買った記憶がある。
そのアルバム「SION」に収録されているのは
1. 風向きが変わっちまいそうだ
2. SORRY BABY
3. レストレスナイト
4. コンクリート・リバー
5. 新宿の片隅から
6. 俺の声
7. TONIGHT
8. 今日もまんざらじゃなかった
9. ハード・レイン
10. 街は今日も雨さ
の10曲。
40年近く経った今でも彼の代表曲として演奏される曲ばかりで、特にレストレス・ナイト、コンクリート・リバー、新宿の片隅から、ハード・レインの4曲は案外ハードな感じなところもあるのが気にいってよく聴いていたのを覚えている。
それが、この次のアルバム以降、25年近くも彼の作品から離れていたのは、ハードとはいえアコースティックなソロシンガーのアルバムよりもビートロックバンドのアルバムを優先したかったのか、歌の向こうに見える大都会に住む若者の人生と自分の生活との違いを受け入れきれなかったからなのか、30年も経った今ではちょっと曖昧である。その後、新宿で働くことになった時には、新宿の片隅からののしり合う町を見てるなんて余裕はないほどの激務だったのが、今となっては懐かしい思い出だ。
どちらかというと神保町やお茶の水界隈のゆったりとした街の雰囲気の方が落ち着く自分だが、今でも東京に行けば必ず新宿に寄ってしまうほどに都会=新宿、ロック=新宿、危険な街=新宿という憧れにも似た固定観念が今でも頭の片隅に残っているのかも。
ということで、SIONといえば新宿が思い出される自分なのだが、そんなSIONのおおすめといえば「抱きしめて」や「SION10+1」のような、彼の作品の中でもよりしっとり感じるアルバムになってしまうのは決して歳のせいではなく、ウィスキーのロックを飲みながら夜に聴くのにピタリとハマるからということで。
今週も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。