孤独のグルメのテレビシリーズは初回から漏れなく観ているのは多くの同年代の方と同様で、そんなことから昨年末から映画が公開されたら観に行こうと決めていて、この週末の時間をそれに充てる予定でいた。


ところが、ローカル新聞紙に掲載されたある映画の記事が目に留まり、どうしてもこれが観たいという衝動が抑えきれず、結局は孤独のグルメは次の機会ということで、昨日は新聞で紹介されていた方の映画を狸小路にある映画館で観てきてしまった。

その前にブックオフで懐かしのノヴェラの12インチシングルを見つけて買ったりして。


で、肝心の映画のタイトルは「美晴に傘を」。

札幌の隣小樽市のそのまた隣にある余市町が舞台。漁師とその亡くなった息子の残された家族の心の交流を描いた作品。


予想通り、孤独のグルメのようなエンターテイメント性は皆無。静かに、でも淡々とではなく流

れていく時間、その中での登場人物たちの心の動き、機微が丁寧に描かれていた良作。ラストに近づくにつれ、図らずも涙が止まらず・・・。


映画ファンの方ならそんな感動を引きずりながら静かに喫茶店でコーヒーなんかを味わうところだろうが、終わった途端、映画館の並びにあるいつもの居酒屋に向かうところがなんともトホホな自分である。

というどうでもいい話は横に置いといて、今週もぼちぼち始めることにしましょうか。



先日ネットを見ていて、昨年11月に札幌で甲斐バンドのライブがあったことを知った。またやってしまった。メジャーどころのバンドのライブ情報に疎く、ここのところ終わってからライブがあったことを知り悔しい思いをすることが多い。

パンクロックやめんたいロック好きが甲斐バンドなんか聴くんだ?なんて思われる方もいるかと思うが、意外にもこの界隈に甲斐バンド好きが多い。ただ、ライブに行ってもその手の方を(所謂革ジャンを着た人や、チェーンなんかのアクセサリーを付けているような人たち)見かけることはほぼないのだけど。


甲斐バンドを知ったのは大方の方同様、1978年から1979年にかけてヒットしたHERO(ヒーローになる時、それは今)で。初めて彼らのレコードを買ったのもこのシングルレコード。中二の時だ。

その後、ベストアルバムの甲斐バンド・ストーリーを買い、彼らのそれまでの代表曲の数々を知ることになる。

ただ、それが中学の時だったのか、高校に入学した後だったかは全くもって記憶がない。熱心にこのベストアルバムを聴いていた割にオリジナルアルバムにまで手を伸ばさなかったのは、パンクロック系統に流れていく中で、当時商業ロック的に見えてしまった甲斐バンドを追いかけるのがカッコ悪く感じたことは否定できない。今振り返るととんだ勘違いではあるのだけれど。


その後、高3の終わりころ、同級生に彼らのアルバム「破れたハートを売り物に」を借りて、その音楽性の変化に驚かされるも、結局彼らの音楽をしっかり聴きだすのは40歳を過ぎた頃になってしまったことに、ARBを脱退した田中一郎が甲斐バンドに加入したことが影響していることは間違いない。


当時、ARBから売れっ子バンドに寝返った裏切者。というパブリックイメージを信じ込んでしまった自分。そうではないことはARB時代の石橋凌について語られる「渾身・石橋凌」に詳しいが、ただ、これを読んだ当時でさえ、相変わらず裏切者と捉えてしまったままだったのだから、若さゆえの思い込み、理解力、読解力のなさはかなりものだったのだろう。


その後、再び彼らの音楽に触れたのが2009年の武道館公演のライブDVD。

この作品で彼らの圧倒的なライブパフォーマンスと、曲の良さを知ることになり、その後、彼ら

のアルバムとDVDをコツコツと集めだすことになるのはいつも通りのこと。そんな頃に公開された映画「照和」で甲斐よしひろとモッズの森山達也、ロッカーズの陣内孝則なんかとの繋がりを知り、改めて甲斐バンドを避けていた自分のバカな思い込みを痛感することになる。

森山達也は甲斐のソロアルバムに「えんじ」という曲を提供している。

なぜかアルバムのクレジットが森山達夫となっていることと、その昔、「照和」のオーディションで森山が歌うこの曲を気に入った甲斐が森山(と浅田孟の開戦前夜というバンド)の出演を店側に強く推薦したことはモッズファンには有名なエピ

ソード。

自分が好きな甲斐バンドのアルバムと言えばやはり「破れたハートを売り物に」になろうか。

ARB在籍時の田中一郎がゲスト参加した(この参加がARB内の不和に繋がったなんて話もあるが)このアルバムは、1,100時間もかけたレコーディングだったが甲斐自身は自身が描いたサウンドとはならず満足できず、次作のNY3部作第一弾の「虜」でホブ・クリアマウンテンを起用し完成したサウンドに泣いて喜んだなんていう逸話もあるが、自分が断然「破れたハートを売り物に」を推すのは、以降の作品で薄れていくバンド感に加え、離婚直後の甲斐の心情がストレートに伝わってくることに依ることからだが、この辺はにわかファンの間の薄っぺらな感じ方というこでご勘弁を。


DVDは2014年の日比谷野音でのライブを収録した「KAI BAND HIBIYA YAON LIVE 40th Anniversary Tour 2014 COMPLETE」がお薦め。

花園ラグビー場や日本武道館等大きな会場で数多くのライブを行ってきた彼らでさえ、日比谷野音でのライブが気持ちよく映るのは、やはり野音が持つ独特の空気感が大きく影響するのだろうか。


ライブ活動はコンスタントに続けているものの、オリジナルアルバムは2009年の「目線を上げろ」を最後にもう10年以上リリースされていないのが寂しいところだが、70歳を超えてなお切れの良いライブパフォーマンスを続ける甲斐とメンバー(今は松藤と田中の2人だけだが)のこれからにも注目を続けたいところだ。って、ライブを失
念しておいて何を言ってるんだ!ってことですが。

↓小林旭のカバーのこの曲もオススメ


今週も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。