ドカドカうるさいロックン・ロール・バンド。

と言ってもRCサクセションの曲のことではない。

パンクを聴く時、ロックを聴く時、ボーカルはもちろんしっかり聴くというか聞こえてくる。ギターも気になる。ベースは特に気になってそのフレーズを追いかける。それなのによくよく振り返ってみると、ドラムを中心にサウンドに向き合ったことはほとんどない。

そもそも好きなドラマーは?と聞かれても名前を知ってるのすらほんの一握り。
クラッシュのトッパー・ヒードン、ピストルズのポール・クック、リンゴ・スター、キース・ムーン、ジョン・ボーナム、ピーター・クリスくらい。


それなのに、中3か高1の時にリリースされたコージー・パウエルのソロアルバム「オーバー・ザ・トップ」はそのジャケットとともにずっと記憶に残っていた。

あの頃、ハード・ロックが好きだった近所の同級生に熱く語られたからなのか、そもそもドラマーのソロ・アルバム自体が珍しかったからなのかは自分のことながら定かではないし、このアルバムを聴いたこともなかった。

ただ、モーター・バイクでドラムの上を飛び越えるモノクロのジャケットが、そこに掛けられた青と赤の帯と相まって40年以上過ぎた今の今まで、ずっと頭の片隅に記憶として残っていたということだ。

昨年末、オークションサイトか何かで偶然このアルバムを目にしてから、なんとなくこのアルバムが聴きたくなりあちこちのサイトを覗いてみた。帯とのセットで頭に焼き付いてるのだから、当然レコードを探すことになったのだが。
価格は800円から1,200円くらいというところ。ただ送料が付くとどれも1,500円以上、状態もそんなに芳しくない、ということでちょっと躊躇してたところにたまたま休日に寄ったブックオフのレコードコーナーで700円のものを発見し即購入。

ボーカルなしのインストアルバムってことは事前知識としてあったものの、当然ドカドカのドラムを軸に据えたハードロックなんだろうと勝手に想像しながら針を落としてみた。

「??」

コージーのドラムで始まってはいるものの、冒頭一曲目からいきなりドン・エイリーの手によるシンセサイザーYAMAHA CS80?の「ピュピューン!」の連続に肩透かしを喰らうが、ニュー・ウェイブな音作りはあの時代特有のモノ、といえばまぁ頷けるか。3曲目も似た感じである。

この2曲、何度か聴くとサウンドがある曲にどことなく似ていることに気が付いた。


このアルバムと同じ年にリリースされた日本のベーシスト後藤次利のファーストソロの1曲目Mr.Bassmanだ。

このMr.Bassmanは高橋ユキヒロと坂本龍一のY.M.O陣がバックを務めていたんだった。

共時性というのは国の垣根も越えてしまうのか。


話をコージーのアルバムに戻そう。
オープニングで驚かされるも、2曲目KILLERではゲイリー・ムーアの超絶ギターソロを聴くことができる。
だが、アルバムを通して聴くとどちらかというとクロスオーバー寄りなサウンド。
もちろんドラムソロは堪能できるものの、想像していたほどドカドカのドラム・ソロが続くわけではなく、意外にドン・エイリーの鍵盤、ジャック・ブルースのベースが音の主体になっている感じ。
そもそもコージーのドラムってこんな感じだったっけ?と唯一手元にあったレインボーのダウン・トゥ・アースのCDを引っ張り出して聴いてみた。

リリース当時はそのポップさに賛否が分かれていたアルバムだ。いやいや、こちらではドカドカいってました。自分にとってのロックン・ロールってのとは違いますが。


それでも案外このコージーのソロ・アルバムが気に入って、何度も繰り返し聴いてるうちに結構パワフルなドラミングに聴こえてくるのだから不思議。もしかしたらレコードとCDの音圧の違い?なんて思えてきたりもするのだから、人間の耳ってのは勝手なもんだ。


決してドカドカうるさいロックン・ロー・バンドって感じのアルバムではないけれど、40年以上の時を経てようやく体験できたコージーの世界は予想を遥かに超えて、パンク好きな男にとってもお気に入りの一枚となってしまった。 


かと言って他のアルバムにも手を出すかというと、そうではないところが一筋縄ではいかない天邪鬼な自分なのではあるのだが。


よく晴れ渡った日曜の朝、部屋の中ではコージーではなく、ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツのナンバーが流れ続けている。
こっちは正真正銘のドカドカうるさいロック・ロール・バンド。

たまにはコージーみたいなのもいいけど、やっぱりこっちの方が落ち着くな。



今週も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。