リザード3部作(メジャー期の作品を指してこう呼ばれている)の3作目「GYMNOPEDIA」、このアルバム以上に深く聴かせるものにはいまだ出会っていない。
それほどに自分の中では極めて重要な作品。その思入れの深さゆえか、アルバムの素晴らしさを言葉にしようと思っても言葉に出来ず、なかなかレビューできずにいたが、1981年にリリースされてから40年を迎える今こそレビューせずにいつするんだ、ということで。

前作「バビロンロッカー」リリース後、ヘロインを購入した疑いで逮捕されたモモヨ。その留置場での生活、保釈後の彼を取り巻く様々な出来事がモモヨを深く自己の内面に潜り込ませたことは想像に難くない。
その内面をえぐり出すのではなく、丁寧にひとつひとつ紐解くように作品化したのがこのアルバムではないだろうか。

お茶の水の古書店で手に取った古代の黄金を使った芸術品を扱った写真集、そしてエリック・サティの有名なピアノ曲「ジムノペディ」から着想を得たといわれるアルバムは「祝祭」がひとつのテーマになっていると思われる。


アルバムジャケットも黄金色で縁取られ、裏面に写された写真は先の写真集からのものではないかと想像できる。

表面の写真はステージのモモヨの姿を連写したもので、当時モモヨが意識していたステージ上での「静」について「動からの静」としてジャケットで表現したものと勝手に解釈しているのだが。
個人的にはクラッシュのロンドンコーリングと並ぶ秀逸なジャケット。

アルバムに封入されたハガキだったか応募券だったかをレコード会社に送ると写真・歌詞集が送られてくる、ていうのもうれしい企画だった。



収録曲
A-1 セレブレーション/穴居人
自分の住むこの場所を古代の洞窟に見立て、暗い洞窟から光で満たされた外の世界へ抜け出すんだ、これが自分の祝祭だ。
と理解しています・・・


A-2 ランド
布団に潜り込む留置場での夜にモモヨを救った夢、そこで目にした夢見る国。
これを名曲と言わずして何を名曲と言うんだ、というほどに素晴らしいです。

A-3 ジムノペディア
ロックという名の呪術

A-4 放蕩息子の逆襲/THE DAMNED
アルバムを手にした若き日はこのタイトルと"母親は息子にスカートをはかせ 父親は息子の恋人を盗む"の歌詞にやられました。

低く唸るワカのベース、北川の弾くギターの旋律、ベルのハイスピードなボンゴの連打。モモヨ色が濃いアルバムの中で各メンバーの演奏の素晴らしさが際立つ一曲。



A-5 ガレキとガラス
留置場で聴いたある囚人の唄、その彼から聞かされたジョンの死。これらの出来事が曲となったのでは?とモモヨの私小説を読んで思い至った記憶。
冒頭から続くリズムボックス的なバックが実はサウンドの肝では?というのは勝手な想像。

B-1 バビロニア
東京を古代の都市に見立てて歌われていると思われる歌詞はA-1セレブレーションにも通じる祝祭がテーマ?
ここでもやはりリズムボックス的な音が心地よい。

B-2 亡命者/ニジンスキーのために
当時雑誌に載っていたある人物の全曲解説には、政治亡命者の歌ともとれるというようなことが記されていたが、自分の解釈は全くの別。
バンド、恋人、すべての裏切りからモモヨを救うのはやはりロック。彼は音の世界に亡命しただけ。
A-2ランドと並ぶ名曲中の名曲。

B-3 ダンス
Let's Dance!!ボウイのそれとは違った意味で。

そう、踊り狂え!!

B-4 牧神の午後
ワルツなアレンジが心地よい極上の子守歌(僕にとってはです)

B-5 ポピーズ
彼らのロックがラストで昇華されるイメージ。
モモヨのと思われるギターソロも短いながら音の粒が昇華されていくような旋律。

本アルバムは彼らの重要曲「王国」のイントロからA-1に繋がり、B-5に続き「王国」の梵鐘で終結する。
それはあたかも彼らが築いてきた王国が崩壊し、その崩壊した王国が再度構築に向かおうとしているようにも受け取れる。

そう、このアルバムは彼らの王国再建の祝祭そのものなのだ。

ファーストの鋼鉄都市からセカンドのバビロンロッカーでのサウンドの変化にも驚かされたが、このジムノペディアで見せたサウンドの変化、というより進化は海外のどんな有名なロックバンドにも引けを取らない内容であるにも関わらず、意外に国内では過小評価されているきらいがある。今でもリザードを扱う記事で紹介されるのはファーストが多いし。
そんなことからも是非彼らの、モモヨの築き上げた素晴らしいこのアルバムを多くの方に体験してほしい。

でも、こんなオイラの解説なんてどうでもよくて、ただただこのアルバムを聴いて自分で感じ取ってくれればよいのだ。

一期は夢よ、ただ狂え 

Let's Go Crazy!!

モモヨもそう言ってたしね。