ここ札幌の桜の開花はもう少し先だが、外の空気はすっかり春の匂いだ。


春といえば出会いと別れ。


出会いと別れの前には、大なり小なりの岐路(十字路)が立ちはだかり、どの道を選ぶべきなのか少なからず悩んできたものだ。

そんな十字路に立った時の悩み、迷い、そして決意を歌ったロックナンバーを何曲か。


まずはルースターズ(Z)のラストアルバムFOUR PIECESに収められた(Standing at)THE CROSS ROAD

前作PASSENGERを最後にZ期を共に歩んできた柞山と灘友が脱退し、唯一のオリジナルメンバー花田裕之までもが辞意を決意。もう一人のメンバー下山淳はそんな花田の思いを汲み、元ロッカーズの穴井仁吉、元ローザルクセンブルグ〜メトロファルスの三原重夫をメンバーに向かい入れ、解散を念頭においたラストアルバム制作をしたことは有名。

花田がこのアルバムで作詞・作曲を担当したのは全10曲中3曲だけ。A面ラストを飾るこの曲はその数少ない中の1曲で、ルースターズ(S)のファーストに入っていても違和感がない高速ブルース。

ずっと俺は
見渡している
ここでずっと
あたりを見渡している


池畑、井上が去った時、大江がいなくなった時、大江がソロで復活した時、そして柞山、灘友までが去った時、花田はきっと十字路で行きたい場所、行くべき場所をじっと見定めていたのだろう。そして選んだのはいつもギターを鳴り続けさせることだった



今でも彼のギターを弾き続ける姿を観ることができるのは幸せ以外の何物でもない。



ルースターズ解散から22年の時を経て花田50歳の生誕祭にZ期のメンバーが集結したのは奇跡。この時のライブを収めたDVDのタイトルはTHE CROSS ROAD MEETING at SHINJUKU LOFT。

再び彼らの人生が交差したひとときに感涙。



次にエコーズのCrossroad Again

Crossroad 右へまがるのか
Crossroad 左へおれるのか
Crossroad まっすぐ進むのか
Crossroad 今立ち止まるか


人生のちょっとした岐路に立った時に頭の中をかすめるのはいつもこのフレーズだ。そして、選ばないことを選ぶという選択肢があるということを知った曲でもあった。
この曲が収められているサードアルバムのNo Kiddingはエコーズ初期の完成形だと思っているのだが、当初フルアルバムで制作される予定が、辻仁成のスランプにより6曲しか用意できずミニアルバムになったとのことなので、彼らの中では少し不本意なアルバムなのだろうか。
What Can I Do?という曲で、当時辻と交際していたレベッカのノッコがコーラスで参加しているのも(クレジットにはなし)ちょっとした聴きどころ。



そして、ストラマーズの十字路の彼方

リズム隊が固定されず元アンジーの岡本有史等のゲスト・ミュージシャンを向か入れて制作されたアルバムTOKYO JESUSに収録されている1曲。

明日の俺はどこへ行けばいい?と十字路のド真ん中で悩んでいた青年が


新たな扉に弾丸撃ち抜き

遠くまでゆこう 

また来る夏を探しにゆくのさ 

十字路の彼方へ 


と、何かを吹っ切り遠い彼方を目指す力強いメッセージが響く。

イワタ、アキトの2人ストラマーズだったこの頃、2人とも少しだけ髪を伸ばしサウンド的にもそれまでと違った印象のものも多く、アグレッシブでチャレンジングな面が垣間見れる、古巣クラブ・ザ・スターからリリースされたこのアルバムはかなりお薦め。



十字路でもう一つ頭に浮かぶのはジム・ジャームッシュ監督作の映画「ダウン・バイ・ロウ」のラストシーン。


刑務所から脱獄したジョン・ルーリー、トム・ウェイツ、ロベルト・ベニーニが演じる3人が逃げ込んだダイナー。ダイナーの女主人と恋仲になりダイナーに残ることになったロベルト。ジョンとトムはダイナーを去り、道が二手に分かれるところでジョンがトムに「お前が選べ おれは反対に行く」と言い、お互い着ているジャケットを交換し、左右の道に分かれ進む。

これ以上ない粋な別れ方のこのシーン。憧れたなんてもんじゃない。刑務所に入れられるようなことはゴメンだが。

でもこのシーン、よくよく考えたら十字路じゃなく三叉路だったなと・・・。



あの時、あの十字路でそれぞれの道に分かれた友たちはどんな彼方に行き着いたのか。

再び彼らと交差する時が訪れるのだろうか。

いまだ十字路で迷い、右往左往している自分の目指す彼方はどこなんだ?

選ばない方を選ぶ手もあるんだし、まずは一休みして、じき開花するはずの桜でも探しにゆくとしようか。