RCサクセションの名前を知ったのはアルバム「シングルマン」再発の雑誌広告で。だったと記憶している。確か「こんな素晴らしいレコードを廃盤にしていて申し訳ありません」みたいなコピーが妙に心に引っかかったんだ。
この時期は彼らが5人のロックバンド体制となりライブハウスの動員もにわかに増えだしたことがロック雑誌でも取り上げられるようになっていて、シングルマンに収録されている「スローバラード」は素晴らしい曲だ、なんて話題も聞こえていた。
そして、その噂のライブが「ラプソディ」というタイトルのアルバムにパッケージされてリリースされたのが1980年6月で、高校入学直後の僕はこのアルバムにすぐ飛びついた。
イントロのリズムギターがイカシてた「雨上がりの夜空に」に一発でやられたんだ。
待望のスタジオアルバム「PLEASE」が発売された時もすぐさま手に入れたかったが、小遣いが乏しい中では他のアルバムが優先されてしまい、発売と同時に聞くことはできなかった。
でもラッキーなことにアルバムが発売されてすぐの冬休み、バイト先で知り合った別の高校の先輩がこのアルバムを持っていて、出会って間もない年下の素性のわからないこの僕に貸してくれることに。あの頃はみんな、気軽にレコードの貸し借りをしてたんだ。
ソウルやR&Bの影響も大きい彼らのサウンドは自分の嗜好とは少し違ってはいたが、それでも彼らのロックンロールは十分すぎるほどに当時の僕を虜にした。
ロックンロールマジックってやつだ。
特に好きだったのはパワーコードのギターで始まる「トランジスタラジオ」。
Woo 授業をさぼって
陽の当たる場所にいたんだよ
寝転んでたのさ 屋上で
たばこのけむり とても青くて
内ポケットにいつも
トランジスタ・ラジオ
彼女 教科書 広げてるとき
ホットなナンバー 空にとけてった
あー こんな気持ち
うまく言えたことがない ない
この曲を聞いて、実際に授業をさぼって学校の屋上で寝転んでタバコ吸ってみた奴は全国にどれくらいいただろう。少なくとも同じ学校に一人いたことを僕は知っている。そう、当時通っていた高校には生徒が自由に出入りできる屋上があったんだ。
この曲を聞くたびにあの屋上の光景が鮮明に甦るくらい、この曲とあの時の校舎の屋上の光景はリンクしている。
高校1年の時にはとっくにタバコを吸い始めていたのに、僕はどうしても授業をさぼって屋上でタバコを吸う冒険はできなかった。
不自由の中の自由。
学生の頃ってそういうことだろう。
親に養ってもらっているがゆえにまだ自立できないからこその不自由さ。
そんな中で自由を求めて制限をかけずに無茶なことややんちゃなことをやれてしまう、それが青さのはずなのに、自分ときたら不自由の中の不自由ってやつだった。自分で自分に制限をかけていたんだ。
今になって考えると、先生に見つかったり、停学になったり、親にしこたま叱られることなんか大したことじゃなかったはずなのに、あの頃はそんなことにビビっていた気の小さい奴だった。
大人になって自由を手に入れたはずの現在(いま)はどうだい?
結局は自分に制限をかけているんじゃないか?
自由であるはずなのに不自由を選択をしていないか?
オイラときたら相変わらずこんなありさまだ。
だから現在(いま)でもキヨシローの歌が聞きたくなるんだ。
季節外れの 激しい雨が降ってる
叩きつける風が泣き叫んでる
お前を忘れられず 世界はこのありさま
海は街を飲み込んで ますます荒れ狂ってる
築き上げた文明が 音を立てて崩れてる
お前を忘れられず 世界はこのありさま
オー 何度でも 夢を見せてやる
オー この世界が 平和だった頃の夢
RCサクセションが聞こえる
RCサクセションが流れてる
たまには会社をさぼって 公園のベンチでぼんやり風に当たってみたっていいだろ?
許してくれよ キヨシロー。