今回紹介する洋楽カバーは、こんな日本語にしちゃう?とか、このバンドがこんな曲をカバーするのかというものを。

まずはパンクバンドラフィンノーズのメジャーデビュー3作目”ラフィン・ロール”に収められたカバー。


シド・ヴィシャスがマイ・ウェイをカバーした以降、パンクバンドがポピュラーソングを高速バージョンにしてカバーするってのが定番に。

ラフィン・ロールに収められたカバーもまさにこのパターンなのだが、選曲が”ホワイトクリスマス”で意表を突かれてしまった。

まぁ、聖者が街にやってくるをカバーしてたバンドだから、ありって言えばありではあるが。


チャーミー、ポンの不動の2名にマル、ナオキと今となっては豪華すぎるメジャーデビュー時のメンバーが紡ぎ出すホワイトクリスマスは、出だしから”I’m dreamin of white X’mas 平和な世界に 核の雪が降る 楽しいX’mas 子供たちもワクワク ヒヤヒヤ”と決して一筋縄ではいかないところはタメの効いたある意味心地よいサウンドとともに自分的にはツボ。




同じくパンクバンドのTHE PRISONERは国内外のバンドのものを問わずカバー曲が多いバンド。
僕が彼らの音に初めて触れた2017年にリリースされた"名もなき世代''にも2曲のカバーが収録されている。
英詩のまま歌われるクラッシュの"ポリス・オン・マイ・バック"はパンクバンドの選曲として頷けるところだが、ジョン・デンバーのカントリーロードは虚を突かれる選曲。
僕らの世代にはオリビア・ニュートンジョンのカバーや、平日朝早くに放送されていた”おはよう700”の主題歌として田中星児が歌っていたカバーで馴染みが深い歌だが、ここでは映画”耳をすませば”のエンディング主題歌バージョンの歌詞が選ばれていて、しかも歌うのはメインボーカルの影山潤一郎ではなく女性ボーカリストのNANA GNAR GNARってことで一発でやられてしまった。

彼らがこのアルバムがリリースされた時の雑誌インタビューでカバーについて問われた際に「曲には仕組みやパターンが隠されていて、それらをカバーすることで自分たちの曲に反映されていく。引き出しが少ないと曲ができていかない。カバーで手に入れた知識をセンスという」みたいに答えていたのを読んで少しだけ合点がいった。そこには選曲のセンスもあるなと。

カントリーロードじゃないが彼らの最新曲を




次は、今ではご存じの方はあまりいないのでは?というバンド「誰がカバやねんロックンロールショー」。

このバンドは1980年前後、お笑いを取り入れたライブパフォーマンスが関西で絶大な人気を誇り、「ロック版クレージーキャッツ」のコンセプトのもと大手の渡辺プロダクションと契約してデビュー。関西ではバンド名を冠にしたバラエティ番組があったほどの人気バンドで、東の東京おとぼけCATSに対する西の誰カバって紹介のされ方でロック雑誌にもよく登場していた。

そんな彼らのファーストアルバム「誰がカバやねんロックンロールショー」に収められたカバー曲は、オーソドックスなルーツロックスタイルの演奏がベースになっているものの、バンドコンセプト通りに笑いを誘う内容のナンバーに仕上がっている。
このアルバムには山下敬二郎のカバーで有名な”ルイジアナママ”が”類人猿ママ”というタイトルで・・・。
山下敬二郎のカバーの詩をベースにしたあまりにもふざけた捧腹絶倒の歌詞をそのまま紹介しよう。
“あの娘は類人猿ママ やって来たのさイモ掘りに 髪はザンバラ目は奥目 バケモノだぜできすぎさ マイ・ルイジンエン・ママ もうこりごり みんなが石を投げたけど 誰にもあてられぬ どうして僕が射止めたか町中のうわさ マイ・ルイジンエン・ママ もうこりごり 盆踊りのあった あの晩に 江州音頭を最後まで 踊ったこの僕をみそめて あの娘がそっと打ち明けた 僕が好きだって 胸はムカムカ えづきそう コロリと倒れたぜ マイ・ルイジンエン・ママ もうこりごり”
あまりにも出来過ぎな歌詞に脱帽。
他にも”銭くれ銭くれ”と歌うリトル・リチャードのジェニ・ジェニのカバーも。

今回聞き比べのために改めて聞いてみた山下敬二郎のバージョンも甘い歌声が心地よくてなかなかでした。

↓ボーカルは当時のダンシング義隆ではない…




最後はP-MODEL。

今回紹介するカバーが収めらている彼らの5枚目のアルバム「ANOTHER GAME」は収録曲ATOM-SIBERIAの歌詞に対するレコ倫からのクレームで発売が延期になったことは有名。
僕もこの騒ぎがきっかけでこのアルバムを購入したはず。
このアルバムに針を落とすと曲が始まる前に「アナザ―ゲーム・ステップ1。楽な姿勢で座り、目を閉じてください。今から私が三つ数えると、あなたはリラックスします。一、あなたはリラックスして行きます。二、深くリラックスして行きます。三、あなたはリラックスしています。そのままでできるだけリアルにあなたの環境を・・・(まだまだ続く)、それでは音楽をお楽しみください」といきなり男性が静かに語る3分にも及ぶガイダンスから始まり、テクノパンク時代のセカンドアルバム「ランドセル」のイメージが頭にあった僕はのけぞった。
ガイダンスに従いアルバムを聴くことで覚醒でもできるのか?という浅はかな願いで何度かガイダンスに従ってみたものの当時の(今もか)落ち着きのない僕にはリラックスしてこのアルバムを聞くことすらできなかったのだが。 

本題のカバーは初期ピンクフロイドのBIKE。
そういえば、この曲のカバーでも当時かなり話題になっていた。
そもそもピンクフロイド自体を聴いたことがなかった僕はアルバムの中でも異彩を放つこの曲のサウンドに「随分突拍子もないアレンジでカバーしているな」と、ピンクフロイド=小難しいプログレという誠に勝手なイメージだけで思っていたのだが、最近、初めて原曲を聞いてみたところほぼ原曲に近いアレンジであったという・・・、いやいや勉強不足でほんとゴメンナサイという感じであったのだ。
それでもやはり “合言葉はバイク ここぞかしこで アインシュタインとクリスチャンの頭上を走る 僕の借り物バイク” と歌われる訳詞には、原曲の作者シド・バレット同様の難解さを示されている気分になってしまうのは仕方ないところであろう。

でも実は意外にこのアルバムが好きで、たまに引っ張り出して今でも聴いてしまうのは平沢進マジックに侵されているってことなのか。



3回に渡って洋楽カバーを紹介してきたがまだまだ紹介しきれてないくらいではあるが、次は邦楽カバーってのもいいかもなぁ。