前回で終わらせるつもりだったそろそろソロシリーズ。バンドマンが出したソロアルバム、バンドからソロに転向したロッカーの作品などの中からお薦めのものを紹介したのだが、Punksなのにこんなのも聴いているんだ?という少しだけレアなものを今回は番外編ということで。
MR.BASSMAN/後藤次利
サディスティックスで活動を共にした高橋幸宏、その繋がりの坂本龍一、松原正樹などがレコーディングメンバーに名を連ねているためか、1曲目のアルバムタイトル曲でスコットランド出身のジョニー・シンバルが1963年にヒットさせた名曲MR.BASSMANのカバーはYMOの曲と言ってもわからないほどの大胆なアレンジで演奏される。
以降のナンバーは当時流行していたA.O.R、フュージョンなんかの雰囲気に近いため他の曲とはアレンジの違いが際立っているが、アルバムのオープニングを飾るナンバーとしては絶妙。
この曲でこそベーシストの本領発揮といった感じでゴリゴリのベースソロを聞かせてくれるが、他の曲でのベースはどちらかという控えめな感じ。オリジナル曲7曲のうち3曲を筒美京平が作曲を担当しているのも注目。
このアルバムを購入したのは中学2年か3年の時。ベースに興味もなかった自分がなぜにベーシストのアルバムを買ったのか?
多分、当時好きだったアイドル木之内みどりが彼と恋の逃避行なんかのスキャンダルで騒がれてのことだったんだろうけど、買って大正解だったアルバム。
5年ほど前にタワレコ良盤発掘隊でようやくCD化。久々に聞いたらやはり良盤でした。
個人的に超お薦めです。
元々ギタリストだった後藤次利がベーシストになったきっかけが岸部シローのツアーでベーシストがいなく急遽頼まれてのことらしい。そのツアー開始数日前に岸部シローの兄岸部一徳についてもらいベースを習得したという逸話は興味深い。
JOLLY JIVE/高中正義
フライドエッグ、サディスティック・ミカ・バンド、サディスティックスなどのロックバンドでの活動を経てソロアーティストへ。
5枚目のソロアルバムとなったJOLLY JIVEは当時のトロピカルブーム、フュージョンブームと相まって一気に人気が爆発した記憶。
こちらも先述の後藤次利のアルバム同様、高橋幸宏、坂本龍一がレコーディングに参加している。
オープニングナンバーのBLUE LAGOONはパイオニアステレオのCMソングにも採用され、インストナンバーとしては異例のヒットとなったのはご承知のとおり。
ジャケット、トロピカルブームなんかの印象から夏のイメージが強いが、中にはパラレル・ターンなんかの冬をイメージした曲も。
それでも夏になると引っ張り出して聴きたくなるのは、みなさんにとってのTUBEのようなものでしょうか(笑)
彼の持つヤマハのSGというギターも爆発的な人気で、音楽雑誌の裏表紙によく広告がでていましたな。
この頃の中学2年から3年にかけての時期は、ベイシティローラーズのアイドルロックを卒業して大人のロックへシフトしかけていた時期のためか、一番色んなジャンルのものを貪欲に聴いていた時期でもあった。ツェッペリン、キッス、TOTO、フォリナー、スーパートランプ、ジャパン、高中正義、後藤次利等々、今ではなかなか手を出さないジャンルの音楽に次々手を出していたのが懐かしい。
BLACK or WHITE/水口晴幸
クールス結成メンバーでボーカリストのピッピこと水口晴幸がクールス脱退後の1980年にリリースした1stソロアルバム。
プロデュースが山下達郎!!というのは、クールス時代のアルバムを彼がプロデュースした繋がりなのだろう。作曲家陣も山下達郎の他、筒美京平、柳ジョージと豪華な顔ぶれ。
“男泣かせのすれた女 本気で惚れちまった”といかにもな歌詞で始まる1曲目DRIVE ME CRAZY。その他にも「あとはもう気分」、「CRY BABY」、「FIFTEEN」、「キメてしまえば・・・」と曲のタイトルもいかにもなものが並ぶ。しかし、アレンジがクールス時代のオールディーズ、ロカビリー的なものもありつつ、よりロック寄りなものになっているのは、やはり山下達郎のプロデュースによるものなのだろうか。
実はクールスを熱心に聞くようになったのはずっと後の50を過ぎた頃から。そんな自分がクールスより先にピッピのアルバムを聞くようになったのは二十歳を過ぎた頃、同じ歳でバリバリ元ヤンのいとこに薦められてのこと。
“愛することを恐がるなんて 知らず知らずに都会(まち)の色に病んでいるんだよ 正直すぎる男もいるさ ふっと気弱な表情(しぐさ)のあと涙の色だろう”と歌われる名バラード「灯を消して」を夜な夜な口ずさんで涙していたのは惚れたはれたが何よりも優先されていた若さゆえ。
そして「BLACK or WHITE」の”俺の中のBLACK or WHITE 一つ決めるなら 俺は俺のBLACK or WHITE 熱い方に決めるさ” ”一度決めた俺の人生(みち) きついけど悪くない”の歌詞にことのほか痺れたのも何に対しても白黒つけたかった、こちらも若さゆえのことなのか。
でも今聴いても痺れるのだからあの頃から何も成長していないのは明らかなのだが・・・。
このアルバム、現在CDの方は万単位のかなり高額で取引されているようなので、興味を持たれた方はレコードで。
2年ほど前に愛読パンク雑誌で舘ひろしとともに表紙を飾り、しかも2人のインタビューが掲載されたときは涙。
恋のドライビングウェイ/村山一海
クールスでいうとクレイジーケン作「泣きながらツイスト」辺りの昭和ムード歌謡感たっぷりのものに近い感じの曲が多く並ぶアルバム。
クールスのライブでも後年になるにつれ一音一音をはっきり発する歌い方になってきているような気がするが、このアルバムでも特に英詩部分でその辺りが顕著。”I LOVE YOU”なら”ア ラビュー”と歌われるのが普通なところ”ア・ァ・イ・ィ ラ・ァ・ブ・ゥ・ユ・ゥ・-”と特に母音がはっきりわかる感じで歌われるので、いかにも日本人が歌うたどたどしい英語という感じに聞かせるところがツボ。これは人により好き嫌いがわかれるところだろうが、自分は断然この歌い方が好きなのである。
来年には70歳を迎える一海だが、歳を重ねるごとにカッコよさが増しているように感じる。
クールスも今年で結成45年のはずだし、そろそろ新作を期待したいところ。
ALL WASHED UP(美しき挑戦)/レスリー・マッコーエン
ベイ・シティ・ローラーズを脱退したレスリーがバックバンドのエゴ・トリップを従えて発表した1stソロアルバム。
ウエストコースト、A.O.R路線に進んでいくバンドに嫌気がさして脱退したと聞いてたし、雑誌で見る脱退後の姿もかなりいい感じでスタイリッシュになっていたので初期のベイ・シティ・ローラーズのようなポップな路線を期待していたのだが、ジャケットもサウンドも中途半端なハードさでかなりがっかりした記憶。
その後も銀河のロマンス、花の首飾りのタイガースのカバーを発表したりと中途半端な迷走ぶりが目立った。
ベイ・シティ・ローラーズの方もレスリー脱退でよりウエストコースト、A.O.R路線に進み本格的なロックバンドを目指すのかと思っていたら、元ラビットのダンカン・フォールを迎えいれパワーポップバンド路線に転向と、こちらもちょっとした肩透かしを味わった。(ただし、こちらの方は今聴くとかなりの良盤です)
まぁ、このアルバムのお陰(?)で完全にアイドルロックを卒業していろんなジャンルのロックバンドを聞くようになったのだから、そういう意味では感謝すべきアルバム。
現在レスリーはレスリー・マッコーエンズ・レジェンダリー・ベイ・シティ・ローラーズとしてローラーズの曲でライブ活動を続け来日公演も続けているようです。
3週に渡り続けてきたそろそろソロシリーズ、いかがだったでしょうか。こういうのは書いてる自分も意外に楽しめるので、次も何か面白そうな企画を考えるのもいいかもですね。