バンドマンの発表したソロ作品を紹介する「そろそろソロ」の第二弾を。
ROOKIE TONITE/大江慎也
心身の不調から一時ルースターズの活動から離れ静養していた大江がいよいよ復帰。しかしそれはバンドへの復帰ではなくソロという形で。
当時、“衝撃のソロデビューアルバム”などと宣伝されていたが、確かにソロでの復帰は衝撃だった。しかもインディーズで。
このアルバムでバックを務める1984のメンバーでもあり、ルースターズのプロデューサーでもあった柏木省三の戦略だったと思われるが、大江も、大江の復帰を待ってバンドを維持していた花田裕之もかなり疑心暗鬼になったんじゃないかな。
アルバムの方はヴェルヴェットアンダーグラウンドのカバー曲もあったり、どちらかというとルースターズの「GOOD DREAMS」に若干近い感じでもあり。
2曲目の”SHE`S GOT A WAY”や次のセカンドアルバム「HUMAN BEING」に収められているLOVE LOVE LOVEやDROOPING AFFECTIONあたりのGSサウンドに近い曲に好感はもてたが、バンド在籍時に放たれていたエネルギーには及ばず・・・という感じで、やはりこの人のバックには花田裕之が似合っている。
LOVE HURT/花田裕之
この人もソロよりバンドでギターを持つ姿がカッコよくて、ソロ以降は熱心に聴いていなかったが、この4曲入りシングルはモノクロのジャケットと2曲目の”ネヴァダ・モーテル”が強引な言い方をするとジム・ジャームッシュのストレンジャー・ザン・パラダイスに似た匂いが感じられ、かなり気に入ってます。いや、まじにこの曲はお薦めです。
花田が歌う”ロジー”のライブバージョンもいい感じ。
花田のソロでは1995年にリリースされた日本の曲をカバーしたミニアルバム「RENT-A-SONG」も一聴の価値あり。”ケンとメリー”や”落陽”を選曲するセンスに脱帽。
それにしてもこの人の寡黙にギターを弾く姿はあまりにもクール。
何年か前のライジングロックフェスティバルで下山淳、池畑潤二らを従えたロックンロール・ジプシーズでの演奏を最前列で観たときは痺れました。
ON TIME/KENZI
ケントリ後半のダウンな感じからは一転、元気印のケンジがここにいるが、1曲目の”HAPPY NEW AGE”を聴いたときは、ソロじゃなくケントリでもよかったのでは??と思ったのは事実。
アコースティックな”FRIEND”やスタークラブのヒカゲが提供した”MAD CAT”が収められているあたりはソロならではありますが。
このアルバムに収められた何曲かのPVとケンジのインタビューを収めた特番(録画したものを繰り返し何度も観るほど気に入ってました)がテレビ放映されたり、夜のヒットスタジオに出演したりと、バンドの時よりプロモーションに力が入っていた印象が強い。その影響だったのか、アルバムリリース後の札幌でのライブは女子だらけで腰がひけましたが・・・。
親孝行/KEITH
「親孝行」とあまりにも「らしい」タイトルに、収められた曲はすべて日本の曲のカバー。
”仁義なき戦い”、”唐獅子牡丹”、”黒い花びら”など、こちらも「らしい」曲が並ぶが、ダークなアレンジでシオンが歌う”東京”や、ロックなアレンジに甘い声のebiが歌う”ブルーシャトー”は意外性という点で楽しめる。
かなりの方々にカバーされている“朝まで待てない”だが、Shyが歌うこのアルバムのバージョンでもやはり名曲だと改めて認識させてくれる。
藤沼伸一、渡邉貢、宇崎竜童、原田芳雄、柴山俊之、仲野茂、等々、豪華ゲスト陣はKEITHならでは。
ARBで、石橋凌の後で、ドラムを叩けなくなったことをどう思っているのか、多分一生語ることはないのだろう。 Lives in “JINGI”
十字路のGuiter/DUDE TONE(苣木寛之)
デビューもほぼ同時期で、同じ九州出身のめんたいロックの枠で語られていたモッズとルースターズではあるが、この2バンドは交わることなく活動していた印象、しかも同じギタリストということもあり、ソロプロジェクトの相棒として花田を選んだのにはかなり驚かされた。
11曲が36分の短い時間にコンパクトに収められたアルバムはどこをどう切っても正真正銘のロックアルバムで、ギタリストのアルバムでありながら、その裏で聴かれる井上富雄のベースが聴きどころ満載というのも、苣木教授がこのソロプロジェクトをバンドとして捉えていたものだ思わせる一因で、ここが大江慎也のソロアルバムと決定的に違うところなのかも。
花田がボーカルをとる曲もあったり、モリヤンが1曲ゲストで歌ったりという点でも大いに楽しめる1枚。
前回のブログと合わせ10枚を紹介する予定であったが、どうしてももう1枚紹介したいアルバムが。
TOUGHNESS/TAISHO
兄NAOKI(現SA)とのバンド「DOG FIGHT」の解散から約5年。タイショウが放ったソロアルバムが手元に届いたときは、ジャケットはカラーコピー、CDラベルのプリントもコピー機を使ったと思われるあまりの手作り感満載ぶりに正直「どうしちゃったんだ?」と思わされた。演奏も同様。
しかし、そこに収められた曲はどれもこれ以上ない熱量とタイショウの抑えきれない激情が伝わってきた。
きっとDOG FIGHTの解散は不本意で、ロックを続けたい、でも家族を養っていかなけれならないところでの葛藤は相当のものだったのではないだろうか。
1曲目TOUGHで歌われる「夢を見れる時間は仕事までと仕事終わりから」、4曲目Hungryの「運のよさや悪さを気にしていたら 絶対 夢などつかめない」なんかの歌詞からは、その葛藤と、それでも好きなロックを続けていくために前へ進もうとする彼の思いが十分すぎるほど伝わってくる。
このアルバムが契機となり待望のバンドTAISHO with TOUGHBANDでの活動に繋がり、立派なジャケット、ラベルの(笑)アルバム「ハピネス」をリリースすることになる。
その後、DOG FIGHTで一夜限りのライブを行ったり、ワンダラーズを復活させたりと見事に仕事と音楽活動を両立させていたタイショウ。
現在彼は難病の大脳皮質基底核変性症を患いながらも懸命に生活している。
その姿はアルバム「TOUGHNESS」を発表した頃から何も変わらない。いや、あの時以上の熱量と激情を僕に見せてくれている。
自分もしっかり前を見て、恥ずべき生き方とならないよう生きていかなければ。