今回紹介するのはモッズ、ロッカーズと並びめんたいロックを代表するバンドとして人気を博していたルースターズ。

バンドは、前身の人間クラブを解散させた大江慎也(V,G)、花田裕之(G)、井上富雄(B)、池畑潤二(D)の4人が1979年10月に北九州で結成し、翌80年11月にアルバム「ザ・ルースターズ」でデビューした。「ルースターズ・ア・ゴーゴー」はその彼らが1981年6月に発表した2ndアルバムだ。

以前のブログで、いつか紹介したい名盤としてルースターズの「インセイン」を挙げていたというのに、「ルースターズ・ア・ゴーゴー」を先に紹介するところが相変わらずのひねくれ者である。

アルバムA面は、遊び心一杯の「RADIO上海~WIPE OUT」から始まり、コニー・フランシスの「RIPSTICK ON YOUR COLLER/カラーに口紅」のカバー、3曲目の「ONE MORE KISS」までは50’sの匂いを感じさせる極上のロックンロールナンバーが続く。4曲目の「SITTING ON THE FENCE 」ではR&Bをベースにしたどちらかというとミドルテンポな曲なのだが、強力なドラミングと大江の熱いストレートなボーカルが相まってか随分アップテンポな印象を受ける。「フェンスに腰掛け/ミルク飲みながら/感じているところ/オイラのすてきな狂気を」と唄われるところなんかはミルクと狂喜というミスマッチな組み合わせが僕の頭の中で様々な妄想を掻き立てる。で、近所のグラウンドまで行ってフェンスに腰掛けてミルクを飲んでみようかと真剣に考えたことが何度もあったな。A面最後は極上のラブソング「GIRL FRIEND」。僕にとっては日本のロックバンドで歌われるラブソングの中でも3本の指に入る名曲だ。ただ、ルースターズの場合はラブソングというより恋の唄と表わした方がピタッとくるのだけど。昔、NHKで日曜夕方に放送されていた「レッツゴー・ヤング」というアイドルが多く出演する歌番組にルースターズがこの曲で出演したこともあった。井上の持つゴールドトップのセミアコベースがやけにかっこよかったことが印象に残っているのと、この時のアレンジがアルバムのものとは少しだけ違っててちょっとしたサプライズだったのだけど、この曲にシングルバージョンがあることを知ったのは随分後になってからだった。

B面1曲目「DISSATISFACTION」と2曲目「FADE AWAY」はアルバムの中でも特にバンキッシュなタイプで、次のアルバム「インセイン」に収められた「WE WANNA GET EVERYTHING」、「BABY SITTER」にもそのゴキゲンなアレンジが繋がっていると思われる。「FADE AWAY」で大江が「望みの女を手に入れたと思ってた/だけど今やっと気がついた/おまえはくだらねえ女さ/とっととここから消えちまいな/FADE AWAY」と唄うのを聴くたびに、なんてひどい男なんだと思う反面、あまりの潔さにスカッとした爽快感も感じてしまうのだから自分にもそんな面がないとも言えないな。

続く「BACILLU CAPSULE」、「FLY」、「I’M A MAN」までの3曲はサンハウス、ヤードバーズのカバーもあり1stアルバムからの流れを組むR&B色が濃いナンバーが続く。そしてラストはトルネイド―スのインストナンバー「TELSTAR」で締められる。

どちらかというとパンクロック、ビートロック色が特徴だっためんたいロックと呼ばれたバンド連中の中で、ルースターズは最もR&B色が濃く、1stアルバムの「ルースターズ」はその特徴が最もよく表れたアルバムだったが、この「ルースターズ・ア・ゴーゴー」はそのR&Bをベースにしながらも、50’sやパンクなどの影響も垣間見れるポップなアルバムに仕上がっている。歌詞カード裏面に載せられた対談の中で森脇美貴夫氏が「ファーストアルバムを黒の固まりとすると、こっちは3色くらいになっている」と語っているのは言い得て妙。
次の3rdアルバム「インセイン」はパンク、ニューウェーブ、4thアルバム「Dis」以降はニューウェーブ、サイケデリックな方向へと大江の精神的な変調とともにそのサウンドも大きく変化していくが、この「ルースターズ・ア・ゴーゴー」が大江在籍時のアルバムの中でも飛びぬけて明るくポップなアルバムであることは間違いない。(ジャケット一杯に映る大江の顔もなぜかポップに見えるんだよなぁ)

彼らがデビューした時、めんたいロックの中に括られていたもののR&B色が濃いように紹介されていたため少し敬遠していたのだが、この2ndアルバムが発表された後、雑誌ロクfで目にした彼らの小さな記事の「宝石の原石を思わせるキラメキ」というタイトルとそこに写った大江の顔に惹かれ、これは早いとこ聴いてみなければと思ったのだが、当時高校生だった僕はあれもこれもとレコードを買うことができるはずもなく、このアルバムもなかなか手に入れることができず悶々としていたのだが、ある日、函館二大繁華街の大門と五稜郭の中間に位置するかなり不便な所にできた地元初の(と思われる)レンタルレコード店を訪れたときにこのアルバムを見つけ、人生初のレンタル体験をしたということもあり、僕の中では思い入れの深い1枚である。また、アルバムタイトルにあるà-GOGOの響きが大好きでこのブログ名・ニックネームにも使用しているほどだ。

今年の夏、例の騒ぎが落ち着いていたとしたらマンションの庭にデッキチェアでも出して、真昼間のギラついた太陽の下でこのアルバムを聴きながら飛び切りに冷えたビールでも飲むことにしよう(ミルクじゃなくてね)。そんな気分にさせる、今も僕にとっては最新型のロックンロールであり続ける最高の1枚だ。


前回少し触れたTHE TRAVIS。ゆっくり時間を使えるGWに紹介しようか、もうちょっと先にしようか、まだ悩み中である…。