僕にとってストラマーズといえば「青」。それくらいストラマーズ(イワタと言っていいかもしれないが)は結成以来青臭いまま突っ走ってきたように思う。
ストラマーズを知ったのは宝島という雑誌の小さな写真付き記事。空前のバンドブームが到来する少し前だったように記憶している。
バンド名の「ストラマーズ」を目にしたとき「オイオイ、普通これほどド直球なバンド名を付けるか?」、「こんな名前を付けてしまうバンドは聞くもんじゃないな」と思ったのが正直なところだ。ただ、その後もどんどんメディアに取り上げられるし、東京でバンド活動をしていた友人からもその名前を聞く機会があり、最初の決意もどこえやらで1stアルバムの「HeRE’S The STRUMMERS」を購入することにした。
歌詞カードには数々のメンバーフォトが散りばめられており、独特なイワタの髪型・スタイルにあまりいい印象を持たなかったのだが、ポール・シムノンを意識しているだろうナカズ、唯一パンク然としていないキンの2人の写真には好印象を持ったのだ。
アルバムを聴いてみると「そして熱く!そして熱く! IT’S SO YOUNG」、「夢や希望や明日、そんな言葉を掲げりゃ、皮肉交じりに誰もが笑うぜ」などバンド名に負けず劣らずまっすぐな言葉を投げつけられることになるのだが、イワタの独特な声とまっすぐな言葉の一塊りは好きだ!とは全然思えないのにどうしても何かが心に引っかかり、繰り返し何度もアルバムに針を落とすことになった。いやよいやよも好きのうち、だったんだと思う。
その後彼らはメジャーのフィールドに進むことになるのだが、それとともに僕は彼らの活動とは距離を置くことになる。どうも僕には支持していたバンドが売れてしまうと離れてしまう天邪鬼のようなところがあるようだ。スタークラブやポゴ、ケントリなんかもバンドブームとともにどんどんメジャーになっていくにつれに彼らのアルバムから遠ざかっていったしね。
さて、その後メジャーから離れメンバーがなかなか落ち着かない時期を経てようやく同じ匂いを持ったメンバーが揃い、20世紀に産み落とされたインディーズ時代のナンバーを集めたベストアルバム「SPIRITS OF FUCKIN’ STREET」が発表され、何の気なしに買ったあたりから再びストラマーズのアルバムを好んで聞くようになる。
このアルバムのオープニングを飾るのは新メンバーとともに録音された「SPIRITS OF FUCKIN’ STREET」。新しい仲間を得たバンドは原点に戻ったかの如く「LET’S GO FOR YOURSELF! LET’S FIGHT ON YOURSELF! LET’S ROCK! OWN YOUR WAY! LET’S ROCK!」と相変わらずまっすぐな言葉を投げつけてくる。この曲はその後今に至るまで彼らのライブにはなくてはならないバンドの核ともいうべき曲に育っていくことになる。他に収められている「東京JESUS」、「AGILE & FICTION」、「EXILE」の、ある意味3部作ともいえる3枚のアルバムからのナンバーも、メンバーが固定されていない時期に作られたと思えぬほど骨太で熱い内容だ。この3部作が作成されていた時期はイワタもアキトもリーゼントではなく少し髪を長く伸ばしていて、サウンドはもちろんだがスタイルもさまざまなことにチャレンジしていたと思われる。また、この3部作はジャケットワークも他のアルバムとは異なるスタイルで完成度はなかなかなものだと僕は思うのだが。
このベストアルバム発表後ほどなくしてドラムに誠一郎を迎え、イワタ、アキト、大口、家根谷、誠一郎の5GUNSとなったバンドは充実した活動を続けていくことなる。
結成30年を前にこの5人編成となった2000年以降にリリースされたナンバーによるベストアルバム「FIVE GUNS & COWBOY」も発表されている。ラモーンズの「TOO TOUGH TO DIE」を意識したと思われる5人の黒い陰影の姿がキマッテいるジャケット、「悲しみの246」、「青の条件」、「傷だらけの恋のメロディー」、「ヴァイア・コンディオス」などやはり青臭くてまっすぐな、そして泣きのメロディー全開のナンバーがこれでもかというくらいに収められている。
いまだにストラマーズを好んで聞いてるのは、結局のところ僕自身が青臭い男なのかもしれないな。
また、このアルバムには先のベストアルバムの1曲目「SPIRITS OF FUCKIN’ STREET」の2010verがラスト曲として収められている。やはり彼らにとって重要な曲なんだということが改めて認識できるところだ。
実はストラマーズの多くのアルバムの中でこれが一番のお気に入り!というものがないのだが、それでもそれらに収められたナンバーの多くは素晴らしいものであり、そんなことからもこの2枚のベストアルバムは捨て曲一切なしで断然お勧めである。
5人編成となった以降の充実した活動を続けてきた状態で結成30周年を迎えるはずだったストラマーズだったが、まさかのイワタの闘病でリーダーでもありボーカルでもある彼を欠いた4人で30周年のツアーを敢行することとなった。ただ「30年目の衝突精神30th Anniversary Special One Night渋谷 O-WEST」公演には満を持してイワタが復活。歌う姿に少し辛そうな表情も見られたがここからまた新たに活動を展開していくはずだと誰も期待していたはずだ。だが、そんな期待も叶わず、熱き男は2017年5月9日51歳の若さでこの世を去ってしまった。バンド名にしてしまうまで敬愛していたジョー・ストラマーとほぼ違わぬ年齢であの世に行ってしまったイワタ、きっと今頃はジョー・ストラマーと熱き会話を続けているのだろう。
残された4人のメンバーがどうなるのか気をもんでいたが、4人はストラマーズとして活動を継続することを選択しニューアルバム「FLAT OUT!」を発表し走り続けている。ストラマーズの青さはイワタそのものによるものだと勝手に決めつけていたが、このニューアルバムからはイワタ以上に青くまっすぐな4人の熱きスピリットが伝わってくる。
今年の5月9日はこの4人で作られたアルバムを聴きながらジャックダニエルでも飲むのもいいかも、なんてことを今から思っている次第だ。
最期に。
ガキの頃から憧れだった新宿ロフトを初めて訪れたのは2018年1月25日に行われた「The STRUMMERS PRESENTS 衝突精神 IWATA FOREVER」のイベントライブだった。
また、ストラマーズのホームページのメニューにある「AKITOのRock’n RollRecord」。この彼のレコードレビューが大好きで、いつか自分も好きなアルバムなんかのことを書いてみたいなぁなんて思っていたのが、このブログを始めたひとつのきっかけでもあることを告白しておこう。
ストラマーズとはスタイルが全く違うが、ベインビールもこれ以上ないくらいの熱きパンクバンドだ!