鎌倉孝夫、佐藤優共著「21世紀に『資本論』をどう生かすか」を読了。

恐慌の原因について、資本過剰説で説明している。鎌倉氏が例に挙げるのは、景気が良くて生産を増やす為に労働者の雇用が増え、人手不足になり賃金が上がっていき、何処かの段階で収益の増加を賃金の増加が上回り利潤が得られなくなる場合。それが経済全体で起こり、どこの資本も利潤を得られなくなれば、その時点で資本を更に投資する先が無くなり、資本の循環が滞って恐慌になると説明する。

資本の再投資先がなくなると言う事は、例えば小売は在庫を減らし、工場は生産設備の新設や更新を止めると言うことであり、その在庫や生産設備を作る産業は一気に仕事が無くなるからだ。それらの産業が破綻すれば、その社員は路頭に迷い購買力を無くし、その産業を顧客としていた産業も傾き、融資していた銀行は不良債権を抱え、他の産業まで破綻が連鎖していくからだ。


この思想は、現状の経済情勢に対して大きな示唆を与えてくれる。


資本過剰を解消する方法の一つは、金融やコンサルに産業の主軸を移し、資金をマネーゲームに投入して資本の過剰を解消する事だ。1970年代のニクソンショック以降の米国で起きた事がそれであり、金融産業でない普通の製造業でも、工場や研究開発拠点は海外に移し、米国の本社は資金を集め、それを投入する先を決定するファンドの様な機能に特化し、実質的に金融産業化していく。

しかし金融産業でもまた資本過剰になり、過剰になった資本の投資先を作る為に金融工学でいかがわしい金融商品を開発していく。それが破綻したのがリーマンショックだ。

今度はそれを救済する為に米国の中央銀行が過剰にマネーを供給し資本過剰を更に悪化させ、一方で再発を防止する為に金融商品に規制をかけたので、行き場の無くなった資本は中国などの新興国へ向かう。それが2010年代の中国を中心としたBRICSの台頭を支え、今の米国覇権が崩壊する状況をもたらした。

一方でその資本の注入を受けた中国側では、製造業と社会インフラの整備に資金が投入され、爆発的な生産力の増加がもたらされた。それは世界全体の需要に対しても過剰であったため、中国に於いてもマネーゲームが資本の再投入先として活発になった。それが今の中国の西側を圧倒する強大な産業力と、不動産バブルとその崩壊による莫大な不良債権と言う両面を生み出すことになった。



西側の産業衰退と莫大な国家財政赤字、新興国の生産力過剰と不良債権は決して中国のせいなどではなく、米国の金兌換停止以降の尋常ならざる資本過剰が生み出したものと言うのがその本質だ。資本過剰が恐慌を作り世界史を動かす原因と言うのならば、この資本過剰は最終的に米国の崩壊とそれに伴う日本を含む西側の経済崩壊、即ちドル、ユーロ、ポンド、円の価値の大幅下落という形で解消されるだろう。これからの10年20年の世界史は、その過程で生み出されるドラマになる。