1897年9月、アメリカ合衆国の新聞社ニューヨーク・サンに一通の手紙が
届きました。
編集者さま: 私は8歳です。
私の何人かの友だちはサンタクロースはいないと言います。
パパは「サン新聞が言うことならそのとおりだ」と言います。
どうか私に本当のことを教えてください; サンタクロースはいるのでしょうか?
ヴァージニア・オハンロン
当時、彼女は学校で「サンタクロースはいるのかどうか」で友達と意見を
交わしていました。
彼女は結論が知りたくて、父親のすすめもあってニューヨーク・サン新聞に
手紙を出したのです。
当時のニューヨーク・サンの論説委員、フランシス・チャーチ氏は数日間
考え込んでいましたが、しばらくしてからこの社説を書き上げました。
バージニア、お答えします。
サンタクロースなんていないんだという、あなたのお友達たちは間違っています。 きっと、その子の心には今はやりの何でも疑ってかかる”疑りや根性”というものが染みこんでいるのでしょう。疑りやは身に見えるものしか信じません。疑りやは心の狭い人たちですが、自分の分からないことはみんな嘘だと決めているのです。けれども、人間の心というものは、大人の場合でも、子供の場合でも、元々たいそうちっぽけなものなんですよ。私たちの住んでいる、この限りなく広い宇宙では、人間の知恵は1匹の虫のように、そう、それこそ蟻のようにちいさいのです。その広く、深い世界を推しはかるには、世の中のこと全てを理解し、全てを知ることの出来るような、大きな深い知恵が必要なのです。
そうです、バージニア。サンタクロースがいるというのは、決して嘘ではありません。 この世の中に、愛や人への思いやりや、まごころがあるのと同じように、サンタクロースもたしかにいるのです。あなたにも分かっているでしょう。世界に満ちあふれている愛やまごころこそ、あなたの毎日の生活を、美しく、楽しくしているものなのだということを。もしもサンタクロースがいなかったら、この世の中はどんなに暗く、寂しいことでしょう! あなたのようなかわいらしい子供のいない世界が考えられないのと同じように、サンタクロースのいない世界なんて、想像も出来ません。サンタクロースがいなければ、人生の苦しみをやわらげてくれる、子供らしい信頼も、詩も、ロマンスもなくなってしまうでしょうし、私たち人間の味わう歓びは、ただ目に見えるもの、手で触るもの、感じるものだけになってしまうでしょう。また、子供時代に世界に満ちあふれている光も消えてしまうことでしょう。
サンタクロースが信じられないというのは、妖精が信じられないのと同じです。ためしにクリスマスイブにパパに頼んで探偵を雇ってもらって、ニューヨーク中の煙突を見張ってもらったらどうでしょうか?ひょっとすると、サンタクロースを捕まえることが出来るかもしれませんよ。しかし、たとえ、煙突から降りてくるサンタクロースの姿が見えないとしても、それが何の証拠になるのですか? サンタクロースを見た人はいません。けれども、それはサンタクロースがいないという証明にはならないのです。この世界で一番確かなこと、それは、子供の目にも大人の目にも見えないものなのですから。バージニア、あなたは妖精が芝生で踊っているのを見たことがありますか? もちろんないでしょう。だからといって、妖精なんてありもしない、でたらめだなんてことにはなりません。この世の中にある見えないもの、見ることが出来ないものが、何から何まで、人が頭の中で作り出し、想像したものだなどということは決してないのです。
赤ちゃんのガラガラを分解して、どうして音が出るのか、中の仕組みを調べてみることは出来ます。けれども、目に見えない世界を覆い隠している幕はどんなに力の強い人でも、いいえ世界中の力持ちがよってたかっても、引き裂くことは出来ません。ただ、信頼と想像力と詩と愛とロマンスだけが、そのカーテンをいっとき引きのけて、幕の向こうのたとえようもなく美しく、輝かしいものを見せてくれるのです。そのように美しく、輝かしいもの、それは人間の作ったでたらめでしょうか? いいえ、バージニア、それほど確かな、それほど変わらないものはこの世には他にないのですよ。
サンタクロースがいないですって!
とんでもない! うれしいことに、サンタクロースはちゃんといます。
それどころか、何時までも死なないでしょう。
1千年後までも、百万年後までも、サンタクロースは子供たちの心を、
今と変わらず歓ばせてくれることでしょう。
渾身の思いで書き上げた文章はその後、
世界で最も有名な社説の一つとなりました。
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