胸骨圧迫で心肺停止女性救う…岡山

看護師・三宅さん、作業療法士・川上さん 県善行賞

 2月に岡山市南区青江の国道30号で、オートバイでツーリング中の女性(30)(大阪市)が転倒し、一時心肺停止する事故があり、通りがかった岡山市内の看護師と作業療法士の懸命の心臓マッサージ(胸骨圧迫)によって一命を取り留めた。

 救命講習に参加経験のある2人の的確な処置で、女性に後遺症もなく、県は2人に県善行賞(人命救助)を贈った。

 救助したのは、看護師の三宅理恵さん(29)(岡山市南区)と、作業療法士の川上孝昭さん(同市中区)。

 岡山南署などによると、2月1日午後3時45分頃に発生。三宅さんは乗用車を運転中、前方で、狭い道から国道に左折するオートバイが倒れるのが見えた。運転していた女性はけいれんを起こしており、三宅さんは急いで車を止め、女性に駆け寄った。

 「大丈夫ですか」と声を掛けたが、反応はなく、脈も呼吸もない。心肺停止状態とみられ、すぐに胸骨圧迫を始めた。

 近くのガソリンスタンドの店員らが119番をしたり、自動体外式除細動器(AED)を持ってきたりと協力。事故による渋滞の中にいた川上さんも車を降り、一人胸骨圧迫を続ける三宅さんと交代した。川上さんは胸骨を強くリズミカルに押し続け、三宅さんも女性の手を取り、「分かりますか」「聞こえますか」と声を掛け続けた。

 数分後、脈が戻って呼吸が確認できた。発生から8分後に救急隊が到着。その頃には意識も取り戻した。入院したものの、軽症ですぐに通常の生活に戻ることが出来たという。

 2人とも過去に数回ずつ、勤務先などが実施する救命講習を受け、胸骨圧迫の手順などを学んでいた。三宅さんは「倒れている人を救助するのは、初めての体験だった。女性が無事で何より」と話している。

 市民の応急処置 救命増加

 AEDは心臓がけいれんして血液を送れなくなる「心室細動」の状態を正常に戻すための機械で、心肺停止には対応できない。このため、突然の心肺停止には胸骨圧迫が極めて有効だ。2月の東京マラソンで突然倒れた男性ランナーに別のランナーが圧迫を施すなど、市民が命を救う事例が増えており、専門家は圧迫の方法などを学ぶ救命講習への参加を広く呼びかける。

 総務省消防庁の2011年のまとめでは、心臓に原因があり、一般市民が応急処置を行ったケースでの1か月生存率は14・2%で、応急処置がなかった場合の1・65倍に上る。社会復帰率では、「処置あり」が「処置なし」の2倍以上になる。

 交通事故による外傷で心肺停止になった場合は、胸骨圧迫をしても救命に至らないケースも多い。しかし、心肺蘇生法の啓発を行っているNPO法人「NPO救命おかやま」(岡山市)の津島義正・副理事長は「交通事故の場合でも、もともと心臓に原因を抱えていて心肺停止になるケースもある。救急隊到着までに、市民ができることで最も有効なのは胸骨圧迫。今回の岡山市のケースで、あきらめずに懸命に圧迫をしたことは素晴らしい」と評価する。

 一般向けの救命講習は各消防局・本部が実施しており、津島副理事長は「市民救助が増えることで、救われる命は必ずある。多くの人に講習を受けてほしい」と参加を勧めている。(辻田秀樹)


2013年3月5日 読売新聞 より引用

以上です。素晴らしいと思ってブログに書いてしまいました。