2011.8のMedical Rehabilitationはパーキンソン病の特集です。
興味のある人まず、見て頂ければと思います。

そのなかで、LSVT BIGについて書かれている文献を紹介いたします。

LSVT BIGはここに集約されるともいえるのが、[LSVT BIGの基本的な治療コンセプトの要点]である以下の4点である。
1)Amplitude First:動きの大きさのみに焦点を当てる(動きが十分に大きいことのみに注目する)。
2)Sensory Retraining:感覚の再教育をする。
3)Intensive Exercise Program:意識的な努力と多数の頻度・反復を要する集中的な訓練プログラム。
4)Empowering:患者に意識的な高い努力(high effort)を強いて、能動性を喚起し、動機づけする。

この4点を守りトレーニングし、トレーニングを日常に汎化させるのが狙いです。

具体的効果などは明日記載致します。
詳細は下記または本文献をご覧ください。

LSVT BIGによるパーキンソン病患者のリハビリテーション
坂元千佳子ら   MB Med Reha No.135 2011 P61-65


LSVT BIGとは
パーキンソン病患者の運動障害に対するリハには、認知リハ、感覚の手掛かり(cue)を与える方法、動きの反復練習、筋力強化や関節可動域、持久力の改善を目指した骨格筋系の運動療法、ノルディック・ウォーキング等、様々な運動療法がこれまで推奨されてきた。本稿では、最近注目され始めているパーキンソン病患者のための運動療法プログラム、LSVT(Lee Silverman Voice Treatment) BIGについて紹介する。
LSVTの始まりは1998年にRamigらによって開発されたパーキンソン病の運動低下性ディサースリア(発話の障害)に対する音性治療手技である。これはLSVT LOUDと呼ばれ、すでに世界40カ国以上に広まっている。LSVT LOUDが成功した理由には、治療効果についてもエビデンスレベルが高く、効果が2年後も持続することが挙げられる。PETを用いた研究では、LSVT LOUD後、大脳皮質の運動野、運動前野における過剰な活動性が増大することが示されている。
 LSVT BIGは、LSVT LOUDの基本概念を受け継ぎ、パーキンソン病患者の運動療法として2005年に開発された。LSVT GIGが他の運動療法と異なる点は、単なる訓練のテクニックではなく、[規定の運動を規定のプロトコルに従って実施する訓練プログラム]であるという点にある。実際の患者の動きの大きさを基準に訓練を実施する従来のリハとは異なり、LSVT BIGではアクティブストレッチ(Active Stretching)等の手技を取り入れた、身体全体を大きく使った動き(Large Whole-body Movements)を使って訓練が実施される。

パーキンソン病患者の運動障害とLSVT BIG
1.パーキンソン病患者の運動障害(motor disorder)と感覚障害(sensory disorder)
 パーキンソン病患者では、運動障害、認知・遂行機能障害、注意障害、および感情・自発性の障害がみられる。これらの障害により、自発的な動きの活性化が損なわれ、運動のための準備を不適切にし、環境に応じて素早く追う差を変更したり、必要な注意を払ったりすることが困難になる。
パーキンソン病の運動障害(motor disorder)は、大脳基底核の障害に伴う無動(akinesia)と動作緩徐(bradykinesia)に代表される。これらによる二次鉄器な廃用性の筋力低下、持久力低下などが身体機能の低下を増悪させるが、脳血管障害者における麻痺などの症状とは異なり、動きの大きさを意識すると大きな運動や動作をお行うことができることが特徴である。
パーキンソン病の運動障害に関連した感覚障害(sensory disorder)としては、固有感覚障害(proprioceptive deficits)と運動知覚障害(a defect of kinesthesia)があり、これらが原因と考えられる。高次レベルでの運動感覚情報の不一致がある。具体的には腕の関節の一や動きを正しく知覚できず、実際の動きより小さく知覚する現象や、重さに対する閾値が高い現象などが挙げられる。されには、実際の身体の動きを過大に評価してしまう現象(over-estimation of body motion)もあり、過剰な視覚依存との関連性が示唆されている。

2.LSVT BIGの基本的概念
LSVT BIGの基本的な治療コンセプトの要点は以下の4点である。
1)Amplitude First:動きの大きさ(Amplitude)のみに焦点を当てる(動きが十分に大きいこと一点にのみに注目する)。
2)Sensory Retraining:感覚の再教育をする。
3)Intensive Exercise Program:意識的な努力と多数の頻度・反復を要する集中的な訓練プログラムである。
4)Empowering:患者に意識的な高い努力(high effort)を強いて、能動性を喚起し、動機づけをする。
 具体的には、LSVT BIGでは大きく動くことを考え(Think BIG)、動作の大きさ(Amplitude)のみに焦点をあて、集中的(Intensive)に訓練することで、無動、動作緩慢に代表される運動障害を改善することを目標としている。また、大きな動きによって感覚の自己校正(Sensory Calibration)を行わせ、運動における適切な大きさを認識し修正する能力を改善することも、LSVT BIGの目標である。日常の動作を患者が大きすぎると感じる程度の大きさに修正することで、患者自身が正常と感じている[小さな動作]を、患者自身が大きいと感じる動作[正常な動作]に改善するのである。そしてその動作を繰り返し訓練することによって、動作の大きさに対する感覚的不一致を取り除いていく(Recaribrate)。LSVT BIGの最終目標は、日常生活動作にこの訓練効果を反映させ、効果を維持できるよう、日常生活における新しい動作を患者に教え込むことにある。これを[汎化(Carryover)]と呼び、汎化が達成されると、訓練終了時には自ら正常な(つまり大きな)動作を行えるようになる。

引用:MB Med Reha No.135 2011 P61-65