本日はFTLD・FTDの診断基準について、この文献に載っていた2つの基準です。
これは概略であり、参考程度にみていただければと思います。

やはり注目すべきは行動異常・感情障害だと思います。
これを素早く察知するのが現在の定石です。

詳しくは下記または、文献をご覧ください。

明日もこの文献を参考に ・初期臨床像 ・初期段階でのAlzheimer 病(AD)や他疾患との鑑別 ・認知症をともなうALS(D-ALS)での検討 を記載致したいと思います。


FTLD・FTD の初期臨床像
岡本幸市 (臨床神経,48:999―1001, 2008

はじめに
Frontotemporal lobar degeneration(前頭側頭葉変性症;FTLD)とは,臨床的に特徴的な行動異常や言語機能異常がみられ,前頭葉と側頭葉を中心とした萎縮や機能低下を呈する「非Alzheimer 型変性疾患の一群」を指す臨床的概念であり,神経病理学的には単一疾患ではなく種々の疾患がふくまれている.認知症の中ではAlzheimer 病,Lewy 小体型認知症に次いで多い疾患である.Ubiquitin 陽性・tau 陰性封入体を有する群はFTLD-U とも呼ばれる.この封入体を構成する蛋白は長らく不明であったが,2006 年にTDP-43 が主要な構成蛋白であることが判明した.今回はFTLD の初期臨床像について文献や自験例などから述べてみたい.

FTLD・FTD の臨床的診断基準
1994 年,The Lund and Manchester グループは,前頭側頭型認知症(FTD)の臨床的・病理学的診断基準を提案した.病理学的には,前頭葉変性型,Pick 型,運動ニューロン疾患(MND)型の3 型に分類した.1996 年のSnowden らの分類では,FTLD が全体を指す用語としてもちいられ,その下位分類としてFTD,進行性非流暢性失語(PA),意味性認知症(SD)の3 つがあり,FTD はさらに臨床症状から脱抑制型,無欲型,常同型の3 亜型に分類されている.1994 年にFTD の臨床的診断基準として提案されたが,その後の1998年のNearyら,2001年のMcKhannらの臨床診断基準でもこの診断基準が基本となっており,種々の行動障害や感情障害が早期からみられることが強調されている.


The Lund and Manheshter groupsによるFTDの臨床診断基準(一部改変)
1)行動障害
・潜行性の発症と緩徐な進行
・早期からの自己に対する関心の消失(自己の衛生や身なりの無視)
・早期からの社会に対する関心の消失(社会性の消失,万引きなどの軽犯罪)
・早期からの脱抑制症候(抑制の効かない性衝動,暴力行為,場にそぐわないふざけなど)
・精神の硬直化と柔軟性のなさ
・口唇傾向(食嗜好の変化,過食,喫煙や飲酒の過多など)
・常同行動と保続的行動(周遊行動,型にはまった行動,収集・化粧・身支度への儀式的没頭)
・使用行動(周囲にある道具への抑制のきかない探求)
・注意散漫,衝動性,維持困難
・早期からの病識の消失
2)感情障害
・抑うつ,不安,過度の感傷,希死念慮・執着観念,妄想,心気症,奇妙な自己身体への執着:
これらは早期にみられ,消えやすい
・感情面での無頓着さ(無関心,共感欠如など),無表情(不活発,自発性低下)
3)言語障害
・進行性の発語量の減少,常同言語,反響言語と保続,後期では無言症
除外診断的特徴
・突然の発症,痙攣,早期からの高度の健忘,空間失認や失行など


2 NearyらによるFTDの臨床診断基準(一部改変)
FTDの臨床的診断基準:
性格変化と社会的行動の障害が経過を通じて優位な症状.知覚・空間的能力・行為・記憶
といった道具的認知機能は正常か,比較的良好に保たれる.
コアとなる診断的事項:
1)潜行性の発症と緩徐な進行(少なくとも6ヶ月)
2)早期からの社会的対人行動の障害
3)早期からの自己行動の統制障害
4)早期からの情意鈍麻(粗野で相手の感情を考えない)
5)早期からの病識の欠如
支持的事項
行動面の異常:衛生や身なり障害,精神面での硬直化や柔軟性の低下,注意力の散漫・
維持困難,口唇傾向・食嗜好の変化,保続的行動と常同行動,使用行動
言語障害:進行性の発語量の減少,常同言語,反響言語,保続,無言症
理学的所見:原始反射,失禁,パーキンソニズム,低血圧・血圧の変動
検査:前頭葉機能検査で障害,脳波異常なし.脳画像で前頭・側頭葉前部で異常

引用:臨床神経,48:999―1001, 2008