ミナムは乗客を10人、とりあえず連れてきてくれ、と犯人たちに話した。
「何を企んでいるんだ?余計なことをすれば…」一人がミナムに詰め寄ろうとした。
「ばかなことをするつもりはない。俺も他の乗客の命も惜しいからな。ただ実験したいだけさ」
「実験?」
「とにかく老若男女、ランダムに10人連れてきてくれ。国籍も問わない」
ミナムの意図がわからないまま、犯人たちは不審に思いながらも10人を連れてやってきた。
ミナムが他の乗客と協力して、犯人たちに逆らうことのないよう、一人ずつ順番に連れてきた。
ミナムはサングラスと帽子の変装をはずして待っていた。
「…あ?どこかで…見たような」と最初の老人はしげしげとミナムを見た。
ミナムは微笑んで、「約束」のサビを少し歌って見せた。
「ああ、見たことある。名前は…知らないが」
「…どうもありがとう。急に連れ出してすみません。席にお戻りになってください。
協力に感謝します」
その後、子供とその母親、若い男女、ビジネスマンといろんな人が現れ、すぐミナムと気づく人が
続いて驚いたり喜んだり、歌って見せて初めて気づく人がいたり、まったく知らないという人は一人の
老婆だけだった。
「お忍びなので、顔や名前は表立って出せないが、人質としたら、それなりの価値が俺にはあるはずだ。
少なくとも、事務所はいま大慌てしてる。俺がハイジャック便に乗っているってことでね」
「…お前が芸能人なのはわかった。確かに新聞で見たことがあるような気はするからな。だが、それが
何だというんだ?」
「俺は逃げないから、まず老人と女性、子供、障害や病気を持つ人とその付き添いにあたる人たちを早く確実に解放しろ。その方がお前たちのためだ」
「…どういうことだ。なぜ俺たちがお前の指示を受けなきゃならないんだ」
「乗客は恐怖と不安で疲れてきている。いずれ病人が出たり、具合が悪くなる人が増えるだろう。そうなればどこかで彼らを降ろさなければならない」
「それで?」
「着陸して乗客を降ろすことになれば、警察や各国政府は協力して、何か策を練るはずだ。地上にこの航空機が降り立っている間に、何かしようと動くだろう。だが、降ろすタイミングが遅くなるほど、病人が増え、何度も着陸する必要性が出てくる。そうなればお前たちの作戦が失敗するリスクが高まる」
「なるほど」と犯人の中心人物が面白そうにミナムを見返した。
「もし、病人を降ろさなければ、そんな配慮すらない危険なテロ集団として、各国は一層強硬な手段ででもハイジャックを阻止しようとしてくるはずだ」
ミナムは犯人を端から端まで見回した。
「先に降ろせば、人道的な配慮はされているとお前たちに対する見方も多少なりとは違うだろう。そのタイミングを誤って時間が経過するほど、病人は増え、乗客の不満・不安も高まる。それに、多くの乗客を乗せていれば、お前たちの目も届かず、乗客の中から反乱を起こされる危険も高まる」
犯人グループはそれぞれ顔を見合わせ、何かひそひそと話し合っていた。
「俺は悪事の手助けをするつもりはない。お前たちに長時間振り回されたくないから、アドバイスしに来たんだ。疑われても仕方ないが、お前たちがさっさと目的地について、俺を解放してくれないと困るんだよ。何せお忍びだし、帰れば仕事が待ってる」
「フン。言いたい放題だな。自分の思い通りになると思っているのか」
「トータルで考えたら、俺の言うとおりにせざるを得ないだろうな。病人が増え、それでもお前たちが解放しないとなれば、乗客も反撃のチャンスを狙うやつが増えるぞ」
ミナムは犯人たちの反応を見ていた。時間の問題で自分の言うとおりになるだろう。
そして、とりあえずヘイとマネージャーを降ろせれば、それだけでも気がかりが一つは減る。
問題は…ユ・ヘイの機嫌を損ねるってことだが。それはまぁ、俺が無事に大地に降り立ってから考えるさ。
その頃、ミニョはジェルミの持ってきたアイスですっかり目が覚めていた。
「こんなのが出たんだ」
「期間限定だし、なかなか買えないから、変装して並んだんだよ…ちょっとばれちゃったけど」
「…ありがとう。気を使わせちゃってごめんね」
「気にすんなよ。ミニョと食べたかっただけだからさ」
ジェルミのいつもの笑顔にミニョはホッとして、笑顔になった。
「たまには新しい味にトライするのもいいだろ?」
「うん…おいしい」
ジョンフンがシヌのベッドで眠り込んでいる頃、ジェルミはミニョと過ごし、シヌはお茶をゆっくり飲んでいた。
テギョンは社長の連絡を待って、自室でイライラしている。
「なんでこんなにも情報が少ないんだ。社長は、ミナムは何をしてるんだ?」
その数時間後、社長からテギョンに一本の電話が入った。
「ヘイさんの方は、他の乗客たちと一緒に○×空港で解放されたらしい。いま彼女のマネージャーがそっちに向かった。ミナムはまだ乗ったままだ」
「…なんだって?」
「どうもミナムは自分が人質になって、他の乗客を降ろしたようだ」
「…あのバカ!妹がどれだけ心配してると思ってるんだ…一体どう説明したらいいんだ」
電話が終わった後、テギョンは一人で皆にどう説明すべきか頭を痛めていた。
↑
気に入った方はクリックをお願いします。ありがとうございます☆
...
