俺はもう一度目を瞑りたい感覚に襲われるが、目を瞑ったら、2度と起きれないような感じがしたので、身を起こすことにした。
「ふう・・・」
一息つき、一度大きく体を伸ばしてみる。
「ふぁぁぁあ。」
大きな欠伸と共に、目から涙がこぼれる。
昨日、宿でグラトニオスとの話が終わった後、酒場までいき、何かしらの情報を得ようとしたのだが、役に立ちそうな情報は何も無かった。
0:00過ぎるころになると、人も減っていき、盗賊も現れる気配がなかったので、宿にもどり寝ることにしたのだ。
「結局、昨日はなにも収穫がなかったんだよなぁ。」
俺は、ため息混じりに呟いた。
身支度を終えた後、1階にある食堂へ向かった。
その食堂は、綺麗でもなければ汚くも無い。
石畳に、レンガ造りの暖炉。天井には、要所要所に照明がある程度。
まぁ、よく言えば古風な造り、悪く言えば・・・古汚い造りである。
食堂を見渡すと、すでにグラトニオスが席について、パンを千切りながら食べていた。
「よう、もう起きてたのか。ずいぶん早いんだな。」
俺はそういって、同じテーブルに腰を下ろす。
「あぁ、あまりのんびりしているわけにも行かんからな。昼の間は、各自で情報を集めよう。夜よりも出歩く人も多いから、そっちの方が捗るだろう。」
グラトニオスは、パンを飲み込んでから話した。
「あぁ、そうだな。この街も結構広いからな。ゆっくりしてると、すぐに日が暮れちまう。」
そういって、ウェイトレスに適当に朝飯を注文する。
「それでは、私は街の北口方面からあたろう。君は南口方面から当たってもらえるか?」
「あぁ、構わない。それじゃあ、霧の出始める18:00頃にまたここに落ち合うことにしよう。」
俺は、グラトニオスの質問に即答し、落ち合う時間も指定した。
どうやら、グラトニオスは食べ終わったらしく、口元を拭っている。
「それでは先に失礼するが、ここの代金は私に持たせてくれ。」
そう言うと、こっちの返答も聞かずに出口へと歩いていた。
「サンキュ・・・」
俺は、聞こえるか分からないが一応礼だけは言っておいた。
それからすぐに、注文した朝飯が俺の目の前に置かれた。
朝飯を食った後、俺は言われたとおりに南口付近から探索を始めた。
と、言っても南口付近は、特になにもなさそうな、平凡な街並みであった。
こっちの方は、どうやら住宅街のようだ。
住宅街には、情報源は少ない。
だが、少ないだけであって、たまにものすごい情報を持った、とあるお方々がいらっしゃる場合がある。
なぜ、敬語になっているのかは、察してほしい。
俺は、その方々を探すべく、手当たりしだい居そうな場所を回ってみる。
多くの人が通るような十字路、子供が騒ぎ遊ぶような広場の片隅等探してみるが、お目当ての方はみあたらない。
「おかしいな。この時間ならこの辺に居ると思うんだけどなぁ。」
そう独り言を呟き、街の南口へ向かうと、その方々は南口のすぐ近くにある塀のそばで円陣を組んでいた。
「・・・やぁねぇ、奥さん綺麗だからそんな事いえるのよぉ。」
「・・・そんな事無いわよ。奥さんだって十分に綺麗よ。」
・・・5人で井戸端会議中だ。
そう、ある方々とは、ここいらに住んでいる奥様方だ。
話すのは、かなりの精神力が必要とされるが、もっている情報の数は計り知れない。
はぁ、気が重いが仕方が無い。
この仕事を早く終わらせるためだ・・・
そう自分に言い聞かせて、奥様方の会議場へと足を進める。
「あの・・・」
俺は、勇気を振り絞り、奥様方の井戸端会議の中に踏み入れた・・・が。
「全く、うちのお隣さんなんて、朝から晩まで、ずっと酒びたりなのよ。」
「あら、大変ねぇ。でも、うちのお隣さんも・・・」
・・・シカトか?いや、気づいてないだけだろうが、この距離でも気づけないのかよ。
井戸端会議上まで、およそ3mくらいの地点で話しかけてるのに、一向に気づいてもらえそうもない。
「あの!!」
さっきよりも、かなり大き目の声で話しかけてみた。
すると、一行のは一斉にこっちを向き、警戒する。
「あらやだ、あなた見かけない顔ね?どなた?何か用?」
・・・そりゃ、見かけないだろうし、用も無けりゃ話したくもない。
っと、心の中で思いつつ、口には出さないように気をつける。
「実は私、各国を旅しているものなんですが、最近ここら辺で盗賊団が居るみたいじゃないですか?被害にあった人とかいるんですか?」
至って丁寧な口調で話しかけた。
自分がロードアサシンであることを、明かさないのは、素性が盗賊団の耳に入ることを恐れたからだ。
すると、あっさり信用し、笑いながら話してくる。
「あらやだ、盗賊団ってメンフィス盗賊団のことかしら?」
「違うわよ奥さん、メルフィンよ。」
「あらやだ、間違えちゃった。歳はとりたくないわねぇ。うふふふふふふ。」
・・・歳はかんけーねーだろ。
「で、そのメルフィン盗賊団について、何か知ってるんですか?」
出来るだけ、やさしい口調を心がけ話している。
偉いぞ、俺。
「知ってるも何も、この街で知らない人なんて居ないわよ。」
「そうそう、ほんとに困ってるんだから。」
「うちの旦那、前に盗賊に襲われて、持っていたお金を取っていかれたのよ。」
「あらやだ、怖いわねぇ~。」
ふむ、盗賊被害は結構あるのか。
「でも、最近見かけないわね・・・盗賊団。」
「そうねぇ。見かけないに越した事はないんだけど、急にこなくなったから逆に不安よね・・・」
奥様方は、各々に不安そうな表情をしながら、話している。
「急に?」
「えぇ、そうなのよ。毎日のようにやってきては、食料やお金を強奪してたんだけど、ここ1週間近くは、なんの話も聞かないのよ。」
「一番最後に現れたのは、何日前だかわかりませんか?」
「そうねぇ。確か、4日くらい前だったかしら?」
4日前・・・フェンネムの消息がたったのと同じ日か。
やはりフェンネムと盗賊団、なにかしらの関係がありそうだな・・・