ケタミンは、解離性麻酔薬として広く使用されており、その精神作用は興味深いものがあります。鼻から吸うことで効果が早く現れる理由や、ひらめきを感じることがあるのは以下のような要因が関係しています。

吸収の速さ
鼻粘膜からの薬物吸収は速やかであり、血中濃度が迅速に上昇します。これにより、ケタミンの効果が早く現れます。口から摂取する場合に比べて、鼻から吸う場合はより早く中枢神経系に到達します。

解離作用
ケタミンはNMDA受容体アンタゴニストとして働き、脳内のグルタミン酸の活動を阻害します。この作用により、通常の知覚や意識の流れから解離した感覚が生じます。これが創造的思考やひらめきを促進することがあります。

脳のネットワーク変化

ケタミンは、脳内のさまざまなネットワークの活動を変化させることが知られています。特にデフォルトモードネットワーク(DMN)の活動が抑制されることで、異なる思考パターンや新しいアイデアの連想が生じやすくなるとされています。神経可塑性の増加: ケタミンの一部の作用は、BDNF(脳由来神経栄養因子)の増加やシナプスの形成を促進することによるものです。これにより、脳の柔軟性や新しい情報の統合が促進され、創造的なひらめきが生じやすくなる可能性があります。

 

これらの要因が組み合わさることで、ケタミンを鼻から吸うと迅速かつ強力な精神作用が現れ、ひらめきや創造的な思考が生まれやすくなると考えられます。

 

脳は活性化される?

 

ケタミンの使用によって脳が「活性化される」と言えるかどうかは、その意味合いによります。ケタミンは脳内の活動パターンに大きな変化をもたらし、それが「活性化」と感じられることもありますが、必ずしも健康的な意味での脳の活性化とは言えません。以下に詳しく説明します。

1. 脳の活動パターンの変化
ケタミンは、主にNMDA受容体をブロックすることで、脳内の興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の活動を変化させます。これにより、以下のような効果が生じます。

デフォルトモードネットワーク(DMN)の抑制
通常の意識状態では、DMNは自己参照的な思考や内省に関与しています。ケタミンはこのネットワークの活動を抑制し、新しい思考パターンや連想を生じやすくします。

脳内ネットワークの再編成
ケタミンは脳内の異なるネットワークの連携を変化させます。これにより、通常の思考パターンから逸脱した新しい連想やアイデアが浮かびやすくなります。

2. 神経可塑性の増加
ケタミンの使用は、一部の研究によれば、BDNF(脳由来神経栄養因子)の増加を引き起こし、神経可塑性を高めるとされています。これにより、脳が新しい情報を学び取ったり、適応したりする能力が一時的に向上する可能性があります。

3. 脳波の変化
ケタミンは脳波にも影響を与えます。通常、低周波の脳波(デルタ波やシータ波)が増加し、高周波の脳波(ベータ波やガンマ波)が減少します。これにより、通常の覚醒状態とは異なる意識状態が生じ、これが「活性化」の一環として感じられることもあります。

4. 創造性の促進
ケタミンは、一部の人々にとって、創造的な思考やひらめきを促進する効果があります。これは、通常の思考の枠を超えた新しい連想やアイデアが浮かびやすくなるためです。

したがって、ケタミンが一時的に脳の活動を変化させることで創造性やひらめきを感じることがあったとしても、それが脳の「活性化」と必ずしも健康的な意味で捉えられるわけではないことを理解することが重要です。