オレたちは朝の駅にいる


バンドを始めて10

鳴くことも飛ぶこともなかったオレたちの新たなステージが駅敷地内でのギグだった


お昼と15時と19

人気の多い時間帯を狙ってのスリーステージ


だからオレたちは朝から駅にいるのだ


メンバーは

ココリコの田中と

ココリコの田中と

ココリコの田中


ココリコの田中は脳内再生されやすいのだろうか?


あと小中の同級生だった「キム」


ちなみにキムの本名は木村ではなく山崎だ


このキムもまたしゃくれている


とにかく昼までにはまだ時間があるので

駅構内にある赤提灯で一杯やろうとココリコの田中が言い出した


やはりバンドマン

ろくでもない


キムはワンカップ酒に出汁を入れて七味をふりかけた特殊な飲み物を飲んでいた


美味しそうだなと思ったがもうすぐステージなので終わったらこの七味出汁酒を飲もうと決めた


ココリコの田中がドラムセットを見てくると言うのでステージの下見がてらオレも付いていく


駅敷地内の人が往来する通路の壁際に

ポツンとドラムだけが置いてあった


オレたちの新たなステージは悲しいくらい簡素なものだった


ココリコの田中はドラムではなく遠くを見ていた


同級生のキムがオレに近づいてきて

「もういいよ もう目を覚ませ」と言った


オレたちは一度も演奏することなく夢の駅を後にした


朝日の眩しさに顔を歪め

絨毯の上で目を覚ます


背中が痛い