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ゆっくりのんびりマイペース
飽きずに短編とか

ころころ
ころころころころ

身体の中から音がする
明日、二週間ぶりに会えると思うと気持ちが込み上がってくるのがわかる
耳を塞ぐと音がする
ハンカチーフを綺麗にたたんでから一息つくため台所に向かう
お湯が沸くまでお茶うけを探す
確か麦チョコがあったはず
ひとつつまんでぷちぷち食べる
ぷちぷちころころ
ころころぷちぷち
「あれぇももちゃんはぁ」
間延びした声が響く
ももちゃんとは二つ年下の可愛らしい妹のことで、今日は最近知り合って付き合った彼と江ノ島に出掛けている
ももちゃんは、野菜で言うと白菜や大根だ
自身はさっぱりあっさり冷たい性格なのに、周りの影響で例えば彼といるとトロトロになってしまう
そのうち溶けてスープの出汁の一部になってしまうのではないかと気が気でない
「ねぇぇももちゃんはぁ」
ころころという声が再度聞く
ちょうど二週間前からこの声が聞こえるようになった
最初はボタンだった
あの人が帰った後に見つけたあの人のボタン
「ねぇぇ今日のごはんはぁ」
最初、ももちゃんかと思って返事をしてしまいそうになった
違う、ももちゃんはこんなに甘い声は出さない
声がしたところを恐る恐る見てみる
黒くてコロンとしたボタンがラグの上に落ちていたのだ
ちょうどあの人が座っていたところに
「ねぇぇ今日のごはんはぁ」
「今日のごはんは肉豆腐よ」
答えるとそれ以降一切声を発さなかった
ただのボタンになってしまった
黒くて触るとコロンと冷たいあの人の一部だった、もの

麦チョコもそういえばあの人が買ってくれたものだ
私が好きだと言ったのを覚えててくれて嬉しかったのを覚えてる
ぷちぷちひとつづつ食べるのが好きなのだ
胸焼けなど気にせず食べてしまう
どうやらあの人に関係がある黒くて小さいものが言葉を発するようになったらしい
ころころぷちぷち
ぷちぷちころころ


「さみしくなかったかい?」
二週間に会えたあの人が囁く
私と話す時だけ甘い声になることをこの人も最近自覚したらしい
ころころぷちぷち
ぷちぷちころころ
「側にあなたを感じたからさみしくなかったわ、この前の麦チョコありがとうとても美味しかったわ」
ぷちぷちころころ
ころころぷちぷち
この気持ちと麦チョコと
あの声とこの人が居れば
きっと世界は素敵で美しいに違いない