初めて勤めたのは、総合病院の産婦人科。
夜勤での仮眠は、3時間毎にある授乳の直後~次の授乳までの間。
3人がそれぞれ、新生児室の廊下のストレッチャー、陣痛室のベッド、休憩室のソファで休む。
あれは、無脳児が産まれた日の深夜勤での出来事。
無脳児は脳がない為、呼吸もままならず、産まれてすぐから、大きな膿盆の中に横たえられ、息を引き取るのを自然にまかせた状態で、分娩室にいた。
(無脳児とは、読んで字の如く、脳が形成されていない状態。両目より上の頭がなく、殆ど平らでまるで蛙みたいな感じで。昔は、超音波が未発達で、産まれてみたら無脳児だったってこともあり、臨月までお腹の中にいて、分娩に至って初めて発見されることもあった。)
(超音波が未発達つながりで、分娩介助していて児の娩出後、次は胎盤娩出と構えていたら、何と!びっくり!もう一人の頭が出て来て、実は双胎だったってことも、先輩から聞いたことがある。)
話は戻り、あの日の深夜。。。。
私は、ナースコールと外線電話がすぐ取れる、ソファで休んでいた。
あの日は、寝つけなくて殆どゴロゴロしているうちに時間が過ぎた。
4時の授乳前になり、
新人の私は、一番に体を起こし、授乳室へ。
一人の先輩と一緒に、ママ達の授乳介助、搾母乳、ベビのミルク補足、とあれやこれやして終了。
ふと、
Kさんは?また爆眠か~?と、新生児室脇の薄暗い廊下を覗きに行った。
「Kさ~ん」
返事がない。
「Kさ~ん」
体を揺り動かしても、起きない。
「ひゃっ」
Kさんを触った自分の手がベタベタ。。。。
Kさんは、凄い寝汗をかいていて、、、
今度は、思いっきり体を揺さぶり、Kさんを起こした。
「はっ」と目覚めたKさん。
「う~ん、あれっ、居ない!」
「誰が?」
「今、こっちのお乳吸われてたんよ」
「え~?誰に?」
「えっ?赤ちゃんが、、。」
Kさんは、少々寝ぼけていて、
「いや~!」
やっと正気に返り、
「ど~しょ~、私、今ず~っと赤ちゃんにお乳吸われてたんよ。一生懸命吸ってくれてたし、、、。夢かなあ、でもこっちのお乳の先痛いし~、夢と違うかも。。。」
ぞっとした。
咄嗟に、
何となく、分娩室が気になって
あの子を見に行った。
膿盆の中を覗き込む。。。。
まだ、呼吸があった。
喘ぐように、小さな息。。。だんだん間隔が長くなり。。。
そして、
遂に、動かなくなって。。。。
3人に見守られながら、
息を引き取った。
とたん、
「わ~っ」と泣くKさん。
「この子なんやわ、この子、お乳欲しかったんや。」
横にいる私も泣けて来た、、、
凄く怖いけど、悲しい、そして忘れられない出来事。