さて、相続コンサルタントというと、どんな仕事を想像しますか?

「相続税対策」を行っていると思われることが多いです。

そして、周りの相続コンサルタントと名乗っている人はたいてい「相続税対策」を行っているのではないでしょうか?

 

税金という数字で分かりやすいことをやった方がお客様も報酬を支払いやすいということもあるでしょう。

コンサルタントと名乗りながら、コンサルティングなんかせず相続税対策とかこつけた商品を売っている、ただの商品売りをしているだけということもあります。

 

しかし、私は相続税対策の人ではありません。

つまり税金対策を目的として動いていません。

 

そして、極端な言い方をすると「相続税対策なんかするな!!!」と思っていますし、お客様にも伝えています。

 

そんなことを言うと、「お金は大事だろ!!!」、「税金はなるべく払いたくない!!!」というお声が聞こえてきます。

私もお金は大事だと思いますし、税金なんか払わなくていいなら払いたくないと思っています。

 

ではなぜ相続税対策をしないほうがいいと言っているのか?

今回は前編として、相続税対策についてご説明します。

 

 

巷で言われる相続税対策とは?


そもそも「税金対策」とは何なのか?

税金対策というのは、一般的に「節税」と呼ばれるものです。

ここで大事なのは「節税」であって、「脱税」であってはならないということです。

 

相続税でいうと、日本では国民の側から申告して「こうこうこういう計算で、相続財産がいくらなので、それに対して税金をいくら納めます」と言ってから納めるものです。

 

これがミソなわけです。

 

要するに計算方法はこちらで組み立ててよいというわけです。

税金は誰がどう計算しても同じというわけではないというのがポイントです。

 

ですので、計算方法1つで税金は変わってきます。

その計算方法が明らかに間違っていたり、何かを隠していたりするともちろん「脱税」ですが、考え方が税務署と不一致になっても「脱税」になってしまうことがあります(罪の重さは差異があるので、追徴課税の金額は変わるかとは思います)。

 

そんな中で、私は不動産×相続のプロですので、不動産を使った「相続税対策」とはどのようなものがあるのか、「ザ・不動産を使った相続税節税」という考え方を2つご紹介します。

 

 

①不動産を使った相続税対策

 

私も過去にがっつりかかわっていた分野でもあります。

相続税の計算をするとき、まずは全体でいくら相続財産があるのかが大事です。

 

相続税は1つ1つの財産にかかるものではありません。

現金、預貯金、不動産、有価証券、生命保険など様々な財産の合計額に対して一定以上の財産を持ってらっしゃった方が亡くなった場合に、それを相続した方にかかってきます。

(たまに、「こんな不動産を持っているんですが相続税はいくらですか?」と聞いてくるかたがいらっしゃいますが、他に何をどれだけ持っているのか分からないと税金は計算できません...)

 

そんな中で、当然、まずは全財産がいくらなのかを計算しなければなりません。

相続財産額は、“相続発生時”にいくらの価値があるものなのか、つまり相続発生時の「時価」となります。

 

その「時価」を計算するとき、現金や預貯金はそのままの金額なのでいくらか分かりやすいですよね!

他にも有価証券や、生命保険もそのときの時価や保険金、解約返戻金などが公表、あるいは開示されるので分かりやすいです。

 

一方で、不動産というのは、時価が非常にわかりにくいものです。

ですので、不動産の相続税を計算するときの価値は「こういう計算をしなさい」という国税庁からの通達に基づいて計算を行うのが一般的です。

 

そして、その国税庁からの通達に基づく相続税の申告で使う不動産価値(=相続税評価額)が「時価」よりも安いことが往々にしてあるので、相続税対策として使われることがあります。

 

例えば、全財産が現金1億円の方がいるとします。

その方が現金1億円を持ったまま、亡くなったとすると、当然1億円に対して課税がされます。

ただ、その方が亡くなる前にその全財産1億円で不動産を買って、その不動産の相続税評価額が5,000万円だとすると5,000万円に対して課税されます。

それでいうと、計算の分母が半分になるわけなので、相続税はかなり減るわけです。

 

けれども、その不動産は相続発生後に売ると1億円で売れるとすると、税金めっちゃ減ったのに相続した財産は同じとかいうことが起こり得るわけです。

つまり、現金で持っておくよりも、手数料(相続税)を少なく次世代に承継することができます。

 

これが不動産を使った相続税対策、節税対策と言われるものの基本的な考え方です。

つまり、「時価」と「相続税評価額」の金額差(ギャップ)を使った節税対策というものです。

 

 

②借入金を使った相続税対策

 

不動産の相続税対策とセットになるのが、借入金を使った相続税対策です。

相続財産を計算するとき、借入などの債務がある場合は、その債務を控除することができます

 

例えば、現金1億円を持っているけど、借金が5,000万円あるという方がいるとすると、1億円-5,000万円=5,000万円が課税財産額ということになります。

 

不動産と組み合わせた例で考えてみるとこんな感じです。

全財産が現金1億円の人が、現金1億円と借入金1億円を使って2億円の不動産を買ったとします(時価=2億円)。

けれどもその不動産の相続税評価額が1億円だとすると、課税財産額は不動産1億円-借入金1億円=0円ということになります。

そんな不動産を相続して、売却するとします。

それが2億円で売れたとすると、売れたお金で借入金1億円を返済しても、手元に1億円残ります。

そんなことができてしまうとすると、1億円の現金を無税で次世代に承継できることになります。

こんなことです。

 

 

まとめ

 

今回は、まだ本題のところまでは行きつきませんでした。

次回の後編にて、なぜ「相続税対策をするな!!!」と言っているのかご説明できればと思います。

 

前編のポイントは、こんなところです。

 

・相続税を計算するとき、不動産の「時価」は分かりにくいから、国税庁の通達を元に計算を行うことになっており、そうして計算した相続税評価額はたいてい「時価」より低い価格になっている。

 

さあ、後編をお楽しみに!