もう薬剤師になってしばらく経つ。
薬剤師になりたての頃は患者のためって何だろうと試行錯誤しながら働くのも楽しかった。
最初の最初は話をとにかく聞いてあげることだと思っていた。
というよりもそれしかできなかった。
ドラッグストアで働いていると商品について聞かれることもある。市販の風邪薬だけでなく大人用おむつや食品についても。
そういう話も聞いてあげることでお客さんに親切な薬剤師として認識されて、顧客化することができる。
ただ年数を重ねてくるとうっとおしくなってくる。そんなの私に聞くなよと答えたくなる。
それでも最初のうちは聞くことに徹していた。
あるとき、70代くらいの男性がお店に入ってきた。歩き方も膝が曲がらないで、今にも転びそうだった。優しそうないわゆるいいおじいちゃんな感じで、
店員に聞きたいことがある雰囲気だったので、こちらから話しかけた。売り場の場所がわからないのかなと軽い気持ちだった。
どうしたのか聞いてみた。
ゴム(避妊具)について聞きたいと。うん、思ってたのと違った。
その年で避妊するんかい。
とりあえず場所だけ案内してそそくさ離れようかと思った。ただおじいちゃんは自分を離さなかった。
どれがおすすめかな。
いや僕もそこまではわからないですけど。いや本当に。
初めて使うから不安なんだよね。
初めてなんかい!いや深く考えると楽しくツッコミできないけど!
それでも新入社員だった自分は真面目に対応した。安さを考えるなら〜、大きさも〜、薄さなら〜…etc
その間もおじいちゃんは震える手でパッケージを持とうとしては陳列をぼとぼと落として、それを直す自分。
何かのドッキリかと思うレベルで、色々な人と接してきても未だに覚えている。
うまく使えたのかな、あの人は。
まあふざけたような話だけど、本人にとっては大真面目。不快な気持ちにはさせなかったと思いたい。深く考えずに聞いてあげるだけでも何か良いことした気分になる。
今は表情に少しは出そうで怖い。