チョコパン、あんパン、バナナ、オリゴ糖、黒糖かりんとう、レーズン、チョコレート・・・走りながら補った給食だ。大会事務局が準備してくれたもの以外に、寒い中沿道から手を伸ばしてランナーに分け与えてくれたものもたくさん。手作りのクッキーも差し出してくれている方もいた。こんな寒いのに「ほんとありがとう」と伝え、ほおばった。



ペースが遅いせいか、寒さのためか、まずふくらはぎが張った。
「まずいなぁ、パンパンだよ」と思いながら走っていると、「エアサロ(エアーサロンパス)」あるよの看板と声が聞こえる。
「お願いします!」迷わず駆け寄る。張っているふくらはぎにCW-Xの上からプシュー!
少し手で揉んでやわらげる。
「ありがとうございます!」「がんばれよ!ほら、チョコも食べなよ!」「あっ、ありがとう」
いくつものポイントでエアサロ隊がいた、これは助かった。



浅草寺が見えてきた。この辺り、けっこう気持ちよく走っていた。すでに、自分の経験したことのない距離に入っていたが、エアサロのおかげもあり、軽快だった。雨が少しやみかけていたので、気分的にも乗ってきたのであろう・・・ちょうどボビーオロゴンさんを抜いた。後ろから見る彼の走りは疲れが出ていた。「ボビー、一緒にがんばろうな」「おぅ」と返事があったと思う。



再び家族に会う予定の浅草橋を通過。あれ?いない。携帯で連絡しても繋がらないので、そのまま走行。後で聞いた話では、食事を取っていたと・・・こちらもスピードを上げたので仕方ないか。


と、31キロ過ぎ、左腿の前、膝の10センチほど上の内側に異様な張りを感じる。今ままで経験したことのない痛みだ。触ってみるとパンパン。ちょうどエアサロを持っている方の前を通ったので、お願いする。
32キロ、今度は両腿に同じ痛みを感じる。痙ったのだ。少し我慢するが、全く脚が上がらない。「うわぁ、これが30キロ過ぎの魔物か?!」
歩道側に寄り、立ち止まる。屈伸ができないほど張っている。この痙った状態はどうすれば良いんだろうと考えながら、腿をさすりストレッチをし、伸脚や屈伸をなんとか行う。「よし、消えた」ゆっくり走り出す。
33キロ。また、同じ痛みが来た・・・銀座近くで、すごい人垣の中立ち止まる。また屈伸などを行い、そうだエアサロ持っていたんだ。と自分のポーチから取り出し、徹底的に吹きかける。
ゆっくり歩き出す。「がんばれ」と声を掛けてもらうも、言葉を返せない、情けない。
歌舞伎座前でランニング仲間が待っている。もはや、記録はどうでも良い、そこまでなんとか・・・
銀座4丁目の交差点を左に折れる、まだ脚が言うことをきかない。地下鉄銀座駅入り口の脇で再度ストレッチ。
日差しが出ていた。少し暖かくなっていた。タイツの上からかけたエアサロは、じわじわしみてくる。「なんだか、行けそうな気がする!」と不安いっぱいで強がった。
ようやく歌舞伎座前、大声で声を掛けてくれたランニング仲間。歩み寄って、言葉を交わす。バナナを一本もらった。ポンチョも脱いだ。ゴールした後で聞いた話では、今までに見たことない悲壮な顔をしていたそうだ。携帯で5キロ毎のラップを確認していたようで、ペースが上がった後の30キロ過ぎ、いっこうに姿を見せない僕に何か起きたんだ、リタイアか、と、心配してくれていた。



両脚が痛む前の32キロ付近だったと思う。ショッツ・エナジー「ワイルドビーン」でエネルギー補給とカフェインを摂取していた。これが効いてきたのだろうか、35キロでもらった暖かいお茶と味噌汁が効いたのか、この後、ここまでの苦しみがウソのような完全復活を遂げる。

いつも走っている皇居が見えてきた。
万全の体制の給水や沿道の派手なパフォーマンスを観ながら走っていたら、あっという間に付いた感じ。ホームグランドは落ち着くな、と思っていたら、また、僕を呼ぶ声がかかる!
「えっ?!」「あ、ありがとう!」
毎週一緒に走っている仲間だ。今日は検定試験で応援に来れないとメールが来ていたのに・・・
すんごいうれしい。今度はちゃんと声を上げて、手を振って応えた。



10キロのゴールが見えた。「あらあら、もう終わりなんだ、もったいない」、なんて思いながら横をすり抜ける。
そろそろエンジンかけなければ!と思うも、その前にトイレに行きたい・・・。でも、仮設トイレもコンビニも行列ができているのが目に入る。
多少のロスを覚悟して、少し裏側のトイレで用は足せたが、この寒さで手もかじかむし、意外と1人の時間がかかる。このロスを少しでもなくすために、カフェイン断ちとアルコール断ちをしてきたが、やはり寒さはきつい。でも、トイレはこの1回ですんだのはラッキーか。



さぁ、少しスピードをあげないと!品川の折り返し、日比谷、銀座、日本橋、水天宮・・・でも、あまりスピードが上がらない。雨が顔に当たる、しかも痛い。
「なんだよ、ミゾレかよぉ。でも、みんな条件は一緒」
ナイロン手袋に水が溜まった・・・想定外だった。ランニンググローブはびしょびしょ。その上に被せてあるナイロン手袋の中でチャポチャポしてる冷たい水が余計に手を冷やす。
早く外したいが、ミゾレというか雨は強くなるばかりでそれも無茶か。
「天気予報はずれたなぁ・・・」と恨めしく空を見上げると「あれ?!西の空が明るくなって来た」



浅草橋には、妻と娘がいた。
往復2回通る場所で、JRの駅前なので便利だろうとあらかじめ決めていたが、天気の変わり目と重なりそうでラッキーだ。
濡れた手袋を、前日に東京マラソンEXPOでもらったAMINOバリューの手袋に交換。もちろんナイロン手袋はそこでお役目終了。すっかりびしょ濡れになっていた首に巻いたタオルも交換。
ニット帽を脱ぎ、キャップに代えた。
そして、ようやくゴルフ用のレインウェアのパンツを脱いだ。
さぁ、気分一新!すっかり目標タイムから遅れてしまった分、挽回するぞ!


石原都知事に手を振って走り出した。いよいよ42.195キロのスタートだ。
「飛ばさないようにスピードを抑えて、10キロまでは絶対我慢」と言い聞かせた。
そうだ、帽子を代えようとニット帽を脱ぐ。
「だめだ、さ、寒い!このまま行こう」と即かぶり直す。
結局、大ガード近くにいた妻に渡したのは、百均レインコートとネックウォーマーだけ。
ニット帽もゴルフ用のレインウェアも、ポンチョもそのまま。かなりの重装備で走り始めた。
この時、上半身は下から長袖のランニングシャツ、Tシャツ、ランニングジャケット、そしてビニールポンチョ。そうそう、乳首にはニプレス(笑)
下半身は、下着の上にCW-X 、7丈の短パン、ゴルフ用レインウェア・・・上下とも4枚ずつ。こんなに着込んでいても・・・ネックウォーマーも渡さなきゃ良かった。。。首が寒い。そうだ、花粉症対策で持っていたオレンジ色のタオル(野球の巨人の応援で使うマフラー型のタオル)を首に巻こう。寒いよりいいや、という思いで走って行った。



と、僕に声がかかる。
「えっ?!」と振り向くと、朝メールをくれた知り合いが歌舞伎町近くで応援してくれていた。
手を振って返すも、こ、声が出ない。でも、ほんとにありがたかった。がんばるぜ!
そういえば、スタートして直後に右折してから、沿道に人垣ができていた。気温3℃の中、2重3重にもなって応援してくれる人の波はスタート地点から始まっていた。



「つ、冷たい!」、ビシャッと水たまりに足を取られた。ランニングシューズの生地はメッシュだ。この試練が、このあと何度も起きる。前が見渡せれば避けられるものの、人が多いと水たまりが突然現れて足を襲う。特に歩道に近いところは水がたまっている、気をつけなければ。
とはいえ、染みこむのも早いが乾くのも早い。シューズの中がびちゃびちゃになるという感覚はなかった。
手袋はしていた。雨対策で、ランニンググローブの上にキッチン用のビニール手袋もしていた。雨から最大限に防御できる最善の策だと勝ち誇っていた・・・この前半は。

スタートの号砲25分前が整列の締切だ。
荷物をトラックに預かってもらってから15分、その間にトイレに行かねば!
幸い中央公園内の仮設トイレが空いていて、多少の待ちですませた。



ちょっと身体ほぐしたいな・・・いやいや無理っ。列に並びながら、軽くストレッチするのがやっと。それでも、もう少し前に詰めてくださいとボランティアさんの声。
「これは走りながらほぐすしかない」
スタートタイムまでは、ひたすら待つのみ。
スタート前イベントなんて、見えないし、音も聞こえないし、雨は降り続くし・・・
ただ待っているときは、寒いと感じなかった。
忘却の彼方にあったが、ネックウォーマーもちゃんと装着していたので、防寒対策ばっちり。ちょっとストレッチしたとき「暑いな」と思わずつぶやいた・・・(笑)
でも、このままじゃ走れないので、何を脱ごうかと考えていた。妻が新宿大ガード前に待機している。それでも、時間はたっぷりある。
周りを見渡すと写真を撮ったり、携帯をいじったり・・・
そうだ、ツイッターしよう、と携帯を取り出す。
携帯が濡れる・・・写真を撮っている間、文字を打つ間、否応なしに吹き付ける雨。これはまずいな、壊れちゃう。案の定、昨日から調子が悪い(^^;
ふと、左を見ると、整列の締切時間8時45分に間に合わなかった人たちの待機の列が見えた。ゼッケン番号はAやBの人まで混じってる。あんなに新宿が混むとわからなかったのか、アクシデントかわからないが、想像以上に多くいる。



ほどなく号砲の音が聞こえた。この時だけは「うおおおっ!」という歓声と拍手がまわりでおきる。でも、何も変わらない、動かない。
ようやく列が前にずれる「このままでスタートまで行きますよ」と、ボランティアさんの声が響く。亀の歩み程度だ・・・まじで?!
号砲から10分くらい経ったろうか、ようやく左に曲がりスタートラインが見えた。遠くに石原都知事が見える。そして、スタートイベントのDJの声が聞こえる。
「東京マラソンに始めて参加の人手を上げて」というDJの呼びかけにほとんどの手が上がる。
「なんだ、みんな初めてなんだ、一緒じゃないか!」
足下には、無数の傘と脱ぎ捨てられたレインコート、ポンチョが散乱していた。



石原都知事が間近に見えてきた、
結局、号砲から17分後の9時27分、ようやく腕時計のストップウオッチのスタートボタンを押した。荷物を預けた時に初めて「ありがとう」と言ってから、ちょうど1時間が経っていた。


8時新宿駅着。直前に奥さんが出場するという知り合いからメールが入る。もう会場にいると・・・おっ、会えるかな?!いやいや、全く無理だった。



改札を出ると、そこにはランナーとランナーの関係者であふれていた。案内板に沿って荷物預かってくれるトラックに向かう西口通路。雨を避けるため、この通路も満杯だ。通路の脇はほとんど着替えるランナーで埋まっている。寒さ対策、雨対策で最後の準備をしているのだろう。
しまった、ポンチョを着忘れた、と僕も一旦立ち往生。
ふと、時計を見ると15分。まずい、荷物が預けられなくなる・・・と焦る。



京王プラザホテルの先は、規制が引かれランナーしか入れない。「がんばってね」と抱擁しているカップルをみて「若いなぁ(笑)」
人が減ったはずなのに、同じように前進するランナーで思うように前に進めない。仮設トイレの行列も行く手を阻む。
しかも僕のトラックNo.38は、1ブロック南側。締切間近だという放送が入るが先に進まない。
仕方ないので、他のトラックの後ろなどを縫って歩き、ようやく締切3分前に到着。
「荷物、お願いします」「がんばって、いってらっしゃい」「ありがとう」
今日の最初のありがとうは、荷物預け担当のボランティアの女性にだった。



しかし、この荷物、もし間に合わなかったら、「持って走るの?どうなるんだろう。」



しとしと冷たい雨。
傘は捨てるつもりでビニール傘を持ってきている人が多かった。
百均で買ったレインコートをほとんどの人が着ている。
僕は、寒さよけのランニングジャケットの上に、ASICSの290円のポンチョ、そして百均レインコート。帽子もスタートまでは寒いだろうと思い、ニット帽を被る。走り出したらキャップに変えれば良いと考えていた。
下は直前に思いついたゴルフ用のレインパンツ。これが保温性、撥水性抜群で役に立った。もちろん動きやすい。シューズには、防水スプレーをたっぷりかけていた。
傘は危ないからと思っていたので、地元の駅で息子に持って帰ってもらったが、ちょっと後悔。



スタートブロックは、10ブロックの後ろから2つめ「J」ブロック。昨年のエントリーの際、想定タイムを深く考えずに5時間と書いたためだ。これが大きな問題だったと気付いたのは、その晩の打ち上げだったのだから、笑ってしまう。