では曲の感想を、と言っておきながら少し脱線。


豊崎愛生さんが個人名義で新曲を発表する度にいつも思うことがある。彼女の音楽活動はいわゆる「声優アーティストファン」をふるいにかけているのではないか。


スフィアのライブ会場で両手に何本もサイリウムを握り、奇声を上げるような方々は、はっきり言って豊崎愛生の音楽活動には似合わない。そういう人たちは彼女のソロコンサートに参加するのだろうか。参加したとして楽しめるような雰囲気ではないように思えるのだが、そこは豊崎愛生個人を好きで応援したいと思っているのなら、やっぱり参加するのだろう。しかし個人的にはTPOさえわきまえていただければどうでもいいと思っている。


つまり、彼女の音楽は「声優アーティスト」の本道ではない。コンサート会場ではサイリウムさえいらないと思っている(振っても文句はないが)。

そんな豊崎愛生の音楽、その道のど真ん中をこれからも歩んでいってほしい、と私は思っております。




さて、「Love letters」は今回も彼女の「愛」がたくさん詰まった物となった。

既存の楽曲については感想を書いた物もあるので割愛するとして(書いてなくても問題はない)、今作で新曲として収録された5曲の感想でも…




1. See You Tomorrow

第一印象は朝日がきらきら街を照らすようなイメージ。1日の始まりを象徴するように、アルバムの幕開けに相応しい楽曲だ。作詞作曲を担当したRie fuさん曰く「明日への期待や不安も含めて日々に奮闘する女性の美しさ」がテーマとのことなので、恐らく想定しているのは今現在の豊崎愛生(と同世代の女性)だろう。

先行シングルとして発表された「CHEEKY」も「等身大の26歳の豊崎愛生」を表現しているとのことなので相通ずるものがある。恐らく今作はそういう方向性で創られた物であり、そういう意味でもこのアルバムの1曲目は必然だとも言える。


個人的におもしろかったのはサビの部分の「See You Tomorrow」が1番、2番、大サビと全部「ロウ」の部分の音が下がるところ。大サビくらいは音程を上げた方が気持ちいいのにと思わなくもないのだが、下げることによって曲としての落ち着きがでるというか、今までより「ちょっとオトナなのよ」的な印象を受けた。



6. パタパ

これはもう、パタパ=人間と発想した時点で作詞作曲したたむらぱんさんの勝ちと言いますか。

こんなこと書くのもなんだが、まさかこんな真っ直ぐに愛を歌っているとは思ってなかったのでいい意味で裏切られた。もっと軽い感じの豊崎愛生っぽい歌になってるかと思いきや、意外にもしっかりとしたバンドサウンドでかっこいい。



7. LiLi A LiLi

2ndシングル「ぼくを探して」以来のCharaとのコラボ曲。前作もそうだがCharaの楽曲は豊崎愛生の一味違う面を引き出してくれておもしろい。数少ない彼女の影(とでも言おうか)を表現してくれて、普段とのギャップを楽しむ曲。



12. true blue

波と足音から始まりアコースティックギターとバイオリン(?)の旋律が悲しさを誘うようなイントロ。

夜明け前の海岸線を物思いに耽り、独り歩きながらつぶやくように歌うような映像が頭に浮かんだ。最後も足音がフェードアウトして終わるのだが、そこから次の曲へと繋がるところがすごく良い。



13. letter writer

UNISON SQUARE GARDENの田淵智也さんが作詞作曲。スフィアのメンバーでは戸松遥、高垣彩陽に続いて3人目の楽曲提供。毎度思うのだけど、この人は本当に歌い手の魅力を引き出すことに長けているというか、よく理解した上で曲を作ってるんだろうなぁと思う。


「Q&Aリサイタル!」では曲の頭の「いくよ?」や曲中の「逃さないで?」、間奏前での三三七拍子などで戸松遥の可愛らしさや元気なノリの良さ、「夢のとなり」では効果的なところでの高音や転調という高垣彩陽にしか表現できない音や技巧。そういう魅力を取り込むことによって、より一層曲に豊かさが増える。


そんな中でこの「letter writer」はどういう曲になるのか、最初はちょっと不安だった。豊崎愛生と田淵智也の色がうまい具合に混ざってくれるのか。しかし心配は杞憂に終わった。


耳に飛び込んできたのは、なんとカントリー調のアコースティックギター。思わず部屋で「そうきたか!」と唸ってしまった。そしてこれが実に合うのである。

そしてこの曲でもしっかりと豊崎愛生らしい魅力を込めてくれました。「せーの、ワン、ツー、スリー」や「だから おはようとおかえりをね」の「ね」の表現なんかは素晴らしいの一語に尽きる。ちなみにMVでその部分を見たら思わず身震いしてしまった(素晴らしい演出でした)。




この記事の冒頭で、"今回も彼女の「愛」がたくさん詰まった物となった"と書いた。結局はそれに尽きるのだ。


豊崎愛生の作品は愛を、感謝を、そして幸せを届ける。


受け取る側によってはそれは眩しいもので、羨望と同時に後ろめたさも感じてしまうのだけど、そんなちっぽけな思いも含めて彼女はそれを汲んで、こちらに愛を返してくれる。そしてそれは我々ファンの生活にいつまでも寄り添ってくれるのだ。