今の病院には、通算で40年近く通院したり、入院したりしています。
院長などの上の人間が下っぱだった頃を知っているから、向こうが私と分かると微妙に避けて行きます。
昨日の検査で安静を命じられてしまいました。
その検査を待っている時に懐かしい人に声をかけられました。
キャディ君、久しぶりだね。
昔、キャディをした事があり、指名されたくらいに仲良くしていたメンバーさんでした。
君はどうしたの?顔がむくんでいるね。
心配そうな顔で言われてしまいました。
私は、病名を告げて症状の説明をしました。
そう言えば、メンバーさんはどうしたんですか?
顔色が悪いですけど、酒の飲み過ぎですか?
などと軽口を叩いていたら検査室のナースに呼ばれてレントゲンを撮影しました。
このナースも雪乃の知り合いで、私とは昔馴染みです。
検査が終わって、内科に戻ろうとしたらナースに言われました。
昌昭さん、さっき誰と会話していたんですか?
独り言にしては楽しそうでしたね。
私は、メンバーさんの名前を言って、その人と会話していたと言いました。
すると、ナースの顔色が真っ青になりました。
昌昭さん、その人は私の借家の大家さんだから知っていますが、丁度一月前にこの病院で死亡していますよ。
私は葬儀に参列しましたから確かですよ。
メンバーさんの座っていた場所は、しっとり濡れていました。
この世に未練があるから成仏できないのでしょう。
大病院は、生死の境目があります。
影の見えない人がいたら、御用心。