私も、ある程度回復して来た時に、一階の外来にある自販機まで歩いて行くようにしていました。
リハビリを兼ねての散歩でした。
緊急外来もあるから、蜂に刺された人や、交通事故の患者は勿論、多種多様な患者が運ばれて来ます。
緊急外来の前を歩いていたら、後輩がいました。
久しぶりだな、元気に走っているかFDで。
最近は相手がいませんよ。先輩クラスの人間じゃないと相手になりませんよ。
私が退院したら、相手してやろうか?
そんな会話をしていました。
通り過ぎる人達が、私を白眼視して行きます。
20分くらい会話をしていたら、利光が来ました。
昌昭さん、田村が事故死しましたよ。
この病院に運ばれて、今しがたICUで息を引き取ったそうです。
利光には、見えないけど、そこに田村はいました。
昌昭さん、さようなら。
政宗さんに可愛がってもらいますよ。
そう言って消え去りました。
シートは、濡れていました。
私は、寒気がしたから病室に戻ったとたんに、鏡が割れました。
なんで、白眼視されていたのか納得出来ました。
田村は、利光と同じくらい可愛がっていたから最後に私に会いたかったのかもしれません。
緊急外来で見た顔がいると思ったら、田村の両親でした。
私と利光に気付いて挨拶されても、返す言葉が有りませんでした。
親より先に死ぬのが最大の親不幸です。
その晩、夢で田村の事故した瞬間を見ました。
本人の悔しさと未練がいやと言うほどわかりました。毎日誰かしら死ぬ病院。
まさか身内がここで死ぬのは予想外でした。