真夏の怪談

何かしらいるな。
空気が重くて、カビ臭い。こう感じた時には、ほとんど何かいます。
霊も種類がありますから、対応もいろいろなパターンがありますね。
新築なら問題が無いなんて思わない事です。
私がいた会社の寮は新築でしたが、7日目から幽霊が出ました。
そこは、元々は色街でしたから女の霊が出ました。
空襲で、東京は一面焼け野原になりました。
戦後の混乱期に、墓場が宅地になりました。
バブルの時にはビルがあった場所を買い取って、寮を造りました。
地方から研修に来る人間は皆ここに泊まりました。
面白い事に、妻帯者には出ませんでした。
若い、十代の男性には現れていました。
夜中に悲鳴が聞こえた事は数回あったそうです。
私は、この寮ではなくてビジネスホテルに泊まる事が多かったです。
遠くから来る人間を優先させるから、静岡県はビジネスホテルに泊まれとなります。
しかし、この寮にも一部屋だけ危ない部屋がありました。
皆がどうしても怖くて眠れないとクレームが着く部屋が有りました。
金縛りにかけられたうえに強チンされる被害者が続出しました。
お前達は根性ないな。
総務課の青木課長が泊まりました。
元気一杯で、こんな時代に幽霊なんていないんだよ。大見得を切って入って行きました。
それが、最後の姿になりました。
夜中の2時に青木課長の叫び声が寮にコダマしましたが、誰も助けに行けませんでした。
中から鍵がかかっていました。
合鍵を使っても開きませんでした。
翌日、松田部長が見に行ったのですが、鍵は開きました、しかし、鉄の心臓を持つと言われた方が青ざめた顔付きで出て来てトイレに駆け込んでリバースしたくらいです。
警察が呼ばれました。
死因は、局部を切られた事が原因の出血多量でした。鑑識に廻されましたが、腎臓にはたんぱく質が無い腎虚状態でした。
松田部長は、算盤を弾きました。
更地にして売却しよう。
しかし、壊そうとすると機械が壊れたり、作業員が怪我をしたりして作業が捗りませんでした。
奥の手を使いました。
子会社の不動産部門に半額で売り飛ばしました。
結局、更地しないでテナントを入れたりしていましたが、すぐに経営者が変わっていました。
一度だけ、松田部長に連れられて、その場所に行きましたが、入り口で靴ひもが切れました。
部長、私も命が惜しいですから、他の店に行きましょう。
部長も、青木課長の惨殺死体を思いだしたのか、銀座に連れて行ってくれました。
今でも、その建物はありますが、一番奥の部屋だけは鍵がかかったままです。
よほどの命知らずでなければ行けないでしょうね。
これほどの悪霊は、めったにいません。
建物の外まで溢れる妖気は恨みの深さを想像させます。