ルイス・キャロル 『不思議の国のアリス』 トーベ・ヤンソン画 | Pの食卓

ルイス・キャロル 『不思議の国のアリス』 トーベ・ヤンソン画

トーベ・ヤンソンの挿絵による 『不思議の国のアリス』 購入しました。

ムーミンが好きで、彼らの不思議な間の取り方や独特のセリフ回しや、

一見的を外しているようでその実正鵠を射る観念など、

トーベ・ヤンソンのセンスが好きで好きでたまらないわけです。

情報くだすったBに感謝。


そんなトーベ・ヤンソンがルイス・キャロルの 『不思議の国のアリス』 を訳していた!

ルイス・キャロルの 『不思議の国のアリス』 もとても好きな本なのですが、

この二人の良さが合わさったとき、一体どんな作品に生まれ変わるのだろう?

とても興味をそそられました。


ルイス キャロル, Lewis Carroll, Tove Jansson, 村山 由佳, トーベ ヤンソン
不思議の国のアリス

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守ってあげたいアリスです。村山由佳(直木賞作家)の新訳。トーベ・ヤンソンの“幻のアリス”40年の時を経て初公開。
キャロル自身がアリスに語り聞かせる口調をそのまま文章にした、永遠の少女たちと、彼女を守りたいと願う永遠の少年たちに捧げる新訳。「ムーミン」で知られるトーベ・ヤンソンの「幻のアリス」、40年の時を経て初公開。

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トーベ・ヤンソン版の 『アリス』、 ヤンソンの本国では既に絶版らしいです。

ということは、ヤンソン版の挿絵が使われている本書はそれだけでも価値がある!

珍しい試みなので、買っておいて損はありません。


挿絵ですが、テニスンの挿絵よりも幻想的な雰囲気が出ております。

テニスンの挿絵は風刺めいたところがあり、ややグロテスク。

ともするとクドく煩わしく感じることもあったりします。

それに対しヤンソンの挿絵は、あくまで世界を描くのみに留まっています。

よって絵だけ見ていても物語性があって良いです。


そして、一番評価が分かれる≪訳≫の問題ですが、

ちょっといただけない感じがいたしました。

言葉遣いが文語から口語風に変わってしまったことが残念。


口語レベルに落とした例として、マッドハッターが関西弁なのは許せるわけですが、

詩的な部分まで口語レベルに落とされると、ちょっと興ざめの感。

例えば、気狂いお茶会の席にて有名な詩:


    輝け、きらきら、小さなこうもり、おまえのめあては何だろう!

    この世をはなれて高く飛ぶ、ちょうどみ空に茶盆のよう。

                                輝け、きらきら   (岩崎民平訳)


    ちーかーちーかーひーかーるー おーそーらーのーコウモリよー

    はーるーかーなーせーかーいー お盆のよーにーとんでゆくー

    ちーかーちーかーひーかーるー・・・                  (村山由佳訳)


     "Twinkle, twinkle, little bat!

   How I wonder what you're at!"


    "Up above the world you fly,

   Like a tea-tray in the sky.

         Twinkle, twinkle—"' (ルイス・キャロル文)


やっぱり 「ちかちか光る」 よりも 「輝けきらきら」 の方がきれいな感じがするなあ。

この歌の後に続く、ドーマウスの "Twinkle, twinkle, twinkle, twinkle" のうるさい感じも、

「ちーかーちーかー」 より 「輝け、きらきら、輝け、きらきら」 の方が好きだなあ。

好みの問題なので仕方ありませんが、訳は岩崎民平訳のがいいです。


そんなこんなでしっかり楽しんだ トーベ・ヤンソン絵 『不思議の国のアリス』

ムーミン好きやアリス好きな人は即買いの方向でいかがでしょうか?