今朝、新聞を読んでいたら
公立学校の人事異動に関する
紙面が挿まれていました
異動はなぜ"移動"ではなく"異動"なのでしょう
異動とは、ただ動き移るだけでなく
異なる場所へ赴くから、といいます
昇進と降格
左遷と栄転
出向と転勤
あるいは退職
異なるのは場所や地位だけでなく
自らの想いとも、かけはなれてしまうこと
あるかもしれませんね
こんなはずじゃなかった
そう臍をかむことも
離れたくないひとがあるのに
遠くへと赴かなければならないことも
サラリーマンや勤め人だけでなく
昔から、そういうことはあったのでしょう
<勧酒>
勧君金屈卮
満酌不須辞
花発多風雨
人生足別離
これは有名な于武陵の五言絶句ですが
有名にしたのは「山椒魚」でデビューした井伏鱒二による名訳
その井伏鱒二の山椒魚はこんな話です
山椒魚は居心地尾のいい岩屋で暮らすうちに
大きく育ってしまった頭が通り道につかえて
岩屋から外に出ることができなくなってしまった
思いがけず幽閉されてしまった山椒魚は
腹立ちまぎれに、迷い込んできたカエルを
同じように閉じ込めてしまいます
最初の頃は罵り合っていた山椒魚とカエル
二年を過ぎる頃からはお互いのため息が
聞こえないように息を潜めて暮らすようになるのですが…
この後の文章を作者はすべて削除してしまいます
どういう思いで文章を切り捨ててしまったのか
元のラストはこうです
ついに深いため息をもらしてしまったカエルに
山椒魚が「もう降りてきてもよい」といいますが
カエルはすでに弱りきって死にかけていました
山椒魚が「お前は今なにを考えているのか」と問うと
カエルはこういいます
「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ」
さて
井伏鱒二が訳した<勧酒>はというと
この杯を受けてくれ
どうぞなみなみつがしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
サヨナラだけが人生だ
花に嵐のたとえとは
「月に叢雲 花に風」
名月を眺めれば雲がさえぎり
花見をすれば嵐に散らされる
という意味です
とかくこの世はうまくいかないもの
永遠に届くことのない臍などかんでいないで
笑顔で交わそうじゃないか
別れの杯を

公立学校の人事異動に関する
紙面が挿まれていました
異動はなぜ"移動"ではなく"異動"なのでしょう
異動とは、ただ動き移るだけでなく
異なる場所へ赴くから、といいます
昇進と降格
左遷と栄転
出向と転勤
あるいは退職
異なるのは場所や地位だけでなく
自らの想いとも、かけはなれてしまうこと
あるかもしれませんね
こんなはずじゃなかった
そう臍をかむことも
離れたくないひとがあるのに
遠くへと赴かなければならないことも
サラリーマンや勤め人だけでなく
昔から、そういうことはあったのでしょう
<勧酒>
勧君金屈卮
満酌不須辞
花発多風雨
人生足別離
これは有名な于武陵の五言絶句ですが
有名にしたのは「山椒魚」でデビューした井伏鱒二による名訳
その井伏鱒二の山椒魚はこんな話です
山椒魚は居心地尾のいい岩屋で暮らすうちに
大きく育ってしまった頭が通り道につかえて
岩屋から外に出ることができなくなってしまった
思いがけず幽閉されてしまった山椒魚は
腹立ちまぎれに、迷い込んできたカエルを
同じように閉じ込めてしまいます
最初の頃は罵り合っていた山椒魚とカエル
二年を過ぎる頃からはお互いのため息が
聞こえないように息を潜めて暮らすようになるのですが…
この後の文章を作者はすべて削除してしまいます
どういう思いで文章を切り捨ててしまったのか
元のラストはこうです
ついに深いため息をもらしてしまったカエルに
山椒魚が「もう降りてきてもよい」といいますが
カエルはすでに弱りきって死にかけていました
山椒魚が「お前は今なにを考えているのか」と問うと
カエルはこういいます
「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ」
さて
井伏鱒二が訳した<勧酒>はというと
この杯を受けてくれ
どうぞなみなみつがしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
サヨナラだけが人生だ
花に嵐のたとえとは
「月に叢雲 花に風」
名月を眺めれば雲がさえぎり
花見をすれば嵐に散らされる
という意味です
とかくこの世はうまくいかないもの
永遠に届くことのない臍などかんでいないで
笑顔で交わそうじゃないか
別れの杯を


