「天皇は、日本国の象徴であり日本国民の統合の象徴であって、
この地位は、主権の存する国民の総意に基く(日本国憲法第1条)」。
憲法において、天皇の地位はこのように定められています。
しかし、実際には天皇とは何か、という点について
はっきりとした答えはない状況です。
このように言うと、昔から天皇は存在したので
そんなはずはない、と思われるでしょう。
この点については、間違いではないのです。
ただ、今の天皇が日本という国にとって、
どのような立場にある方なのか、がはっきりしないのです。
そもそも、天皇は、憲法ができる前から存在していました。
それを明治維新以後、法治国家体制を作り上げる段階で
法律上の地位に位置付ける必要が生じました。
そして、1889年に公布された大日本帝国憲法(明治憲法)の中で、
天皇は国家元首と位置付けられました。
もともと天皇は君主と言えました。
君主とは、一般に非民主的な権威を背景に
対外的な国の代表権を持つ者を言います。
日本では、幕府ができて曖昧になった感じがしますが、
幕府の長が天皇の臣下たる「征夷大将軍」であったことからすれば、
天皇は君主であったと言えるでしょう。
ここで、元首とは国家の長として、
対外的に国を代表する地位にある者をいうとされます。
この定義からすれば、天皇は今でも元首に当たるとも思えます。
しかし、元首といえるには国家権力を有することが必要とされる
考えもあり、ここが議論の分かれ目です。
明治憲法下では、天皇は国の統帥権を持つと規定されていたため
元首であることは明らかでした。しかし、現行憲法では、
天皇は「象徴」とされるだけです。
そして、実は象徴の意義は国の最高権力である主権が
個人にない、ということにあります。
「皇室外交」など、国の儀礼的な外交を担われている天皇ですが、
実のところはこのように曖昧な立場なのです。
