時は流れても、誰しも、忘れられない思い出話というのはいくつかあるものと思います。もう40年程前のある夏の日のこと、イラクから、日本のコンクリート産業を視察するために、イラク人技師10名が来日しました。そのイラク人達を東京近郊のコンクリート工場に案内することになりました。
汗をかきながらの工場見学が終わって、駅近くの食堂でお昼ご飯となりました。食堂に入ると、お店の人が来て、壁に掛けてある小さな黒板を指差しながら、「ここに書いてあるメニューは、今日、半額です…」と言いました。一同、腹ペコで、ちょうど人数分ぐらいだったので、「じゃあ、それを1個ずつ全部」と注文しました。
皆さん、待ちに待っての昼食で、おいしい!おいしい!と言いながら、アッと言う間に残らず食べちゃいました。私も満腹になって、落ち着きを取り戻し、何気に先ほどのメニューを見てました。そして、一瞬、目が点になりました。半額のメニューの一つに「酢豚」と書いてあるのです。
イラク人はイスラム教徒ですから、絶対に豚肉を食してはいけないのです。夢であって欲しいと思いました。でも、目の前で、ヒゲ面のイラク人が満足そうに笑っているのが見えます。こうなったら、兎にも角にも1秒でも早く、この店を立ち去ることしか頭にありませんでした。店を出る時、食堂の横には、ひまわりが数本咲いてました。
40年前、はるばるイラクから日本にお出で頂いた方々、イラクはいろいろとありましたが、今でも、皆様お元気でしょうか?あの時は、酢豚の件、ウッカリしていてご免なさい。もう時効と勝手に決めて、ここに白状してお詫び申し上げます。これで気持ちが少し楽になりました。