2人が結婚した時の約束は「生活費を折半すること」並びに「共働きなので夫Aも家事を手伝うということ」であった。しかし、夫Aはこの10年間、家事を碌にしなかった。
これに不満を募らせた妻Bは離婚を決意。すると、夫Aは「今ある俺達の貯金は、共有財産になるから折半だな。」と言う。この夫婦の貯金は1000万円であり、通常なら500万円ずつとなる。しかし、妻Bは「私の方が多く稼いでいる上に夫Aは家のことを何一つしてくれなかった。折半は絶対許さない。」と言う。因みに夫Aの年収は200万円、妻Bの年収は1000万円である。
果たして、財産は半分ずつ折半か?それとも、妻の方が多く貰えるのか?
北村弁護士の見解:折半
「例えばこれ、男女を置き変えて考えていただきたいんですけど。奥さんを大事にしてる旦那がいて、家事も全部家政婦さんにしていただきましたと。だから一切家事もしないし一円も稼いでないという奥さんでも、この妻がいるから自分は頑張れるんだ、頑張りました。で、稼いだ財産、これ折半が原則なんですね。このご夫婦にとってですよ、あの奥さんはあの旦那がいたからキャリアウーマンとして頑張れたっていう面が当然あるはずなんですよ。ある段階では嫌になったかもしれない、しかし相当の期間は旦那が心の支えになってくれてるから頑張れた。男女同権の世の中で、原則折半ということにしないと収まりがつかない。」
本村弁護士の見解:折半
「これね、やっぱり折半にしないと不公平なんですよ。例えば一般的に、本当はバリバリ仕事ができる人なのに、結婚を機に仕事を辞めたという人は多いわけですよね。子どもが生まれて、仕事をセーブしているという人も多いわけですよ。これは男も女も両方ありえますからね。夫婦で話し合って、役割分担をしているわけですよ。それが、協力して財産を作るという意味なんですね。」
北村・本村弁護士の見解はやや決め付け過ぎている部分もあるものの見解自体は極めて合理的。夫Aは借金をしたわけでもなければ、不倫に走ったわけでもない。年収云々など全く関係ない。となると、これは財産分与に差を付けるべき決定的な事由に当たらないことになるため、本件では共有財産を分与する場合は原則通り、折半となるのが常識的な解釈と言える。
大渕弁護士の見解:妻の方が多く貰える(夫A:妻B=3:7)
「このVTRのケースでは、全く家事をしない。そういう人にまで半々認めてしまったら、家のことをちゃんとやってる人にとっても不公平だし、当然もらえると思って家のことやらないというのもおかしな話ですので、それは、貢献度に合わせて割合は変えるべきだと考えます。」
菊地弁護士の見解:妻の方が多く貰える(夫A:妻B=4:6)
「基本のスタートは折半でいいと思うんです。ところが、やっぱり例外はあるんですね。非常に高額に収入を得ている片方と、そうでない方、というような場合は、これもやはり折半かというと逆に不公平が出てくるということで、どっかで調節しなきゃいけない。」
大渕・菊地弁護士の見解、特に大渕弁護士の見解は感情論になってしまっており、全然話にならない。だったら、男女が逆転したらどういう判定を出すのかも見てみたいものである。とてもじゃないが、上述の通り、本件では財産分与で差を付けるべき決定的な事由が何処にもあるとは言い難い以上、財産分与は原則通り、折半となるのが常識的解釈であると言えよう。