『ムーンライト』を観ました。

 

主人公シャロンの少年時代から大人になるまでを描いた映画です。

黒人、同性愛者、虐め、、毒親、薬物などの重たいテーマを扱っていますが、

表現はさらりと軽く、美しく繊細な映画でした。

 

人によって好き嫌いが分かれるミニシアター系の映画だと思いますが、

それでもアカデミー賞を受賞した背景には、

トランプ政権への危機感の影響が強いのでしょうね。

 

アメリカは過去300年にわたって人種差別の問題を抱え続けていますね。

黒人への迫害が強まったり弱まったり・・・。

"No to Racism"に全面的に賛成ですが、

「差別はよくない!廃止すべきだ!」と綺麗事を言うだけでは根本的な解決にはならず、

本当に問題を解決するための道のりは長く厳しいように感じます。

 

現在のトランプ政権はLGBTにも非寛容ですね。

私は同性愛者なのでLGBT関連のニュースは気になってしまいます。

日本では同性愛者への差別は少なく、ゲイが生きやすい社会だと思います。

ただ、家父長制が強いので、レズビアンはあまり生きやすくないかもしれません。

ゲイカップルであれば世帯年収も高くなる傾向にあるでしょうけど、

レズカップルは高所得の人は少ないかもしれません。

 

社会的に弱い立場にいる人達の間にも、

やっぱりマジョリティ、マイノリティの問題は残ったままです。

シャロンは、黒人社会で生きながら、オカマだと虐められていました。

社会全体だけでなく、特定のグループでも、差別が起きてしまうのは、

差別が人間本質のどこかに根差しているからでしょうか?

 

毒親や、薬物問題で苦しんでいる人の救済方法もあまりないですね。

私も母子家庭で育ち、母親が境界性人格障害で毒親でしたが、

幼い時は誰も助けてくれないし、ひたすら耐えるしかありませんでした。

薬物問題には明るくありませんが、日本はリハビリ施設があまりない印象です。

 

『ムーンライト』のテーマは考えさせられることも多いですが、

それよりも私が好きなのは、人生観、人物描写の見事さでした。

とてもリアルで「人生も人間もこんなもんだよなぁ」と感じさせる描写でした。

救いがあるわけでもないわけでもなく、

主人公と彼を取り巻く人たちの良い面を美しく描きながら、

悪い面も包み隠さず表現していました。

 

薬の売人だけど人格的にまともな人。

母親として子供を愛しているいるが言動は毒親そのもので子供を苦しめる人、

友人そして恋人として愛情を持っている相手を弱さゆえに虐めてしまう人。

憎んでいる人間が自分の愛する人間を取り込んで自分を裏切るように仕向け、

悔しくて仕方がないけど適切な対処が取れずに、

怒りの出し方を一度誤っただけで人生の歯車が狂って自分の思わぬ方向に進む人。

それでも愛し愛される人を許して、再会する。

 

終わってすぐに感動するというより、ジワジワと来ました。