2022.4.10 佐々木朗希 完全試合

伝説という区分はとても難しい。彼の初登板、
初勝利、はたまたドラフト指名を受けた瞬間から伝説の幕開けという言葉があらゆる場面で彼にも使われた。
では、今日の彼に対してはどうか。
言葉が見つからない、なぜならそれは伝説そのものであるから。
快挙から一日が明けた。
私はその瞬間をこの目で目撃した。
ノーヒッター、完全試合というものはたとえ日を跨いでも

その成し遂げた快挙を、未だに信じられないと考えるのが性である。
ただ、彼の残した後世にも間違いなく語り継がれるなんとも言葉では形容しにくい紛れもない"完全試合"は夢にも覚えず現実だということを我々に知らしめてくれる。これが佐々木朗希というスーパーピッチャーである。
ノーヒッターとの違いを示すには、現存されている記録、達成される頻度との比較で十分であろう。もちろん、ノーヒッターも紛れもなく素晴らしい記録であるが、完全試合は平成において達成されたのは僅か一度。そして令和四年、彼は成し遂げた。記録上では四半世紀に一度起こるか起こらないかの大記録であるが、今後彼がさらにその歴史を作り替えるかもしれない。ここではこの記録の稀有さについて触れたが、それだけでは無い。彼の弱冠、二十歳にして持ち合わせる底知れぬポテンシャルと忘れてはならないのは捕手松川虎生の存在である。彼にもスポットライトを当てたいが、今回は省略させていただく。ご容赦願いたい。
さて、試合を振り返ると、初回打者二人(駿太・バレラ)をそれぞれ内野ゴロに打ち取った。しかし私の中では「いつもの投球とは違うのでは?」と疑問符が浮かんだ。そして3番・吉田正尚を見事三振に斬ってからは五回西村までを圧巻の13者連続奪三振。私の浅はかな心配は杞憂に終わり、彼の投球に観衆はみな魅了されていった。
回は進み六回表、先頭の紅林を本日初めて打球を外野に飛ばす中飛。次いで8番プロ初出場の福永を捕邪飛に打ち取る。そして宜保に対してはファウルで粘られるもフォークを振らせ14個目の奪三振。私はこの六回の投球が記録への梯子となったのではないかと個人的に思う。
七回、先頭後藤に対して3ボール。4球目、直球でストライクを取り5球目、打球は浅いライトフライ。八回は再びギアが上がったように160km/h台を連発。ここにきて圧巻の3者連続三振。
回はいよいよ九回。先頭の代打中川圭に対してはストレートを2球続け追い込むと、最後のボールはフォーク。全ての観客が固唾を飲んで見守った守備。見事三ゴロに打ち取りワンアウト。続いても代打山足に対しては初球のストレートで押し込み遊ゴロ。ショート藤岡の守りも皆が代弁できるような心境であっただろう。僅か4球で打者二人を打ち取り打席には昨季、本塁打王の杉本。
初球、146km/hのフォークでバットは完全に空を切る。この初球の入りで勝負は決まった。2球目、ストライクゾーンに決まるフォークで杉本を追い込む。3球目、最後ばかりはストレートとの様相を覆す3球続けたフォーク。この日105球目、佐々木の渾身の1球は松川のミットに吸い込まれ彼は歓喜の渦の中心で見事に舞った。
段々と期待感が高まっていった全観衆22,431人の期待を一身に受けて刻み込んだ、歴史の一ページであった。
彼・ファン・球団に関わる全ての方と共に戦った、壮大なあの景色と空間を忘れることはない。