刑務所は満期出所と仮出所がある。満期出所とは文字通り受刑期間が終了するまで出られないのである。受刑態度が良くて身元引受人がいれば仮釈放と言う制度もあるが、身元引受人がいない自分は必然的に満期となった。
受刑者の中で身元引受人が居ないなんてのは実は普通なのだ。むしろ刑務所に入ってまで差し入れや手紙をくれる人がいるというコトは非常に恵まれた受刑者だ。自分なんかは親も死んでるし、親戚なんかは手紙すらくれない。まさか友人なんかには手紙は出せない。いろんな意味で。
そんな身元引受人が居ない人の為にあるのが保護会というボランティア的な存在の更正施設。所が、入所できる人数に限りがあるので審査が厳しい。なにしろ殆どの受刑者は仮釈を希望する(当然か)ので保護会に申し込む。が、面接の結果落ちてしまうのだ。と、なればもう満期しかない。
満期で出所するとどうなるか?
答えは簡単。その瞬間から住むところも食事も着る物も全て自分で用意しなければならない。いや、普通はそうなのだが、受刑者の場合は出所しても行く所がないのだ。(ある人もいるが)
自分は当然どこにも行くあてはなかった。
住むところも、仕事も無い。身分証明すら無いのでプリペイドケータイすら買えない。所持金は、刑務所で働いた金と親戚が送ってくれた金がある。親戚が送ってくれたのは差し入れではない。もう縁を切るから一切連絡するな、名前も出すな、という意味。つまり手切れ金って訳だ。
確かに部屋を借りるだけの金はある。が、身分証明が無い。更に自分には訳があって住民票が取れないのだ。つまり、雨露をしのぐにはホテルや旅館に泊まらなければならない。
刑務所の中で同じ部屋だった人から聞いた話では、大阪の西成のドヤには1泊1300円で泊まれる簡易宿泊所と言うのがあるらしい、と何度も聞いていた。安いところは800円からあるらしいが、治安の面で不安なので初心者にはお勧めできないとも聞いていた。先に出所した受刑者はやはり住むところが無いのでとりあえずドヤに行くと言っていた。そんな訳で自分も明日、大阪を目指す。本日は出所祝い(一人で)も兼ねてビジネスホテルに泊まる。久しぶりの監視の無いトイレと時間無制限の風呂に入れるのが嬉しい。ただ、お先は真っ暗であるが・・・。
