花形装飾活字を愛でる -2ページ目

花形装飾活字を愛でる その72

紹介しておりますエンスヘデ活字シリーズ60の花形装飾活字のアウトライン化したデータ差し上げます。
詳しくは
http://www.fengfeeldesign.org/ をご覧ください。
お待ちしております。

花形装飾活字において正しき版とは。
何を正しきとするかという表現が近いかもしれません。
ロケーションや可能性も含めて、
選択肢を自ら自ずと見出し、
その正解が正しき版であるとするべきです。
この場合の正しさとは可能性の一つを指します。
いろんな要素や目的を踏まえて導き出した正解の1つが、
アウトライン化というトレース作業にあって、
花形装飾活字からの可能性の現在における着地点という設定にもあって、
前提としての正しきではなく、
どの地点から汲み取るか選定した正しさの追求。
その正解は無数にあって、
そこからの1つが今回という訳です。

何よりも汲み取らなければいけないのは、
今回の場合というのはその汎用性であると思います。
現代の技術に沿わした汎用性はもちろんの事、
当時の花形装飾活字の特性を生かした汎用性の2つを考慮すべきです。
それらをキープしつつ、
その完成された美術的要素を生かす方法も配慮しなくてはいけません。

重要な事はシュミレートする際に、
重大なミスに気付くかどうかにあります。
ミスを修正する勇気こそが必要です。
また、
修正出来るタイミングの考慮を作業ベース以前にしておく事も、
工夫の1つやと思います。
最初の考えの修正は容易ではなく、
それが作業を進めれば進める程に実行する勇気の必要が出てきますが、
その完成度をあげるという意味では、
かならず修正はすべきです。

版の完成度とは、
この場合には複数の意味合いがあります。
個々のオブジェクトとしての完成度、
全体を見通した完成度、
最後に実際に組んだ際に発生する完成度です。
最後が一番重要です。
最初の2つも重要なのですが、
実際に組んだ時に違和感が発生するなんて時は、
「失敗」なので諦めて修正する事になります。
そうしていいところの着地点を見つける頃には、
げんなりして、
花形装飾活字の事なんて大嫌いになって、
思わずキー!!ってなって投げ出しそうになりますが、
そこをグッと堪える事で完成に至りますし、
気付けば限定的ではありますが、
花形装飾活字について言えば、
ほとんどマスターしてるってのなもんなのでした。

花形装飾活字を愛でる その71

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前回の続きからです。
印面を「彫る」という概念でシュミレートし、
それをアウトラインというシステムでどう再現するかについて前回書きました。
今回は、
それに基づいてどんな懐の元で実現したかを書いていきます。
ただし、
あくまで懐の話なので、
利用を制限するものではない事を予め伝えておきます。

印面を彫るという事は、
基本でありベーシックである底を、
物質に委ねるという事になります。
理論に委ねるのとの大きな違いは、
正しさの差異とでもいいましょうか。
両方とも間違っていないのです。
例えば、
当時は鉛だったでしょうか銀だったでしょうか、
おそらく銀だったでしょう。
デザインを設計し、
銀に対して彫る、または流し込むという概念を与える事で、
物質化し、
それを利用する事で活版は成り立ちます。
その場合、
印刷された紙面は、
彫られた版に依存する事になります。
その概念を採用するのが物質に委ねるという事なのでしょう。
理論に委ねるというのは、
設計部分のみを汲み取り、
まっさら綺麗な失敗の無い版をシュミレートするといったものです。
考え方としては他にもありそうですが、
大きく分けてこの2つになります。
そして今回。
今回のメインにドッシリ置いたのが物質に委ねるという事でした。
が、
当時の銀版や雛形を再現するのでしたら、
コンピュータではなく手彫りにこだわればいいのです。
それは今回の場合は違うのでしょう。
いかにコンピュータでの利用を促すかがテーマでもありますし、
その可能性の大きさを感じたからこそ、
この作業の始まりがある訳です。
出来れば到着点、着地点としては、
考えられる限りのものにするべきですし、
利用の幅を最大限に引き出せるような在り方が望ましいと考えました。
版の正しさよりも利用のロケーションや方法を選ばないものを目指しました。
単純に当時の銀版や雛形を手に入れるのは無理です。
かといって正確な印刷見本なんてそうそう出会えるもんじゃござんせん。
その中で発想としては、
紙面に刷られるインクの部分が全てであり、
そもそもの印面、もしくは彫られた印面もまたその要素であると考えたのです。
設計理論に沿った正しき版は正しき版として素晴らしいですが、
なんといっても、
今回の場合というのは、
正しさよりも利用の際のその再現性を目指す事にしました。
要素として印面もまた花形装飾活字の美しさの形成する1つでありますし、
印面をシュミレートする事によって、
そこから正しき設計への修正もまた可能であると気付いた事にあります。
つまり、
正しき設計はどうなのかというのは続く。

花形装飾活字を愛でる その70



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花形装飾活字をアウトライン化する、
トレースするという事について。
本来は、版を彫る、または雛形に流し込む(元は彫るか…)事で作成されるものを、
コンピュータ、
今回は限定的にアドビのイラストレーターというソフトを使って、
ベジェ曲線という当時は学生さんが考えた理論を使ってトレースを行いました。
現在の最新版のソフトにおいては、
画像のサンプルさえあれば、
機能としてのアウトライン化が可能であり、
トレース作業は自動的に、
完璧とまではいかないにしろ、
一時期的、
急場凌ぎには充分なクオリティを得る事が出来ます。
ただし画像のサンプルへの依存が前提となります。
その中で今回の場合は、
機能としてのアウトライン化は行わず、
あくまで1ポイントずつを策定し、
画像サンプルについても、
それを再現ではなく、
あくまで参考として扱いました。
実質的な期間としては8ヶ月かかりました。
まず、
これついては技術であって、
賛否両論あると思いますが、
それはひとまず置いといて、
今回行った作業としての結果を書いていきます。

サンプルについて。
サンプルは、
アイデア325号付録に収められた印字を使用しました。
サンプルとしては、
おそらく原寸ではなく、
サイズについても充分な大きさと質であったとは言い難いものでしたが、
個人が手に入れれる資料としては唯一のものであると感じました。
これについては、
今後有力な資料が見つかり次第それに伴った修正を加えていければと思います。

トレースの方向性について、
上記で記したように、
画像のサンプルとしては不十分でしたし、
ましてや、その雛形を手に入れるのは至難の業(というか無理)なのでしょう。
ですので、
作業としてはまず、
線を知らなければなりません。
版の欠けている部分、
左右対称である場合にはその平均を(決して同じではない)、
また、印圧による擦れや滲みについても考えなければならないと思います。
その元の印面をいかに想像しうるかが、
トレースの完成度を左右します。
そうしていく内に過去の失敗もまた露呈します。
それが意図であったかは定かではありませんが、
明らかな失敗はこちらでこっそり直してあげる事も可能です。
そしてトレースの方向性です。
いかにその線を紡いだとしても、
その想像しうる印面をそのままアウトライン化するのか、
理論として彫る上でのロスを無くすのか、
それか独自の視点で丁度良い着地点を見つけるか…。
これについては、
花形装飾活字をトレースする上で一番重要であり、
その作業者にとっての分かれ道のように思います。
今回について選択した着地点は、
いかに想像に徹した印面を生かすかということです。
花形装飾活字の美しさはその印面にこそあるというのは、
事前にその印面のロスを無くす方法でトレースをした際に気付いた点でもあり、
同時に印面そのもののロスは全てではないが意図されたものであったと、
気付いた事が大きいように思います。
これついては以前にどこかで書いたのでどこかに載ってるので、
興味がありましたら探してみてください。
という事で、
印面に配慮する事を着地点にしたのですが、
これついても、
実は意図があって、
最終の到着地点はやはり印刷にあります。
活版かオフセット、個人レベルでしたらインクジェットかレーザーでしょうか。
もしくは印画紙にも有りえるかもしれない。
これは全て三者三様ですが、
紙にインクが乗ります。
それがアナログかデジタルかは分かりませんが、
その最終である紙にインクが乗る瞬間は物理的であり、
技術的な差異はあるものの、
一定のランダム性、
印圧による擦れや滲みに似た現象が、
同じように起こりうるものであると考えているのです。
元はデジタルなデータであっても変わらないのです。
その発想を元とすれば、
トレースの方向性はおのず決まってきます。
それは、
「版」を作るという事を、
コンピュータ上で行うという事です。
これも以前に書きましたが、
モニターを介した紙面を完成とするのか、
紙にインクが乗った瞬間を完成とするのかでは、
大きなイマジネーションの違いが生じるという結論からのものです。
つまり、
印刷所にはグラフィックデザイナー不用論も、
ここからのものなのですが、
それは置いといて、
コンピュータは極上なシュミレート機です。
「再現」を行う上では天才的な能力を発揮します。
そのせいで、
コンピュータ上で行われている作業が現実であると、
錯覚してしまうのもまた事実であり、
実際に現在に使われているデザインソフトの多くは、
それを利用した仕組みになっているのは、
異論の余地のない現実であると言えるでしょう。
グラフィックデザインにて、
コンピュータを扱う上で何をシュミレートするか、
というのは大きな課題です。
その中で今回は、
花形装飾活字という選択肢の元、
その印面、
すなわち「版」をシュミレートする事にしたのです。

作業について。
作業は単純です。
トレースの方向性として「版」をシュミレートする事は決まっていましたから、
予めの解釈の中で想像しうる出来るだけの、
鑑識と知識を身体に染み込ませて、
後は「彫る」作業をコンピュータ上で行えばいいのです。
つまり8ヶ月かかった理由がここにあります。
本来、
線をなぞるだけなら2ヶ月、もしかしたら1ヶ月で終えれてたのでしょうが、
「彫る」訳ですから、
ポイント数にしてエゲツナイ数字になったのは、
思い出しただけで吐き気がします。

続く。