「神」についてわたしも　　2023/12/15 19:10

宇都宮正三さんの１日前の投稿を読んでまた神について考えた。下に宇都宮さんが引用した半田公宣氏の文章を掲げておく。

引用　半田広宣　＜永遠から永遠までの距離＞

人間と神は創造されたものと創造したものという関係のなかでは、互いに自己原因を映し合っている。つまり神を創造したのは人間だということ。この視点を忘れてはいけない。

そして、ここにいう人間と神との関係とは、自己と他者との存在論的関係のことである。それゆえ、自己と他者の間には永遠という距離があることを意識することが重要だ。

私たちの生の目的とは、たとえ１ｍｍでもいいから、この距離を埋めていくことのなかにある。（以上）

どこに刺激されたのかというと

「人間と神との関係とは、自己と他者との存在論的関係のことである。それゆえ、自己と他者の間には永遠という距離があることを意識することが重要だ」

この一文はレトリックである。すり替えである。「存在論的関係」という哲学的用語を用いて「永遠の距離」と論じているところが、まさにレトリックであるというものである。

いつかわたしは、「キリスト教の最大の欠陥は『神』を拵えたことにある」と書いた。あれはキリスト教の「神」について論じていた時であったが、宗教論争的にいうと、わたしはスピノザのいう「神」もまた失敗していると思う。その属性を「絶対性」とか「永遠性」ということばで表現しているから。

ところで、絵画史の中で「神」を描いた作品にはどんなものがあるのだろうかと探してみた。まずだれもが思い描くのがミケランジェロが描いた「アダムの創造」図であろうと思う。神がアダムに指を通して生命を吹き込もうとしている絵である。

これは、バァチカンのサスティーナ礼拝堂の天井画として描かれたものである。できることなら一度見てみたいものである。ラファエロの「ヴィーナスの誕生」もそうであろう。わたしは本物を見たことがあるのだが、アングルの「泉」もそうであろうと思う。

これが、文学にあっては揚げ切れないほどの作品がキリスト教の啓示を受け、示唆され、あるいは反発して登場人物に「神」を語らせている。

おびただしい絵画や文芸の分野で、我々人間はキリスト教の影響というか、価値観の浸潤により多くの作品を産みだしてきた。しかし同時に、おびただしいほどの人間を虐待し、殺戮を重ねてきた。その罪科は語り尽くせないほどである。

コンピュータを産みだし、素粒子の仕組みや宇宙の成り立ちを知り得ることができるまでになったが、その点では「アダムとイヴ」の時代よりはるかに進化してきたと言えるが、その間における悪行の数々を思うとき、総体的にみると、われわれは「神」に一歩たりとも近づけていないと断言していいと思う。

「日めくり３分間動画」から