瑞穂
『あなたは私に優しすぎる』
その言葉を残して瑞穂はオレの前から消えたんだ。
その言葉の意味をずっと探している。
ずっと。
ずっと。
バラバラのパズルを1つ1つ組み合わせる様にゆっくりと慎重に、その言葉の意味を探していく。
瑞穂と出会えたのは16歳の頃だった。
屈託のない笑顔でちょっかいを出してくる彼女にいつしか心奪われていた。
当時彼女は3つ年上の先輩と付き合っていたんだ、到底オレなんか相手にされないと思っていた。
しかしながら日に日に増していく彼女への想い、いけないとは感じながらも彼女にアプローチをする毎日が続いた。
そんな時、友人の両親が旅行で留守にするというので、その友人宅で鍋パーティーをしようという話になった。
行ってみると、数名の友人と彼女が居た。
しかし隣には3つ年上の彼も居た。
自分の気持ちを押し殺し、楽しげに振る舞った。
当時大人気だったドラマ『未成年』が始まると皆、テレビの前に集まり画面に集中した。
オレの隣には彼女、彼女の隣には3つ年上の彼。
我ながらとんでもない場所を陣取ってしまったわけだ。
隣に座る彼女に意識の全てを持っていかれ、画面の中のいしだ壱成に感情移入出来ぬまま時間だけが過ぎていく。
画面の中がクライマックスになろうとしたその時だった、
彼女はさりげなく手元にあったクッションをオレとの間に置き、そのクッションの下でオレの手を握ってくれたんだ。
彼女は画面に目を向けながら誰にも気づかれずに手を強く握ってくれた。
オレも強く握り返した。
彼女への想いは届いていたのだと確信したオレは後日、3つ年上の彼に彼女と別れてほしいとお願いした。
つーか懇願した



つーか土下座したし


つーか恐かったから涙目だった



だって錦糸町のチーマーなんだもん


まぁ、色々ともめたが結果として念願の彼女と付き合う事ができた。
彼女と過ごす毎日はオレに鮮やかな色をくれた。
彼女は猫が好きだった。
彼女は字が恐ろしくアーティスティックだった。
そしてなによりいつも、いい匂いがしていたんだ。
そんな彼女の口から冒頭の言葉が発せられたのは、付き合ってから僅か3ヶ月後の時だった。
彼女の言葉の意味を理解しようと何日も眠れぬ夜を過ごした。
後日、共通の友人から
『なんかやっぱ車持ってる彼がいいらしいよ』とあっさり言われた。
そっかぁ~車かぁ~
そりゃしょーがねーよなぁ~
車って便利だもんね~
あ~理由が分かってスッキリしたよ~♪
その夜、オレは初めて憎悪という意味を知ったよ。
それからかれこれ15年が経過した今、オレは小さいながらお店を構え、お客様に支えられながら、なんとか楽しく息が吸えている。
最近、調子に乗って新しくスタッフを増やした。
派手さはないが笑顔のステキなナイスガイだ。
ん?
ん?
ちょいまて


おい


おまえ…
おまえ…
瑞穂の匂いがする…
気がついた時には笑顔の素敵なナイスガイに抱きついていた。
そんなわけでナイスガイことオックンに教えてもらったシャンプー、agree いうらしいが瑞穂シャンプーと言い換えよう

全シリーズ買い揃えちゃった


さあ、みんなで瑞穂シャンプー使いましょう


そしてクッションの下で強く手を握ってくれ~
って意味

2011/03/24
今しがた視界が暗闇に覆われた。
計画停電というやつだ。
今日は18時半~22時までらしい。
闇に取り込まれそうになりながら、なぜか落ち着く心地よさを感じる。
冷蔵庫のウィーンも消えた。
エアコンのウィーンも消えた。
耳鳴りがする。
完全なる静寂。
オナラをしてみた。
クリアな音がした。
連日の震災報道、日増しに増える被害者の数に自分の感覚が麻痺していくのが怖い。
同じCMを見すぎて完コピできる自分が怖い。
微力だが、今日、店に募金箱を設置した。
お客さんがお釣りを募金箱に入れていた。
なんか、
すげー、
グッときた。
テレビじゃ連日、スポーツ選手だのミュージシャンだの名の知れた連中が募金箱持って大声張り上げて募金を募っているが、正直なんか偽善を感じていたが、実際自分の店に募金箱を設置してみてなんか分かった。
あれね、募金箱持つ側になると分かる。
上手く言えないけど、なんか、世の中を斜めから見てたものが真っ直ぐ見れるようになる。
明日からオレも自分の生活に支障の出ない程度に募金しよう。
つーか、政治家とかもっと義援金出せよ。
鳩山とか母ちゃんに頼んで10億くらい出せよ。
小沢とか全然見ねーけど、どこいったんだよ。
こーいう時にしゃしゃり出てドーンと出せよ。
ラミレス義援金100万ドルって、すげーけど日本円で出せよ。
円高気にするなよ。
持ってる
『持ってる』
この言葉が流行り始めたのが一体いつからなのかは正確には記憶していないが、楽天の斎藤佑樹が『持ってる』発言する以前にサッカーの本田が『持ってる』発言していたた割に、なんか本田が言うとイラっとするとの理由で斎藤佑樹の物になっている『持ってる』だが、やはり一番『持ってる』のはきっと私なのだと思うのだ。
記憶にも新しい、アゴに女性器が設置された年末の我がバイク事故。
まだ舌の根も乾ききらない今日、『持ってる』出来事が舞い降りました。
いつもの様にダラダラと目覚めた私はコーヒーに大量の砂糖と賞味期限切れのミルクを入れ、コタツに突っ伏しながらそれを飲み、タバコを吸いながら器用にコタツの中で着替えを済まし、いつもの様に鍵もかけず家を出て、愛車にまたがり颯爽と春の気配のする空気の中、太陽は神だと思いながらいつものファミリーマートに愛車を停め、ペヤングと辛子明太子のオニギリとフャミチキとブルーマウンテンを手にレジに向かい、やけにいい香りのする年増の店員に朝の挨拶をしようとした刹那、表からギギギギ-ギギ-ーと裸足のゲンの様な音に驚き慌てて年増の店員と表に飛び出してみると、
大型のトラックと乗用車の接触事故やんけ~

さらによ-く見ると
そのトラックと乗用車の間に我が愛車が挟まってるやんけ~



つーか
超ウケるんですけど~
写真は救助された時の愛車ね。
ほらね、
『持ってる』でしょ!?
これさ、あと数秒ずれてたらまた女性器増えてたからね

運転してた爺さんには悪いが、しばらく優雅にタクシー通勤させてもらおう。ピカピカの新車に交換させて頂いて、ついでにヘルメットも変えさせてもらって、ついでにサーフボードも買い替えたかったし、コーヒーメーカーも欲しいし、カリフォルニアにも旅行行きたかったから爺さんにお願いしよう。
あとついでに切れ痔も治してもらおう。
ああ、やっぱり『持ってる』なぁオレ。





