『運命じゃない人』
2005年、日本
監督・脚本/内田けんじ
出演/中村靖日、霧島れいか、山中聡、山下規介、板谷由夏ほか
神田「いいか、お前。電話番号をなめんなよ。この11桁の数字を知っているか、知ってないかだけが、赤の他人とそうじゃない人を分けてるんだからな。お前はタイミングがないっていう理由だけで、すべての可能性を捨てちゃったんだからな。もっと落ち込みなさいよ」
神田「お前は、いまだに人生に期待しちゃってるんだよ。これからも普通に生活していれば、いつか誰かと出会うだろう、素敵な女の子が現れるんじゃないかな、まさかずーっと1人ってことはないだろうなーってな。漠然と。高校生みたいに。いいか。はっきり言っておくぞ。30過ぎたら、もう運命の出会いとか、自然な出会いとか、友達から始まって徐々に惹かれ合ってラブラブとか、一切ないからな。もうクラス替えとか文化祭とかないんだよ。自分でないとかしないと、ずーっとひとりぼっちだぞ。絶対に、ずーっと。危機感を持ちなさいよ、危機感を」
宮田「だからって、ナンパなんてしたことがないでしょうが。ああいうのは、なんていうか、才能とか技術とかいるんだよ」
神田「いらないよ。人と出会うのに、技術なんているかよ」
宮田「電話番号、教えて。頼む。もう二度と、一生会えなくなっちゃうから。電話番号、教えてください。せっかく会えたんだからさ、さっき会ったばっかりだけど、あなたのこと何にも知らないけど、また会いたいんです。気味悪いですか?」
真紀「・・・」
運転手「電話番号ぐらい、教えてやんなよ」
(宮田が運転手に目で会釈)
神田「あいつは中学の時からの親友だ」
あゆみ「それだけのことで、あたしのことあんなに調べたの? 人探すのってお金かかるんでしょ?」
神田「あんたには分かんないよ」
あゆみ「わかるわよ。じゃあなんで警察に行かなかったの?」
神田「だから、大事にしたら宮田にばれちゃうでしょうが、あんたのことが」
あゆみ「違うでしょ。いつかあたしを脅して、お金取ろうって思ってたんでしょ」
神田「悲しいな。あんたみたいな女の考えることは」
あゆみ「人間の考えることは。別に隠すことないじゃない。あたしがあなたでもそうするわよ」
神田「俺があんただったら、自殺してるよ」
あゆみ「嫌いじゃないんだけどな。あんたみたいな人。じゃね」
---
5人の登場人物それぞれの視点で描かれた5つの断片が、
最後にひとつにつながるタイムスパイラル・ストーリー。
“めちゃくちゃいい人”宮田の前に現れたのは、
婚約を破棄されて家を出てきたばかりの女性・真紀。
ひょんな偶然からレストランで出会い、
宮田は泊まるところのない彼女を自宅に連れてきますが、
実は彼の知らないところで、ほかの登場人物たちが、
この日、自宅のドアを何度か開けているのでした。
ヤクザとその女、探偵、そして消えた2000万円・・・。
さまざまな要素がつながり、
一つずつパズルのピースがはまっていきます。
出だしはほのぼのB級恋愛映画のようで、
「なんじゃこりゃ?」と首を傾げてしまいましたが、
いつの間にかどんどん引き込まれて、
気付けばあっと言う間に終幕を迎えていました。
テンポもよくて小気味よく、キャラクターもそれぞれ立っていて、
いや~、本当に楽しかったな。
人生って、表面だけ見ているんじゃ何もわからない。
そして、正直で、人を信じられる人が最後には幸せになれる、
ということです。
『ブロークン・フラワーズ』
2005年、アメリカ
監督・脚本/ジム・ジャームッシュ
出演/ビル・マーレイ、ジェフリー・ライト、シャロン・ストーンほか
少年「それで、サンドイッチをおごる男として、哲学的な助言みたいなものはある? 旅する男に対して」
ドン「私から?」
少年「ああ」
ドン「そうだな・・・。過去はもう終わってしまった。未来はまだこれからどうにでもなる。だから、大事なのはつまり、現在だ」
少年「・・・仏教徒?」
ドン「いや、君は?」
少年「分からない」
---
ドン・ジョンストンは隠居中の初老の独身男性。
ある日、昔の恋人から匿名の手紙が届き、
彼女との間に19歳になる息子がいるという事実を知らされます。
その手紙を出したのは誰なのか、息子は本当に存在するのか。
それを確かめるため、ドンは過去の恋人4人を訪ねる旅に出ます。
実は、この構想、かつて私も頭の中で練ったことがあるんです。
ある日電車でぼうっと考え事をしていたとき、
「そういえば、中学生や高校生で恋していたあの子は、
今頃いったいどこで何をやっているのかなぁ」と、
ふと思ったのがきっかけ。
彼らを1人ずつ訪ねていくと、相当面白いに違いない!
でも、結局そんなヒマも情熱もなく、放置したままに。
この映画をみて、そのことをようやく思い出しました。
私の場合は、「単にのぞきみたい!」という感じで、
直接本人に会わなくても別にいいと思っていたのですが、
この映画の主人公、ドンは彼女たちに会うたびに過去を振り返り、
ちょっと後悔したり、反対にほっと安堵したり。
昔の恋人との間には、共犯みたいな、妙な空気感があるもの。
その微妙な心の動きが何とも切なくて、愛おしい。
「もしや、あれが俺の息子では?」と淡い期待と不安を抱えながら、
偶然出会った少年に“人生のアドバイス”を伝えるシーンなんて、
飄々とした笑いを含んだやり取りに、
むしろなんだかじーんと胸が熱くなってしまいました。
人間ってつくづく可愛い生き物だと思います。
2005年、アメリカ
監督・脚本/ジム・ジャームッシュ
出演/ビル・マーレイ、ジェフリー・ライト、シャロン・ストーンほか
少年「それで、サンドイッチをおごる男として、哲学的な助言みたいなものはある? 旅する男に対して」
ドン「私から?」
少年「ああ」
ドン「そうだな・・・。過去はもう終わってしまった。未来はまだこれからどうにでもなる。だから、大事なのはつまり、現在だ」
少年「・・・仏教徒?」
ドン「いや、君は?」
少年「分からない」
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ドン・ジョンストンは隠居中の初老の独身男性。
ある日、昔の恋人から匿名の手紙が届き、
彼女との間に19歳になる息子がいるという事実を知らされます。
その手紙を出したのは誰なのか、息子は本当に存在するのか。
それを確かめるため、ドンは過去の恋人4人を訪ねる旅に出ます。
実は、この構想、かつて私も頭の中で練ったことがあるんです。
ある日電車でぼうっと考え事をしていたとき、
「そういえば、中学生や高校生で恋していたあの子は、
今頃いったいどこで何をやっているのかなぁ」と、
ふと思ったのがきっかけ。
彼らを1人ずつ訪ねていくと、相当面白いに違いない!
でも、結局そんなヒマも情熱もなく、放置したままに。
この映画をみて、そのことをようやく思い出しました。
私の場合は、「単にのぞきみたい!」という感じで、
直接本人に会わなくても別にいいと思っていたのですが、
この映画の主人公、ドンは彼女たちに会うたびに過去を振り返り、
ちょっと後悔したり、反対にほっと安堵したり。
昔の恋人との間には、共犯みたいな、妙な空気感があるもの。
その微妙な心の動きが何とも切なくて、愛おしい。
「もしや、あれが俺の息子では?」と淡い期待と不安を抱えながら、
偶然出会った少年に“人生のアドバイス”を伝えるシーンなんて、
飄々とした笑いを含んだやり取りに、
むしろなんだかじーんと胸が熱くなってしまいました。
人間ってつくづく可愛い生き物だと思います。
『めがね』
2006年、日本
監督・脚本/荻上直子
出演/小林聡美、市川実日子、加瀬亮、光石研、もたいまさこほか
---
南の島の宿「ハマダ」にやってきたタエコは、
何もしないでただぶらぶらと、
“たそがれ”ながら毎日を過ごす島の人たちと出会います。
「ハマダ」の主人のユウジ、
年に一時期だけかき氷を売りにやってくるサクラ、
ひまそうな高校教師ハルナなど。
タエコを追いかけてやってきたヨモギも、
島の人たちと同じようにだらだらと気ままに過ごしていますが、
タエコ自身は、なかなか島のペースに馴染めない。
とにかく、いつまでたっても“たそがれ”るのが苦手なのです。
でも、いつしか不思議な人たちと触れ合うにつれ、
のんびりと自分のペースで生きられるように。
のんびり自分のペースで生きることを思い出そうよ、という以外、
これといって壮大なテーマはなさそうで、
ひたすらだらり~ん、とした映画。
私としては、前作『かもめ食堂』と
最新作『プール』のほうが好きですかねぇ。
美味しそうな料理も、それほどフィーチャーされてないしね~。
2006年、日本
監督・脚本/荻上直子
出演/小林聡美、市川実日子、加瀬亮、光石研、もたいまさこほか
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南の島の宿「ハマダ」にやってきたタエコは、
何もしないでただぶらぶらと、
“たそがれ”ながら毎日を過ごす島の人たちと出会います。
「ハマダ」の主人のユウジ、
年に一時期だけかき氷を売りにやってくるサクラ、
ひまそうな高校教師ハルナなど。
タエコを追いかけてやってきたヨモギも、
島の人たちと同じようにだらだらと気ままに過ごしていますが、
タエコ自身は、なかなか島のペースに馴染めない。
とにかく、いつまでたっても“たそがれ”るのが苦手なのです。
でも、いつしか不思議な人たちと触れ合うにつれ、
のんびりと自分のペースで生きられるように。
のんびり自分のペースで生きることを思い出そうよ、という以外、
これといって壮大なテーマはなさそうで、
ひたすらだらり~ん、とした映画。
私としては、前作『かもめ食堂』と
最新作『プール』のほうが好きですかねぇ。
美味しそうな料理も、それほどフィーチャーされてないしね~。
