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わたしがマンションを買った理由③

衣食足りて礼節を知る
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正直に言いましょう。
貧乏が楽しかったのは、最初の数カ月だけでした。
世の中はバブル景気に急速に傾いて行く頃でした。
友人たちは次々と結婚し、2~3LDKの真新しいマンションに
立派な家具や電化製品を揃えて住みはじめていました。
私はといえば、6畳と3畳。共同トイレ、共同炊事場。
貯金もないまま、上京したので、
六万円の小さい冷蔵庫をひとつ買うのも、ローンでした。

友人たちと私との生活の差は歴然としていました。
年に何回も海外旅行に行く友人や、ブランドを次々買う友人たちを尻目に、
意地を張っているのにも限界がありました。
学生時代の仲間の飲み会に行っても、男友達は、皆、
パリッとしたスーツを着こなし、会社でも一人前になりつつありました。
女のコの友人は、なぜかみんな結婚が早く、すでに子供がいて
正しい生活を送っているように見えます。

私ったら、何をしているんだろう。
そんな想いにとらわれ、急に不安になりました。
不安になると、人の目が気になるんでしょうか。
あまり仲のいい友人ではありませんでしたが、
私の足の先から頭の先まで視線を走らせたあと、呆れるように、
隣にいた友人に目配せをされた時は、かなりショックでした。
とても腹が立ち、以後、絶交してしまいましたが、
後から考えると、自分の貧しい生活にかなり気後れしていて、
友人のちょっとした態度にまで、
疑心暗鬼に満ちた目を向けていたようにも思います。

その時、思い知りました。
衣食足りて礼節を知るだな、と。
ちゃんと働かないと、私はどんどんヒガミっぽい人になってしまう、と。

上京から半年後、私は、学生時代にお世話になっていた編集部の人に
連絡を取り、もう一度、記者として働かせてもらえないかと、お願いしていました。
それまで、なぜ、前の仕事に戻らなかったかといえば、
四年もブランクがあり、また以前のようにやっていけるのか、
自信がもてなかったからです。
もう一度、肩肘張って頑張らなければならないことが、
億劫だったのかもしれません。
逃げていたんでしょう。

そんな時、結婚を考える人もいるでしょうが、
その頃の私は、さんざん仕事をすることから逃げていたくせに
結婚は逃げのような気がして、潔くない感じを持っていました。
二十代後半の、女性としていい時期にあったのか、
学生時代からの男友達が、
そろそろ皆、結婚を考える年齢になっていたからなのか
当時は、これでもけっこうモテたんです。
あちこちからお誘いの声もかかりました。
しかも、高校、大学の友人は皆そろって一流会社に入り
エリート街道を走っていました。
結婚したい女性が望むような男性が周りに大勢いたんです。
あの時、結婚を真面目に考えていれば、
今の私は、どうなっていただろうと思うこともあります。
逃した魚は、大きかったんだろうか、と。
でも、考えなかったんですよね、あのときは全然。
結婚した自分を想像することができませんでした。
子供のいる自分を想像すると、どこか気持ち悪い感じさえしていたのです。

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