私が水商売の世界に入るとき、心にひとつだけ決めたことがあります。
それは【お金が縦に立つこと】。
初めて100万円をいただいた日。封筒を開けながら、ふと思いました。
「これ、立つかな。」
実際に立ててみたら、倒れそうで倒れなかった。あの瞬間の感覚は、今でも忘れません。嬉しさよりも先に、「ここからが本番だ」という静かな緊張が込み上げました。
最初は右も左も分からない。ただ笑っていればいい仕事ではないと、すぐに気づきました。お客様のグラスの減り方、会話の間、視線の動き。ホスピタリティとは何か、気が利くとはどういうことか。失敗し、落ち込み、帰り道に何度も反省しました。
それでも次の日には出勤する。昨日よりも一歩だけ前に出る。
テーブルを回るのは当たり前。その中で「また会いたい」と思っていただけるかどうかが勝負でした。
少しずつ結果が出始めたころ、気づいたのです。
いただく金額が変わると、お客様の求める質も変わる。時間の使い方、言葉の重み、約束の意味。お客様の“格”が変わるのではなく、自分の覚悟が試されるステージが変わるのだと。
今あるものは、特別な才能ではありません。
派手さもありません。ただ、誰も見ていないところで積み重ねてきた小さな努力。その一つ一つが、血の滲むような思いとともに私を鍛えてくれました。
振り返れば、あの100万円が立つかどうか試していた私は、まだ覚悟を測っていたのかもしれません。今はもう分かります。お金が縦に立つかどうかではなく、自分がどれだけ真っ直ぐ立てるかがすべてなのだと。
色々ありました。でも、楽しくて、嬉しい。
成長できる場所に身を置けていること自体が、何よりの幸せです。
今日もまた、私は背筋を伸ばして立ちます。
次に立つのは、お金ではなく、私自身だから。
