家業を継ぐということ。社長になってから、ようやく分かったこと

「家族企業を継ぐなんて、恵まれているよね」

そう言われることがあります。
確かに、ゼロからのスタートではありません。
会社があり、名前があり、歴史があります。

でも、実際にその立場に立ってみて初めて分かったことがあります。
それは、継ぐということは、楽になることではないということです。

名前ではなく、「覚悟」を引き継ぐ

私は幼い頃から、
会社という存在がすぐそばにありました。

家族が仕事の話をしている姿、
責任ある決断に悩む背中、
そして、決して簡単には「諦めない」姿勢。

今思えば、
家業として引き継いだのは、
事業そのものよりも、
「逃げない覚悟」だったのかもしれません。

社長になった今でも、
判断に迷う夜はあります。
正解が分からないまま、
決断しなければならないこともあります。

その重さは、
この立場に立った人にしか分からないものだと思います。

豊田章男さんの言葉に、何度も救われた

家族企業の継承者として、
強く共感した経営者がいます。

トヨタ自動車の豊田章男さんです。

創業家出身であるがゆえの期待と、
同時に向けられる厳しい視線。
その中で彼が大切にしてきたのは、
肩書きではなく、現場と向き合う姿勢でした。

彼の言葉の中で、特に心に残っているものがあります。

「継承とは、地位を受け取ることではなく、責任を引き受けることだ」

この言葉を理解するまで、
私はかなり時間がかかりました。

継承者は、簡単に降りられない

起業家であれば、
失敗したら別の道を選ぶこともできます。

でも、家業を継ぐ立場では、
簡単に「やめる」という選択肢はありません。

社員の生活、
取引先との信頼、
そして、これまで積み重ねてきた家族の歴史。

それらすべてを背負ったうえで、
前に進む必要があります。

その孤独は、
とても静かで、
でも常にそばにあります。

稲盛和夫さんが教えてくれた「本当の継承」

稲盛和夫さんは、
経営再建の中でこう語っています。

「守るだけでは、企業は衰退する。
しかし、壊せばいいわけでもない。」

この言葉は、
家族企業の継承者にとって、
とても大切な視点だと思います。

継承とは、過去を否定することではなく、
敬意を払いながら進化させること。

私はそう解釈しています。

「自分は何者なのか」と向き合う時間

正直に言えば、
「家族のおかげで今がある」と思われることに、
葛藤した時期もありました。

でも今は、
それを否定する必要はないと感じています。

大切なのは、
その立場でどう振る舞うか
どんな決断を積み重ねるか。

日本には、こんな言葉があります。

「恥じない仕事をする」

それが、
家業を継いだ者としての、
一つの答えなのかもしれません。

最後に

もし、これを読んでいるあなたが
同じように「継承」という立場にいるなら、
あるいは、責任ある立場で悩んでいるなら。

迷うこと、苦しむこと、
立ち止まることがあっても、
それは弱さではないと思います。

それだけ真剣に、
自分の役割と向き合っている証拠だからです。

私自身、まだ道の途中です。
学びながら、修正しながら、
一歩ずつ進んでいます。

過去を大切にしながら、
未来を恐れずに。

それが、
家族企業を継いだ社長としての、
今の私の覚悟です。