霧の国に行ってきました。

富士山アネットさんのイマーシブシアターです。

あらすじ、というよりも体験談として覚えている限り書いていこうと思います。

 

 

受付。

いろいろな注意事項に同意したのち、入国証に名前を記載すると、札の貼ってあるサコッシュを渡されます。

中に何か入っています。

そしてとある質問に答えます。

「あなたの思う良い國とは?」とあり、回答欄には「~~國」とありました。

~~のところに文章で好きな國の内容を書きます。

 

そして、入国の際に入国管理官に、「霧の國は初めてですか?」と聞かれます。

最初の扉をくぐると薄暗い中に、二本の細い線が貼られています。

二本の赤と青の線。

サコッシュに貼られた札は赤と青で、自分の色の上に立てと言われます。

また、白いマスクを渡されます。

作業用というか粉塵とかに使われるちょっとごつめのマスクです。

この先に霧があるのでそのためだ、と。

そして、足下の線を照らしながら、中に入ります。

中には霧がありながらも、うっすらとまわりが見えます。

 

中で見えたものは、ゴミ袋?の山、透明な7m×7m×7mぐらい?の閉じられた立方体。

そして、歩いていった先には、この中で座るように言われた、白い枠。

自分やほかの人もラインを歩き、白い枠の中で待機します。

そして、その後、枠の中にある、赤と青のラインに分かれて並び、向かい合うようにアナウンスに言われました。

基本的にこのアナウンスで進行していきます。

 

「選択とは、必ず、選ばれなかった選択をともないます」「これから質問をしますので、YESの人だけ、前へ進んでください」と言われます。

YESの多い人が前に次々に進み、中心の線に到達すると、曲がって、前述の透明な立方体に入るように指示されます。

上限は9名。

そして全員が入った時点で、立方体の扉が閉まります。

私は、その9人の中に入りました。なんとなく意図はわかります。要するに「意識の高い人たち」の選別です。全体の2割くらい?

 

実際、アナウンスで同じことが告げられました。

立方体の中の人は、選民であり、意思決定を行う、Cloud。

外の人は労働者たる、Atomosである、と。

また、この國は霧をエネルギーに変えている。

立方体の中はクリーンであり、マスクをはずしてかまわない。

 

そして、Atmosたちは、管理官に指示され、防護服を着たのち、輪になってラジオ体操をはじめます。

それを我々Cloudは炭酸水で乾杯しながら、眺めます。

さらにAtmosの労働が開始されます。

この世界の産業廃棄物である、ゴミ袋を、運ぶのです。

廃棄物は手で触ると危険なので、4人組になって、防護服を着た背中で囲んでまるでおしくらまんじゅうをしてるような恰好で、落とさないように歩きつつ運びます。

これを我々Cloudは、椅子に座り、クラッカーをつまみながら眺めます。

 

Atmosの労働が続くなか、我々は提案されます。

「彼らの行動を見ていて何か改善策などをディスカッションしてください」と。

3人ずつぐらいのグループになって。

手袋はあげよう、台車をあげよう、もっと機械化しようとか、意見を出し合います。

そしてそれを全員でまた話します。

外では管理官にいろいろ指示されながらAtmosの人々が働いています。

 

Atmosの人々が労働が終わり立方体を囲むように指示されます。

そして、我々は椅子に座ったまま、外を向くように、と。

然、透明なので彼らの顔が見える状況です。

ただし、彼らはマスクをしており表情はあまり読み取れません。

そこで指示されます。「先ほど話されたことをAtmosに提案してあげてください」と。

そしてAtmosの人々は「Cloudの方々に失礼なことを言うんじゃないぞ」と指示されます。

透明な壁を隔てた私の目の前には、Atmosの男性一人と友人含む女性二人の計三人が座っていました。

先ほどのディスカッションで出し合った意見を伝えますが、Atmosは黙って聞いているだけです。

 

その後こちらの話が終わってひと段落したころでしょうか、警報が鳴り響きました。

装置にエラーが発生した、と。

これは人災かどうかはわからないとのこと。

その後、このままでは霧が悪影響を及ぼすということで、Atmosの人たちを、緊急避難的に立方体の中にいれる、という施策が取られました。

ずらずらとAtmosの方が中に入ります。

アナウンスから、「このエラーは人災であり、犯人がいます。誰が犯人か話し合ってください」と言う指示がありました。

そこで、一人のAtmosの人が声をあげます。

「Cloudの人が犯人じゃないですか?」静まり返る一同。

 

そこで、歌が聞こえます。

防護服にマスクの集団が新たに表れ、立方体のまわりをゆっくりと行進します。

中にいるAtmosの何人かも歌いだします。

アナウンスで、このエラーは、レジスタンスの犯行であり、彼らは、Cloudが隠していた真実(霧の毒性について)を告げ、この体制を終わらせるよう訴えます。

そして、「Cloudたちをレジスタンスに差し出すように」要求されます。

それをAtmosの人間の多数決でそれを決めるようにと。

Cloudの誰かが言ってくださっていましたが、我々はその隠された真実は知りませんでした。

 

投票が行われます。

Cloudをレジスタンスに差し出すことに、賛成か、反対か。

我々の國の結論は、反対多数のため、「渡さない」でした。

アナウンスに、渡すことに賛成したAtmosは外に出て、レジスタンスに合流するように言われました。

そして反対のAtmosは残るように。

「この外の国はとても安全で良い国だと聞いています。レジスタンスと共に歩む方は外へ」

賛成の方は外へ出ていきます。

歌がまだ流れます。

それにあわせて、モニターに、言葉が流れます。

「良い国とは~~である」そう、参加者が入國の時に書いた言葉が次々と流れていきます。

カベの幕がゆっくりとあがります。

外に見えるのは、夜の横浜元町ぞいの川と、そこに点灯したイルミネーションでした。

「あなたの国は、良い国ですか?」

 

この舞台では様々な感情体験を得ることが出来ました。

自分自身のことを意識の高い人間だと思ったことは一度もありませんが、今回はその意識の高い人間として意思決定を行うことのできる側として選ばれました。

最初はAtmosが働く中、歓迎され接待され上から目線でAtmosに意見して"あげる"立場であることに居心地の悪さを感じていました。

ところが、警報が鳴り危険だという外界からAtmosが立方体の中に入ってくることになったとき思ってしまったのです。

「私にも危険が及ぶじゃないか」と。

そして、この短時間ですっかり驕ってしまっていた自分に驚きました。

これがもし、逆の立場になっていたらまた別の感情になっていたのかもしれません。