2021年10月31日、ハロウィーンの夜に東京都調布市を走行中の京王線特急電車内で、乗客をナイフで刺し、車内に火を付けたとして、殺人未遂などの罪に問われた無職の服部恭太被告(26)は、仕事で失敗したこと、元恋人が結婚したことなどから死刑になりたかったという死刑志願が動機でした。

 

服部被告は事件当時、「バットマン」シリーズの悪役「ジョーカー」をまねた服装をしていました。

 

「(死刑になるために)殺人を犯さないといけないという思いがあったようです。ジョーカーを目標にすればいいんじゃないかと思った」と話したということです。

 

  事件発生から逮捕までの経緯

 

事件が発生したのは、調布駅から発車した直後の19時54分ごろ。

 

服部被告は3号車に乗車していた72歳の男性の目に殺虫剤を噴きかけ、右胸をナイフで刺しました。

 

男性は一時心肺停止に陥りましたが、一命を取り留めました。

 

その後、服部被告は5号車に移動し、ライター用のオイルを撒いて火を付けました。

 

この火災によってシートや床材が焼け、乗客16人が煙を吸って喉の痛みを訴えました。

 

電車は国領駅で緊急停車しましたが、ドアが開かなかったため、乗客は窓から避難する事態となりました。

 

服部被告は殺人未遂の現行犯で逮捕されました。

 

 

警察の調べに対し、「小田急線の刺傷事件を参考にした。小田急線の事件ではサラダ油で火が着かなかったので、ライターオイルを使った」と供述しました。

 

  裁判員裁判で争われた点と判決

 

服部被告は殺人未遂などの罪で起訴され、裁判員裁判が行われました。

 

主な争点は、放火が周囲の乗客12人に対する殺人未遂罪にあたるかでした。

 

検察側は、「具体的にどの乗客を対象にするかが定まっていなくても、列車の連結部分付近にとどまるなどしていた12人が死亡する危険性を認識した上で火を付けた」として、殺意は認められると主張しました。

 

一方、弁護側は、「服部被告がオイルをまいた床にライターを投げた時点では、12人は死亡の可能性のある危険な場所からは退避しており、罪は成立しない」と反論。

 

量刑は懲役12年程度が相当だと訴えました。

 

2023年7月31日、東京地裁立川支部は被告の男に懲役23年(求刑・懲役25年)の判決を言い渡しました。

 

刺された乗客以外の放火による乗客12人への殺人未遂罪について、うち10人については同罪が成立すると判断し、残る2人は当時の車両内での位置関係などから成立を認めませんでした。

 

裁判長は「一般市民を震撼させた凶悪事件であり、被害者やその家族に対する配慮が全く感じられない」と述べました。服部被告は判決を聞いても涙もなく、無表情だったということです。

 

  事件の社会的影響とその後

 

この事件は、社会に大きな衝撃を与えました。

 

京王線は約5時間にわたって一部区間で不通となり、多くの乗客に影響が出ました。

 

国土交通省は鉄道事業者に対し、新規の全車両において防犯カメラの設置を義務付け、既存の車両についても追加で設置することを推奨する方針を固めました。

 

また、九州新幹線で京王線の事件を模倣した放火未遂事件が発生するなど、模倣犯の危険性も指摘されました。

 

服部被告は判決を不服として控訴しましたが、最高裁判所は2024年3月25日に控訴を棄却し、懲役23年の判決が確定しました。

 

服部被告は現在、東京拘置所に収監されています。

 

 

    フォロー、いいね返します。

     フォローしてね…