日本で確認された20歳未満の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症例では、重篤肺炎例は2例にとどまり、死亡例はなかったことが明らかになった。また、18歳未満の小児の報告数は少ない一方で、19歳の報告数は18歳以下の2~3倍だった点も特徴の1つだった。国立感染症研究所が9月16日、感染症発生動向調査の結果をまとめ公表した。

 感染研は、2020年2月1日から5月28日の間に感染症発生動向調査(NESID)に届出があったCOVID-19のうち、20歳未満の症例(患者、無症状病原体保有者の計677例)について、患者背景や症状の特徴をまとめた。なお、調査期間にNESIDに届出があり、7月21日時点で自治体による確認が済んでいた全てのCOVID-19症例(患者、無症状病原体保有者、感染症死亡者の死体)は1万6765例だった。

家庭内感染の割合が高く

 年齢層別に見た結果、まず0~14歳の感染者(患者+無症状病原体保有者)は425例で、全体の2.5%と少なかった。内訳は、患者が290例(68.2%)、無症状病原体保有者が135例(31.8%)だった。感染者は、0~14歳の全ての年齢に認められ、0歳(44例、0~14歳の10.4%)と1歳(50例、0~14歳の11.8%)の低年齢層が多かった。

 男女別に見ると、0~14歳の感染者では、男性の患者が165例(患者の56.9%)、男性の無症状病原体保有者は55例(無症状病原体保有者の40.7%)と、患者、無症状病原体保有者ともに明らかな性差を認めなかった。

 発症日の記載があった0~14歳の患者186例では、発症日別流行曲線で4月上旬に大きなピークを認めた。これは、NESIDに届出がなされた全ての患者の発症日別流行曲線と同様の結果だった。

 時期的には、2~3月は未就学児が67.7%(21/31例)を占めたが、4月以降の届出数は未就学児(43.2%)、小学生(35%)、中学生(21.3%)と年齢の高い層に感染が広がっていた。

 また、記載があった患者の推定感染源を見ると、家庭内が193例(66.6%)と最多だった。このほか、保育士・学童保育の職員14例(4.8%)、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検査陽性者と接触9例(3.1%)、習い事の先生3例(1.0%)だった。

 一方、15~19歳の感染者は252例で、全体の1.5%にすぎなかった。内訳は患者が208例(82.5%)、無症状病原体保有者44例(17.5%)だった。0~14歳と比べて、患者の割合が高いという特徴があった。

 年齢別感染者数は、15~19歳に占める割合で見ると15歳が11.5%、16歳が17.1%、17歳が12.7%、18歳が19.4%、19歳が39.3%で、19歳の報告数は他の年齢の2~3倍も多かった。

 発症日の記載があった15~19歳の患者は154例で、その発症日別流行曲線では4月上旬にピークを認めた。これは、全患者および0~14歳と同様の結果だった。

 また、無症状病原体保有者は男性が20例(無症状病原体保有者の45.5%)と明らかな性差を認めなかったが、患者は男性が83例(患者の39.9%)で女性の方が男性の約1.5倍だった。患者(208例)の推定感染源は未記載・不明が99例と多かったものの、記載があった中では家庭内(同居人)が63例(30.3%)と最多だった。これに海外17例(8.2%)、職場10例(4.8%)が続いた。

 

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   症状の特徴は、0~14歳と15~19歳のそれぞれで、発熱が70.3%、73.6%、咳嗽が36.2%、46.2%、その他が45.9%、65.9%だった。重篤な肺炎を呈した例は0~14歳ではなく、15~19歳では2例だった(表1)。幸いにして、0~19歳の死亡例はなかった。

 これらの結果から感染研は、日本も海外と同様に「18歳未満の小児の報告数は少ないと言える」とまとめている。ただし、海外同様、日本でも調査期間中の2020年3月2日から学校が全国一斉休校となっている点に触れ、「今回の結果だけで小児はSARS-CoV-2に感染しにくいと判断することはできない」と追記している。

 感染源については、社会全体が「ステイホーム」の間、小児が最も長い時間接するのは家族と考えられるとし、「そのため最多感染源が家族であった可能性がある」と指摘。19歳が18歳以下の2~3倍の報告数だった点については、「15~19歳群の推定感染源には就職やアルバイトを含めた行動範囲の広さが反映されていた」との見方を示した。

 また、5月29日以降のCOVID-19サーベイランスが新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)に移行したことから、「報告様式などが異なり、5月28日までの報告とは比較できなくなった」としつつも、「社会活動や集団生活が再開され、家族以外の人との接触が増した後の小児COVID-19の疫学変化を注視していくことは、今後の感染対策、感染拡大予防策を実施するうえで極めて重要である」と締めくくっている。